見出し画像

METAR, TAFの解読方法と実際の気象現象について

 Twitterの航空界隈に突如現れる英語と数字の文字列... 
 そこから繰り広げられる無数の天気予報......

 Twitter上でパイロットや航空関係者と思われる人々が、「明日荒れそうですね〜」「BLDUは出ないで欲しい...」などとその英語と数字の文字列から航空気象に関するトークが繰り広げられています。

 今回は、この英語と数字の文字列の謎について解き明かしていきたいと思います。覚えてしまえば、誰でも使いこなせるので、解読の手引きにしてみてはいかがでしょうか。

注意:情報量に乏しく専門的知見に欠けるため、実際のオペレーションには用いないでください。

詳しい情報は、航空気象通報式を参照してください。


謎の文字列とは一体...

 まず、英語と数字による文字列の正体は、"METAR"や"TAF"と呼ばれる航空気象通報式と言います。簡単に示すと下記のようになります。

METAR = 現在の気象状況(いわゆる実況天気)
TAF = これから予測される気象状況(いわゆる天気予報)

 通常、METARは毎時00分に発表(更新)されます。羽田や成田空港など、主要な空港では毎時30分にも発表されます。


METAR、TAFに使われる略語

 METARやTAFに使われる、主な略語をまとめます。基本的には下記に示す【付帯条件】と【天気現象】を組み合わせて報じられます。(ex. SHSN)

【付帯条件】
・ー・・・弱い
・+・・・強い
・VC・・・空港から8km~16kmの間で
・SH・・・しゅう雨性(にわか)
・TS・・・雷
・PR・・・部分的
・BC・・・散在的
・BL・・・2m以上の
・FZ・・・着氷性
【天気現象】
・RA・・・雨
・SN・・・雪
・GS・・・あられ
・DZ・・・霧雨
・PL・・・凍雨
・BR・・・もや
・FG・・・霧
・VA・・・火山灰
・DU・・・塵
・SQ・・・スコール
・FC・・・竜巻
・SA・・・砂
・HZ・・・煙霧
【その他】
・NSC・・・運航上支障のある雲がない
・CAVOK・・・視程、雲、天気が問題ない
・WS・・・ウインドシアー
【今後の変化を示すもの】
・BECMG・・・のちに
・TEMPO・・・一時的に


風向風速・視程・気圧に関する情報

 まず、風向風速についてです。基本的に、風向→風速の順に記載されます。

 風向を先に3桁で示し、風速を2桁でKTをつけて示します。
(ex. 23007KT)
 最大瞬間風速がある場合は風速の後にGUSTの略である"G"を付けて示します。
(ex. G55KT)
 また、風向の変化がある場合も、風速の後に3桁V3桁で示します。
(ex.200V280)

 次に視程に関してです。

 基本的に4桁で示され、単位はmです。(ex. 5000)
 10km以上の場合は"9999"と示されます。

 気圧表示は次の通りです。

 基本的に"Q"の後に4桁で示し、単位はhPaです。(ex. Q1013)
 水銀柱表示として、"A"が用いられることもあります。
 この場合、単位はinhgです。(ex. A2992)


雲に関する情報

 METARには、雲に関する情報も記載されます。基本的な略語は以下の通りです。

FEW・・・少し(全天の1〜3割)
SCT・・・散財している(全天の4〜5割)
BKN・・・隙間がある(全天の6〜9割)
OVC・・・全天を覆う(全天の10割)
それぞれの雲底(高さ)も3桁で略語の後に記載されます。
(ex. BKN050)
対流雲と呼ばれる積乱雲や塔状積雲が存在する場合は、雲底の後に記載されます。(ex.BKN020CB)

CB・・・・積乱雲
TCU・・・塔状積雲


実際のMETARをもとに解説!

(1)
RJBB 240300Z 33004KT 300V020 9999 FEW025 SCT/// 13/07 Q1024 BECMG 27007KT

 各要素ごとに分解します。

RJBB・・・・・・・・関西国際空港(ICAOコード
240300Z・・・・・・24日3時現在(世界標準時)
33004KT・・・・・・330°から4KTの風(北西から約2m/s)
300V020・・・・・・300°から20°の間で不定的に吹いている
9999・・・・・・・・10km以上の視程
FEW025・・・・・・・少しの雲が2500ft(約760m)
SCT///・・・・・・・・散財した雲が高度不明で存在
13/07・・・・・・・・気温13℃、露点7℃
Q1024・・・・・・・気圧1024hPa
BECMG 27007KT・・・後に270°から7KTの風(西から約4m/s)に変化。


(2)
RJNT 300800Z 29007KT 250V320 5000 SA FEW030 BKN035 16/10 Q1010

 各要素ごとに分解します。

RJNT・・・・・富山空港
300800Z・・・30日8時現在(世界標準時)
29007KT・・・270°から7KTの風(西北西から約4m/s)
250V320・・・250°から320°の間で不定的に吹いている
5000・・・・・5000m(5km)の視程
SA・・・・・・砂(黄砂)
FEW030・・・少しの雲が3000ft(約910m)
BKN035・・・隙間がある雲が3500ft(約1060m)
16/10・・・・・気温16℃、露点10℃
Q1010・・・・気圧1010hPa

 各空港を示す4桁のICAOコードについては下記を参照してください。


実際によくある気象現象の例

 (SH)RA、(SH)SN、などはいわゆる普通の雨や雪です。そこに+やーが付くと強かったり、弱かったりします。SHがついている場合はにわか雨(雪)ということになります。さらに、TSが付いていれば、雷を伴っているということです。

 BLDUは強風などで地上のチリが巻き上げられ、視界が悪くなっている状態です。主に成田空港周辺で発生します。下記に当該事象の動画を添付します。



 FZPLは着氷性のある凍雨で、翼などに雨が降り注いだ直後に凍ることがあるので非常に厄介です。翼などで氷ができると、飛行に支障をきたすことがあります。


※画像をクリックすると国土交通省の『航空機への着氷』資料へ飛びます。



 SAやHZは、日本上空において、中国上空から飛来した黄砂やPM2.5などの大気汚染が観測されているときに表示されます。一般に、この影響により、視程が5000m以下になるとMETARに表示されます。

※画像をクリックすると、気象庁の最新の黄砂情報にアクセスできます。


METARやTAFを日常生活に活用する

 METARAやTAFを日常生活に活用するメリットは、生活圏が空港に比較的近い場合、一般的な天気予報・実況天気よりもより細かく状況を把握できることです。反対に、細かすぎたり、略語など覚えることも多かったりと、解読するための知力が必要であることはデメリットと言えるかもしれません。


【参考文献】
中部航空地方気象台



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?