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「ハルジオン」

「ハルジオン」

白く斑な空から ひらひらと落ちてくる一枚の紙
心の池にはらりと落ちる
紙が濡れてしまう 水で文字が消えてしまう
わたしは手を伸ばし そっと破れないようにすくい上げる

教えて欲しいと思う
必要ないと心が答える
知りたいことの答えなど無いのならば 水に滲んだ文字は意味を持たない
知れないのであれば 空を見つめて待ってなどいなかった

いや
待っていたのは一枚の紙では無い
心の池に落ちるものを 私は待っていたのだ
そうしなければ 涙の居場所を見失う

空は雨を降らそうとしない
こころの池のほとりで 滲んだ文字を大地に置く
池のほとりに咲く花は 薄いピンクの小さなハルジオン
うつむいて うつむいて うなだれて
花を咲かせるときに真っ直ぐ天を見つめる

モウダイジョウブダヨ ズットイッショニイルヨ

涙の池は枯れることがなく
周りには野の花が増えていく
いつしか池は泉となり 
溢れ出て清流となり
こころの大地は草原へと変わる

生まれてきてよかった
生きてきてよかった

こころの目で見る空には 星が輝いていた。

まもなく夜が明ける。

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