サヨナラは悲しい言葉じゃない
いきものがかりの『YELL』を引用させていただいた。卒業ソングとして有名な曲だそうだが、
お恥ずかしい話、私はサビ冒頭のこの部分しか知らなかった。こんな機会もなければ、じっくり歌詞を読むこともなかっただろう。
きっかけは学生時代の友人だ。飲んで飲んで盛り上がった結果、音楽をやることになってしまった。
酒の勢いとは恐ろしいもので、「やる」と言ってしまったからには引くに引けない。足を引っ張りたくないと、毎日暇を見つけては楽譜と睨み合っている。
ここだけの話、卒業ソングとして有名な『YELL』を練習するのは、正直気が進まなかった。「卒業」という言葉に良い印象を持っていないからだ。
「飛翔!」とか「夢に向かって!」とか言われると、祝福されながらグイグイと背中を押されているようでゾッとする。
キラキラと輝く夢に夢中で飛んだ先が、針山でも谷底でも関係ない。問答無用で次のステージになってしまう。
思えば人間、生まれてから卒業してばかりだ。母乳を卒業し、オムツを卒業し、保育園や幼稚園を卒業し、小中高大と卒業する。
幼い頃は、同じ記憶や経験を共有していた友人たちは、知らない間に自分とは全然違うことをしている。これが成功していると、また腹がたつ。自分はシケた煮干しと臭い飯しか食っていないのに!
そこまでいくと言い過ぎだが、結局のところ寂しいのだ。おまけに、自分が針山に突っ込むのかどうかも分からない。そんなことで、何が「飛翔」だ。夢をキラキラしたものとして語ってくれるなと、まぁそんなことを言いたいのである。
そんな気持ちにスコンとハマったのが、苦手だった卒業ソングだった。
ひとりになるのが 恐くて つらくて
優しいひだまりに 肩寄せる日々を
越えて 僕ら 孤独な夢へと歩く
『YELL』- 歌:いきものがかり/作詞作曲:水野良樹
そう、そう、そうなのよ。
日本在住ならおおよその人は通る道だけど、拳握りしめて、歯を食いしばって行かなきゃいけないのよ。
ただ「夢に向かって!」と言うだけではなかったことに感動し、私は駅のホームで拳を握りました。
歩きながらいきなりガッツポーズを決めたので、周囲の人はうろたえたかもしれません。
いきものがかりっていいよ、とただそれだけなの話を長々書いたけれども、何はともあれ偏見でモノを見る(聴く)のはつくづく損だ。
それでも偏見を捨てられないのは、私の目がまだ曇っている証拠だろう。さっさと卒業したいものだ。アレ、ここにも卒業が。
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