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演劇は人を繋ぐんだな...

本番まで1週間を切った。
役者である先輩と私は、数日前から舞台となる一軒家に泊まり込みさせて頂いている。
泊まり込みをするんだ、と友達に伝えると「楽しそう!」とか「青春だね!」とか言われたけれど、実際の生活はまるで修行僧のようだ。朝起きた瞬間からマスクをし、食事も別々、お風呂は湯船に入れずうたも歌えない。感染症対策をしながらの共同生活は想像以上に過酷だった。

とうの演劇の方もなかなか上手くいかない。
一人っ子の私は家族の中の姉妹感というものをだすのにとても苦労している。家族の中に親以外の人間がいるなんて、なんて不思議な状況なんだ!一人っ子の気持ちとしてはこうなのである笑
そうはいっていても仕方ないからありったけの想像力や他人の話、ドラマなどをフル導入して頑張っている。

1人芝居も難しい。誰もいない何も無い空間に何人もの家族を頭の中で浮かび上がらせながら演じている。虚構に演技するのが虚無になる時もある笑

動きやセリフのタイミングも大変だ。今回の演劇は「誰か」ではなく、「自分の録音した声」と共演する。セリフをしくったら話が成り立たないし、動きをミスっても察したりフォローしてくれることは無い。1度音声が流れ出したら、もう止まることは出来ない。中々に緊張感がすごいのだ。

他にも、私はずっと劇場で演技を目の前のお客様に見せてきた人なので、配信演劇というものにはなかなか慣れない。カメラを意識するのはとても難しい。そしてカメラ(自分たちのパソコンやスマホ)をいちいち設置するのも意外と大変で、何度危うい固定が取れてスマホを割りかけたか、という話だ笑(先日、テクニカル班が必死にカメラを設置してくれて、本当に感謝している。)

自分の演技した動画を見ると、全然思うように動けていなかったり、やりたかったこと、やったと思ったことが伝わってこなくて、イライラする。


でもふと、長野県から1歩も出ずに、1日中パソコンの前で演出をつけてくれる先輩の存在を思い出す。私たちがカメラを設置している間、消毒をしている間、先輩は待っていてくれる。上手く演技ができない時、身振り手振りありとあらゆる言語を駆使して、フィードバックを伝えてくれる。それはどんなにもどかしいことだろうと思う。必死に言われたことを吸収して、なんとかこの遠い距離をものともしないいいものを見せたいと思う。昔やっていたように、稽古の度に新しい面白い演技を取り入れて見てもらいたいと思う。いつだって役者の私にとって、演出家は一番最初のお客様だ。

それに共同生活も悪いことばかりでは無い。出費がかさむので、自炊をしている。先輩が料理上手で、美味しいものを食べられている(大感謝)。この間作った、じゃがいもとアスパラとウインナーをヨーグルトと柚子胡椒とバターで和えたものは天才的だった。八王子はいい所だ。何も無いけど。たまには何もない所で景色を楽しむのもいい。
家を貸してくださった方は10歳ほど年上の方だ。ご自身がレンタルスペースを借りた際に、「大学構内が使えない今、学生はこんなに高い費用を払って課外活動をしているのか」と衝撃を受けて、ご自身のご実家を快く破格で貸して下さった。本当に有難いお話だ。そして学生である私は親や同世代以外の方とお話する機会はなかなかない。人生の先輩として、お話を伺う機会も頂いて、本当に勉強になった。今回この演劇をやらなかったら、出会えなかった人だ。演劇は人を繋ぐんだな、そう思った。


大学卒業という大切な時期に沢山の会いたい人がいた。でも私は28日まで演劇を選んだから、会えない。その人たちに、「私はこれをつくってたんだよ!」と胸を張って言える作品をつくりたい。

そしてこんなにうだうだ書いたけれど、やっぱり私は演劇が大好きだ。稽古の時間はすごくすごく楽しい。こんなご時世に、ご縁に、友人に、恵まれ、社会に出る前最後に役者をやらせてもらえる機会を頂いたことに本当に感謝している。生半可なものは見せられない。今日もまた、稽古を頑張りたいと思う。ぜひ、観てください。

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