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司法試験戦争からの戦略的撤退

司法試験撤退につきまとう葛藤ランキング第1位は、「ここまで勉強してきた時間とお金がもったいない」で間違いないでしょう。
まだ持ち駒があれば、進むべきか退くべきか誰しも迷うと思います。

そこで、今回はそんな迷える方々のために
①撤退するとしても司法試験の勉強ってそんなに無駄にはならないよむしろ役立つよ
②それはそれとして撤退には相応の理由があるべきだよ
という話を(私のちょっとした愚痴を添えつつ)したいと思います。

「司法試験を受験した」だけで、アドバンテージになる

前回も書きましたが、民間就活なら「ロー卒です」あるいは「司法試験受けました」ってだけで「じゃあ基本的な法律の素養はあるんですね」と受け取ってもらえて、勝手に評価されます。
こちらとしてはイヤイヤ企業法務なんて欠片も実務的なことわからないですけど?!と焦るところですが、どの企業もそこのところは別に大丈夫というスタンスでした。法律学習の下地があるって結構貴重なことみたいです。
面接で法律の知識的なこと聞かれたのも、私が受けた中では興味本位で出した変なベンチャー1社だけでした(即辞退しました)。

公務員試験を受験するなら、司法試験のための勉強はそのまま横流しで使うことができます。国家総合職・一般職、地方上級、裁判所、衆参事務・法制局などなど……法律が選択できるものなら、なんでもいけます。
専門多岐は短答の知識で十分です。私と違って予備短答を真面目にやっていた人なら、なんにもやらなくてもいいくらいです。
論文は国家総合職や都庁Ⅰ種Aあたりがちょっと難しめですが、司法試験に比べたら寝てても書けるレベルです。こんなこと言ったら普通の受験生にキレられるかもしれませんが、ローの期末試験の方がよっぽどしんどいです。

そんなわけで、撤退する場合でも司法試験に向けた受験勉強の経験を存分に活かすことができます。周囲の人に事情を説明するときも、こう言えば納得が得られやすくなるのではないでしょうか。私の親は「司法試験受けんのやめたわ」と言ったら「へー」で終わりでしたが、世の中のまともな親御さんは心配すると思うので……。

さて、ここまでで「そんなに楽なら撤退しちゃおっかな」と思い始めた人が結構いるんじゃないでしょうか。いいぞ!やれやれ!と言いたいところですが、一応ちょっと立ち止まって考えておきたいこともあります。

司法試験撤退のホンネとタテマエ

司法試験やめたいって思う理由ってどこにあるんですかね。たぶん単純に、勉強つらいからもうやりたくないよ……って人がほとんどだと思います。受かる気がしないとか、このまま続けて五振したらきついとか。
そういう理由で撤退することは全然悪じゃないと思うんですが、その本音とは別に「建前の撤退理由」を持つこと、あるいは本音を煮詰めていい感じの建前に昇華するという作業が必要になります。

というのも、司法試験撤退組は「なんでやめたの?」って絶対に聞かれます。面接でこの質問をしてこなかった企業はひとつもありません。公務員試験の面接でも官庁訪問でも、ほとんどの面接官に聞かれました。もう最後の方はどうせ聞かれるから先に志望動機に絡めて話すようにしてました。
ここで相手を納得させる積極的な理由が話せるかが、成功のカギになるような気がしています。
だから、よくよく考えて決めてほしいです。法曹の道を捨てる自分に、ちゃんと胸が張れるかどうか。

私の撤退理由の本音は、「そこまでして法曹になりたいわけじゃない」でした。私が世界で一番苦手なことは努力です。死ぬほど苦手なことをして、いつ受かるかわからない試験を受けて、司法修習も二回試験もしんどくて、それなのに就職してもワークライフバランスは取れず、一生優秀か優秀じゃないかでマウントを取り合う……そんな法曹の世界にうんざりしたからです。
司法試験周辺って常に評価がついてまわりますよね。ローの成績とか予備合格したかとかに始まり、四大のインターンがどうとか合格順位がどうとか……。きっと就職したら昇進スピードとか年収とかで争うんだと思います。マジお疲れさまです。私はその戦争には参加しません、ばかばかしいので。
これが本音の部分です。

で、建前は「他にもっとやりたいことがあったから」です。ざっくりした軸なので、業界とか職種によって言い方は変えていました。でも、本音とそこまでかけ離れているわけではありません。本音の綺麗な部分だけを掬って成型したらこんな感じになります。
公務員試験では「既存の法律を運用する司法より新たなものを作れる行政に携わりたい」みたいなことを言ってました。別に嘘ではないです。
民間では「検察官志望だったんですけど、検察とかって組織が旧態依然としてるじゃないですか(笑)私はもっとボトムアップでやりたいんです!」的なのがウケがちでした。もちろん企業の色にもよるので、そこは企業研究次第です。

とにもかくにも、撤退するからにはそれなりのきちんとした理由が必要です。前の恋人に未練がある人とは付き合いたくないのが人間の心理です。自分は司法試験のことはきっぱりフったんです!と真摯に伝えられないと、新しいお付き合いは始まりません。

突き詰めて考えて、撤退って案外前向きじゃんって自分で思えたら、きっとこれから先も迷わず進んでいけるはず。
逆に、やっぱり自分は法曹になりたい気持ちが強いなって気づくきっかけになるかもしれません。それなら弛まず努力を続けるだけです。

人生の戦略を決めたあなたに幸あれ!

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