(G)I-DLEの「TOMBOY」がTOMBOYすぎる
3月、ガールズグループ(G)I-DLE(以下アイドゥル)が1stフルアルバム「I NEVER DIE」で1年ぶりにカムバックしました。
タイトル曲「TOMBOY」は、音楽チャートや音楽番組で1位を席巻、快進撃を続けました。
例に漏れず私もたくさんこの曲を聴きました。
否、今も聴いています。
強くありたい時、何かやらなくてはいけないことが控えている時に聴くと最適です。
TOMBOYとは何か。
英語でお転婆やボーイッシュの意。 元々は騒がしい男性という意味の言葉で、男性に対して使われる言葉であったが、次第に女性に対して使われるようになり、現在では完全に女性に対してのみ使われる言葉となっている。(Wikipediaより)
tomboyという単語の意味を踏まえてこの曲を聴くと、「なるほど、tomboyだな!」と思ったことがいくつかあったので、まとめました。
調号と臨時記号
この曲は、変イ短調、もしくは嬰ト短調、の曲といえます。
調号はこんな感じ。
この変化記号の多さ、おまけに短調。
譜面の見た目だけでも、一筋縄ではいかない感があります。
特徴的だと思ったのは、サビのコーラス部分(動画1:00〜)です。
2小節目の、楽譜通りだとD♭になる音に、臨時記号♮がついてDの音になります。
終盤のメロディー(2:27〜)や、口笛の旋律(2:44〜)でも、D♭がD♮に変わっている部分があります。
E♭→D♭→E♭でも音楽的に問題無さそうですが、
あえてE♭→D→E♭という、半音だけ上下するメロディーにすることで、音楽に少々のいびつさを加えます。
アイドゥルの別の曲「LATATA」でも、臨時記号で半音階にしているメロディーがあります。
(音の変わり目が曖昧ですが、あえて楽譜にするとこんな感じ?)
半音階を使ったメロディーは、(G)I-DLEの楽曲の独特の雰囲気を出す要素のひとつなのかなと思いました。
歌声の多様性
たとえば映像を見ずに音源だけ聴いても、誰がどのパートを歌っているのかが分かるくらい、それぞれのメンバーの歌声に個性があること、
これはアイドルグループにとって強みのひとつだと思います。
アイドゥルにはその強みがあります。
メンバー全員歌声に一癖あって、それぞれ違う魅力があると思います。
ボーカルの知識は全く無いので、個人的感想だけ書きます。
ミンニ (0:14,1:00,1:55)
まず声質に個性がありますよね!幻想的で独特な雰囲気があります。
音と音の境目をはっきり変えるのではなく、緩やかに変えて曖昧になるように歌う、という歌い方をよくやっているなと思います。
カッコいい。
ソヨン (0:30,1:18)
強いです。歌声が鋭い。
綺麗に歌おうというよりは、話している、訴えているかのようなラップ、ボーカルだと感じます。
声を裏返すところとかが技アリという感じです。
カッコいい。
ミヨン (0:44,1:41)
ミンニとは少し違う、パワフルな歌い方です。
歌声が地を這うように響きます。
2NE1のボムに歌い方が似ているな〜と思います。
カッコいい。
ウギ (0:52,1:15,1:48)
地声はそんなに低くなさそうですが、低い音がきれいに当たりますよね!
高いキーを歌う時の、少し掠れたハスキーボイスも特徴的です。
カッコいい。
シュファ (1:07,1:33,2:12)
今回かなりパートが増えました!
他メンバーよりも、少し幼さのある地声のままの歌声や発音が特徴です。2:12〜のla la laのパートが分かりやすいです。
かわいさもあり、やっぱりカッコいい。
誰も普通の歌い方をしません😂
メンバー全員が型にはまることなく、それぞれが存在感を出すことで、
良い意味で統一性が無く、個性的な曲になります。
メインボーカルのミンニのラップから始まり、メインラッパーのソヨンのボーカルが続く、という部分もポイントだと思います。
ポジションにも囚われないアイドゥルです。
ジェンダー観
次は歌詞に注目します。
歌詞を要約すると、
私の態度に文句を言うなら勝手にすれば良い、
あなたの価値観に合わせるくらいなら私はTOMBOYになる
という内容です。
あなた(너,you)は男性を指していて、
男らしさ、女らしさ、という固定概念を無くす、という意図がこの歌にはあると思われます。
ソヨンのラップ詞は、特に具体的に描写されています。
男女平等化が進み始めている世の中ですが、
まだ一般的に、特に家庭内においては、
父親、男性が代表者になり、女性は男性に守られ、陰で支える立場をとる、というのがステレオタイプです。
当たり前に男性の方に権力があるとは限らない、というメッセージではないでしょうか。
一般的には上品さに欠けると言われそうな、あけすけな態度ですが
それを「女性だからといって」変えるつもりは無い、という意味だと思います。
また、最後のパート。
この「男でも女でもない」というのは、単純な性別のことではなく、「世間が思う男性像、女性像のどちらにも当てはまらない」という解釈をしました。
男性だから(男性ではないから?)、女性だから、という意識ではなく、
ただ「私」が思うように、という意識で、彼女たちは生きているのです。
人の価値観やふるまいにおいて、男らしさ、女らしさというジェンダーでの区分けを撤廃する、というのが、アイドゥルがTOMBOYで伝えたいことなのではないでしょうか。
先述したように、
「tomboy」は、元々男性に向けて使う言葉でしたが、現代では女性に向けて使うことが多い言葉です。
「boy」という言葉が入っていながら、女性を指すという、性別の曖昧さにも通ずるものがあります。
以上のように、TOMBOYは、tomboy(お転婆娘)のように、
既存の型にはまらず、むしろ壊すような曲作り、歌作りをしていると感じました!
TOMBOY以外のアルバム収録曲もとても素敵で、I NEVER DIE、こんなところでは死なないぞ、という執念を感じました。
良いアルバムです!
読んでいただきありがとうございました!