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業務効率でプチストレス解消!

業務効率化をしようと思った時、いきなり「職場全体」など大人数でやり始めると、意見はたくさん出るとは思いますが、まとめ役がいないとなかなか先に進みません。
私が16年間勤務していた特許事務所は、一般企業とは違って個々で行う業務が多いため、まとめ役は普段の仕事もやりながら大勢の意見をまとめることになり、やることは倍増、残業も増え、忙しさからミスが増えたり、ストレスも溜まります。
せっかく効率化させようとしているのに、ミスが増えて結果的に顧客に迷惑がかかっては元も子もありません。
所内で「効率化をしよう!」と決まったとしても、いきなり大きなことからやろうとはせず、まずは自分の仕事の範囲での効率化を進めましょう。


まずは仕事環境を見直す

運動不足で体を動かしたいからテニスを始めよう!と言って、準備運動もせずいきなりラケットを持って走り回ったら、筋肉痛になったり、捻挫や肩・肘を痛めるなど大ケガをしてしまいますね。
ケガをしてしばらく入院、なんてことになったら体は動かせず、もっと運動不足になってしまいます。
業務効率化も同じです。
所内で「効率化をしよう!」と決まったとしても、いきなり大きなことからやろうとはせず、準備運動のつもりでまずは自分の仕事の範囲での効率化を進めましょう。

どんな小さいことでも構いません。
仕事をする環境(デスクの上、デスク周り、パソコンの設定など)を見直してみてください。
「使いにくい」
「やりにくい」
「面倒くさい」
というようなものがあったらまず書き出してみましょう。
以下に例を挙げますので参考にしてみてください。

例1:パソコンでの文字変換

特許事務所で使う用語で
・特願(出願番号に付与される文字)
・包袋(案件ごとの書類を入れておく袋)
・外内(外国で出願した特許を日本国内で出願/移行する案件)
・国優(国内優先権主張出願の略)
・共願(2社/2者以上で出願する案件)
などがありますが、パソコンで「とくがん」と入力してもすぐには「特願」と変換されません。
「包袋」は100%「包帯」と変換されます。
それをその都度「包帯」と打って「帯」の一文字を削除し、「ふくろ(袋)」と入力するのは結構手間がかかりますし、面倒くさいですね。
パソコンの「単語の追加」機能を使って、一度「ほうたい」=「包袋」と登録してしまえば、次からはすぐに変換できるようになります。
よく使う顧客の名前なども登録しておくと便利です。
例えば私の会社の名前「合同会社SKY」なら、「SKY」や「すかい」と入力して変換したら自動的に「合同会社SKY」に変わる、としておけば、わざわざ「合同会社」と打つ必要はなくなります。
他に、「住所」と入力して変換したら自動的に事務所の住所に変わる、というのも便利です。
ほんのひと手間が時間短縮につながります。

例2:電話の位置

電話の位置を右から左に置き換える、などでもよいでしょう。
右利きの人は右手でペンを持ち、左手で電話の受話器を持つと思います。
電話の位置が右にあったら受話器は取りにくいし、左手で受話器を持ったら右側にある電話機からコードが目の前を横切って、書類やパソコンを見るのに邪魔になります。
電話を左に置くだけで、断然使いやすくなります。
現代なら電話をパソコンで受信することもできると思いますので、ヘッドセットを準備して両手が使える状態で電話に出る、ということもできると思います。
そんな小さいこと・・・と思われるかもしれませんが、「塵も積もれば山となる」ですし、効率化の第一歩となります。

「効率化」を考える癖をつける

こんな具合に「使いにくい」「やりにくい」「面倒くさい」ことをどんどんピックアップしてみてください。
人は慣れてくると「面倒くさい」「やりにくい」などとも感じなくなってきます。
いつも当たり前のようにやっている動作の中にも、実は面倒だったりやりにくかったりするものはたくさんあります。
サクサクできているような業務でも、一度立ち止まって「もっと簡単にできるのでは?」「この仕事を効率化するとしたらどうするか?」を考える癖をつけましょう。

自分の業務内容を見直す

環境を見直したら、次に、自分が担当している業務内容を見直してみましょう。
とはいえ、10年、20年と同じことを続けてきた方は特に、大きく変わってしまうことに不安を感じてしまう人もいることでしょう。
とにかく自分ができる簡単なことから始めてみましょう。

1.とりあえず手書きをやめてみる

包袋やファイルの表に、その案件の書誌事項やステータスを記載すると思いますが(ここでは包袋表紙と呼びます)、包袋表紙は手書きでしょうか?
事務所整理番号、顧客整理番号、出願人名、出願番号・出願日、公開番号・公開日、登録番号・登録日、基礎出願(優先権主張)の出願番号・出願日、発明の名称(日本語、英語)、現地代理人名・整理番号、発明者・・・などの書誌事項は、書き込みができるようなフォームだけWordかExcelで作って印刷し、情報が更新されるたびに手書きでしょうか?
また、書誌事項の下に特許庁からの通知の受領日(発令日)・書類名・期限日・処理日、顧客とのやり取りの履歴などステータスを記載。それらも手書きでしょうか?
もし書き損じたらホワイトで消して書き直し?
二重線を引いて余白に書き足す?
手書きだと、字の上手い・下手にもよりますが、「0」と「6」、数字の「1」とアルファベットの「l」(小文字のエル、大文字のアイ)など見間違いをする可能性もあります。
余白に小さい字でたくさん書いてしまったりすると、何が正しい情報なのか一目見て分かるでしょうか?
これらの情報は特許期限管理システムにも入力していることと思います。
システムから包袋表紙(に近い形式のものなど)が印刷できるなら、システムにデータを入力して情報を更新するたびに印刷して、包袋やファイルに入れておけば手で書く必要はなくなります。
字の上手い・下手も関係ありません。
また、包袋やファイルの表に透明の袋やクリアファイルを貼り付けておいて、システムの情報更新後に印刷したら、その紙を差し替えれば包袋やファイルの中を開けなくても一目で分かりますね。

2.検索機能を使えるようにする

書類(包袋)はすぐに探せていますか?
情報化社会である現代、事務所で共有すべき情報はやはり手書きでなくデータ化しておくべきです。
ビジネスパーソンの探し物の平均時間は
「年間150時間」
なのだそうです。
1日7時間勤務で1ヶ月に20日間働くとして、140時間が通常の1ヶ月の勤務時間です。
1年のうち、1ヶ月以上は何かを探すだけのために出所している、ということになります。
もったいないですね。

3.データ化することで探し物はすぐ見つかる

手書きのものはWordやExcelへ、紙書類(包袋)は電子化(PDF化)してサーバー上のフォルダ保存しておくことで「検索機能」を使って探すことができます。
例えば、打合せのメモは、一つのWordやExcelにまとめて入力すると後々便利です。
「〇月〇日_顧客名_打合せ.docx」などのように打合せした日付や顧客ごとにWordファイルを分けてしまうと、検索する時にいくつものWordファイルを開いて検索することになり、せっかくデータ化していても時間がかかってしまいます。
顧客ごとのノートを一冊準備するように、Wordファイルも顧客ごとに作って、Word内で「〇月〇日打合せ」などタイトルをつければいつの打合せの時のものなのかは分かりますし、一つのWordファイルの中で検索できるので複数のWordファイルを開く必要がなくなります。
検索機能は人間が目で見て探すより、もっと正確に早く見つけ出してくれます。
データ化することは単に時間短縮ができるだけでなく、見落としがなくなるためミスも防げます。
効率化と正確性の両方を得ることができるのです。
データ化することの重要性を考えてみてはいかがでしょうか。

4.ステータスが一目で分かるようにする

顧客への確認や報告で、「あれやったかな?」と不安に思うことはありませんか?
期限が発生したら、
 ● 期限通知書を作って送る
 ● 顧客からの回答を受領する
 ● 期日までに特許庁への応答や納付処理をする
 ● 顧客へ応答や納付報告をする
という作業をしますが、それぞれ確認が必要です。
 ✓ 期限通知書を送ったかどうか
 ✓ 顧客からの回答を受領したかどうか(回答がきていなければリマインドする)
 ✓ 期日までに特許庁へ応答/納付処理を行ったかどうか
 ✓ 顧客への応答/納付報告をしたかどうか(請求書作成、同封を忘れていないかどうか)
外内・外国案件の場合は現地代理人が間に入るため、確認事項はさらに増えます。
紙書類を包袋に入れて管理していると思いますので、包袋を見ればどこまで処理が終わっているかは分かると思いますが、同時にいくつもの案件を抱えている場合、その都度各案件の書類を見直すのは時間がかかります。
書類の入れ違いなども起こしかねません。

5.エクセルで工程表を作る

そこで、エクセルで「作業工程表」を作ることをお勧めします。
下図のような表を作ってみてはいかがでしょうか。

<工程表>サンプル

工程表を使えば一目でどこまで進んでいるかを確認することができます。
エクセルで作って印刷し、デスクの前に貼りだしておくことでもよいと思います。
計算式とか関数なんて難しいことは必要ありません。上図のように日付を入力するといつ処理したかが分かりますが、単純に「済」と入力、セルの色を塗りつぶすなど、ご自分のやりやすい方法で良いと思います。

6.重要なのはどこまで進んでいるかが一目で分かること

上図を見て、A社は全ての作業が終わっていること、B社は期限通知をしたところまでで止まっていること、C社は回答を受領してこれから特許庁へ応答するところ、ということが一目で分かります。
一目で分かれば、作業をしている本人も、それ以外の人(担当弁理士や他の事務担当)もステータスを把握できるので、もし担当者が不在の場合でも顧客からの問い合わせに応えることができます。
また、次に何をすべきか(期限通知、リマインド、回答受領・・・など)を予め書き出しておけば、やるべきことを忘れてしまうこともありません。備考欄などを作ってイレギュラーなことに対応できるようにしてもよいでしょう。
一つ一つ包袋を見直して次に何をやるかを考えているより、断然処理速度が上がるので効率化できていると言えます。

まとめ

長く仕事をし続けていると作業がどんどん複雑化していくのは当たり前です。その複雑さがストレスとなっていきます。
難しく考えず、身近なものから一つ一つ整理して、プチストレスを解消しましょう!