車のエアコンガスの補充!費用の目安、やり方について整備士が解説
3級整備士の闇です!
第149回の今回は車のエアコンガスについて書いていきたいと思います。
〈エアコンガスとは?〉
エアコンガスは、車のエアコンシステムに充填されている、専用の冷媒ガスのことです。エアコンガスの気化熱を利用することで冷房が機能しています。
・エアコンガスの種類
エアコンガスは環境問題への影響等により、時代の変化に応じて使用されるガスが変化しています。 2020年前後はまさにそのガスが切り替わりつつあるタイミングで、市場では以下の2種類のガスが混在している状況です。
HFC-134aまたはR-134a(従来のガス)
HFO-1234yfまたはR-1234yf(ノンフロンの新しいガス)
それぞれ互換性はなく、134a以前はR12と呼ばれるガスが使用されており、このガスは1996年に全廃されました。
今後は、すべて1234yfへと切り替わっていきます。
使用されているエアコンガスの種類を判断するには、エンジンルームまたはボンネットを見ると種類と量が記載されたステッカーが貼り付けてあります。また、車両取扱説明書にも記載されています。
・エアコンガスの役割
エアコンガスは冷房を効かせるために必要不可欠です。 システム内でのエアコンガスの流れは以下のとおりです。
コンプレッサーで圧縮される(高温高圧の気体)
コンデンサで冷やされる(低温高圧の液体)
エキスパションバルブで霧化される(低温低圧の気体)
エバポレータを通って室内に冷えた空気を送る
再びコンプレッサーに戻ってくる
エアコンガスが霧化されるときの気化熱を利用することで、エアコンの冷房が機能します。
気化熱とは、液体が蒸発して気体になるときに周囲の熱を奪う現象のことです。
〈エアコンガスが少ないとどんな症状がでる?〉
エアコンガスが規定量より減っていると冷房の効きが弱くなり、最終的にはまったく効かなくなります。冬場では、A/Cボタン ON時の除湿性能が低下します。
また、シュ〜という音がエアコンユニット内部から聞こえたり、車内でエアコンガスが漏れていると、独特の臭いがエアコンの吹き出し口から出てくる風と共に臭ってくることもあります。
〈エアコンガスの補充をしないとどうなる?〉
エアコンガスの補充は、ガス漏れの発生がない限りは基本的に不要です。 よって、一般的な車の使い方をするオーナーさんにとって、定期的なエアコンガス補充をしなければエアコンが効かなくなるというようなことはありません。
エアコンシステムは完全密閉ではないので、ガスの補充が必要という意見も見られます。 しかし、ガスが漏れていない限り補充しなければエアコンが効かないほどになるのは、かなり年式が古い車です。(例:家族の車で新車から20年経過してますが、エアコンの効きは良好)
「補充が必要な状態=ガス漏れが発生している」ということなので、最優先するべきはエアコンの修理です。
〈車のエアコンガス補充の費用の目安〉
エアコンガスの補充の費用目安は4,000円〜です。 使用するガスの量や種類によっても費用は大きく変わります。特に1234yfのエアコンガスはまだ市場での価格が高額なので、ガスの補充だけでも10,000円以上は最低限必要になります。 作業時間は30分〜1時間程度が目安です。 エアコンガスの補充は、整備工場のみならずガソリンスタンドやカー用品店等でも実施できます。
〈車のエアコンガスの交換は何年毎が目安?〉
エアコンガスの交換は必ずしも必要ではありませんが、もし交換する場合には7年(新車から3回目の車検)程度を目安に行うと良いでしょう。 車のエアコンガス交換について、もう少し詳しく解説します。
・専用の機械を使用した作業がほとんど
車のエアコンガスの交換について、単純な交換と言うよりは、専用の機械を使用した「エアコンガスクリーニング・エアコンガスリフレッシュ」といったメニューで、案内しているお店がほとんどです。 全自動で以下の手順で実施。
システム内のエアコンガスの抜き取り
真空引きでシステム内の不純物や水分を吸い出す
エアコンガスとエアコンオイルを規定量充填
場合によって、添加剤等も同時に充填
機械を使うメリットとして、効率よく確実な交換が可能な点と、実際に抜けた・補充したガスの量が数値で確認でき、可視化できる点にあります
・エアコンガスが減る要因
エアコンシステムには複数の配管やホース、部品があって、それぞれが接続されています。 接続箇所にはガスケットが入っており、エアコンガスが漏れないように密閉されています。しかし車(のエアコンシステム)は夏は炎天下、冬は雪に埋もれ、雨にさらされ、走行による振動や衝撃...といった過酷な環境下での使用により、ほんのわずかずつですが漏れ出していると言われています。
しかし車利用によるエアコンガスのわずかな漏れは、ガスケットの不良や劣化によりガス漏れが発生するのと比較して、エアコンの効きが悪くなる要因になるようなものではありません。(何十年も経過した旧車などの特殊なパターンを除く)
〈エアコンガスには車種に応じた規定量がある〉
エアコンガスの量は車種に応じて規定量が定められています。 また、規定量は前後数十gまで許容されているものもあります。 おおむね乗用車では350〜700g程度が目安量です。 数百g程度のエアコンガス量の低下では、効きが弱くなってても気付かないことが多いです。
定期的な交換は規定量に調整できて、エアコンシステムにとって、常にベストな状態に保てることがメリットです。
〈車のエアコン補充を自分やる方法〉
車用のエアコンガスの補充は、専用の器具とガス缶さえ用意すれば自分ですることも可能です。 整備士の目線から、エアコンガス補充を自分でやることに対して解説します。
・【前提】セルフでの補充はおすすめしない
「エアコンの効きが悪い=ガスが減っている」と判断して、ガスの補充を求める人が意外と多くいますが、すでにお伝えしているようにエアコンの効きが悪くなる不具合要因は様々です。 もし、ほかに原因があるのにエアコンガスを規定量以上に補充すると、内部の圧力が異常上昇してエアコンコンプレッサをOFFにしてしまい、エアコンが効かなくなくなります。
エアコン不具合の正確な診断はプロの整備士でも苦手としてる人が少なくありません。 セルフとなると作業そのものも簡単ではなくて、ガスチャージ用の専用器具の使用方法にはコツや十分な知識が必要です。 よって、基本的にはセルフでのエアコンガス補充はおすすめしません。
・エアコンガス補充のやり方
エアコンガスの補充には、内部の圧力を確認できるゲージ付きの専用器具が必須です。 エアコンの配管にある低圧側のチャックに接続して、エンジンを掛けてA/CボタンをONにして最強冷&最大風量&内気循環にします。 (整備工場が使用するゲージマニホールドという器具は、高圧側にも接続して圧力を確認することができます)
このときの指定のエンジン回転数時の圧力を読み取り、ガス量の補充が必要か確認します。 (エアコンガス圧が低い=ガスが減っている訳ではないので、この点も正確な診断がセルフでは難しい理由のひとつです)
指定のエアコンガス缶を器具に接続して、過充填にならないようにゲージの圧力を確認しながら補充します。 缶を逆さにすると、エアコンコンプレッサーの故障につながる恐れがあるので注意しましょう。
〈整備士のまとめ〉
ガスケット不良によるエアコンガス漏れ程度だと、修理費用も数万円で済むこともあります。しかし、修理に際してエアコンコンプレッサの交換等が必要になると、10万円、20万円〜といった高額修理の可能性も発生します。
また、エアコンに不具合があるとき、該当箇所だけを部分的に修理したとしても、ほかの部品にも負担がかかっており、立て続けて修理が必要になることもあります。
年式が古かったり、走行距離の増えた車の場合には、エアコンの不具合をキッカケに乗り換えを検討するのもよいかもしれませんね。
今回は車のエアコンガスについて話させていただきました。
ぜひまた見に来てください!
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