社用車

社外での用事があった日。たまたまバスで出社していたので社用車を借りた。
 
社員のほぼ全員が自家用車を持っており、営業用の車は別にある。そのためあまり乗られていないその車は酷く汚くて、蜘蛛の巣が所々を覆っている。軽く洗ってから使おうと思った。
 ホースを繋いで水を掛けると面白いほどに泥が流れていく。何の汚れなのか、錆のような色をした粘度のある液体まで出てきた。もしやガソリンが漏れているのかと確認したが違うようだ。これが出なくなるまで流してやろうと思ったが、いつまで経ってもデロデロデロデロ止む気配がない。時間も無いので諦めた。
 
車内は埃っぽく、ハンドルにも薄く埃が積もっていた。過去のドライバーも掃除を試みたのだろう、備え付けられたゴミ入れにはティッシュが沢山捨てられている。私も倣ってハンドルを拭き取り、赤茶色く汚れたティッシュをゴミ入れに放った。
 
 用事は滞りなく片付いた。
帰り道、アクセルがやたら効きにくく閉口した。何事かと足元を覗き込むと右の靴に赤黒い泥が付いていた。赤土の山にでも行った後なのか?お気に入りの靴だったので腹が立ち、思い切りアクセルを踏みこむ。すると一瞬の抵抗の後、何事も無かったかのようにスピードが出るようになった。一応事務員に言って車屋に見てもらおう。
 
 
1週間後、事務員に車の様子を尋ねた。
業者が言うにはエンジンにもアクセルにも問題は無い。ただ、車内やボンネットの中に湿った塩が落ちていた。不調の原因かもしれません、とのことらしい。