【令和最新版】同人ゲームのキービジュアルを作ろう2023
「ゲームにかかわる人が自由な記事を作る Advent Calendar 2023」15日目の記事です。
グラフィック難民のゲーム制作者のみなさん、こんにちは!
グラフィック制作、してますか!?
今回は、イラスト素人がなるべくコストをかけずにアド高な宣材イラストを制作するための試行錯誤の過程を紹介していきます。
レギュレーションはこちら↓
なるべく金をかけずにイラストを制作する、最低限の労力で最大限の成果を出すことを目標とします。
なお、作っているゲームは成人向けBLゲームですが、キービジュアル自体に性的な要素はありません。
他のジャンルにもある程度応用できると思います。
市場調査
というわけで、まずは同ジャンルのゲームのキービジュアルがどんな感じかを調べました。
具体的にどんな画像が出てきたかは各自「BLゲーム キービジュアル」とかで検索してください。
ひとまず、最近5年くらいにリリースされた商業・同人BLゲームのキービジュアルを集めた結果、以下のような傾向が見られました。
これに追加で、同じ女性向け恋愛ものということで乙女ゲームのキービジュアルについても軽く調査をしました。
こちらについては、商業(コンシューマー)のみ・リリース時期は厳密には定めずネット上での露出が多そうなものをピックアップしました。
そこで調べた傾向として、BLゲームとの大きな違いは「主人公がいない場合がある」ことです。
BLゲームの場合、先述した例外のパターンを除くと主人公はほぼ皆勤賞なので、ある意味正反対の傾向とも言えます。
とはいえ、主人公がキービジュアルに全然いないかというとそんなこともなく、主人公がいる:いないの比率は体感6:4くらいな印象でした。
逆にBLゲームと共通の傾向としては、「主人公センター+攻略対象バック」の構図率の高さが挙げられるでしょうか。
この構図が大半を占めるとまでは行かないものの、「女性向け恋愛ゲームのキービジュアルってだいたいこんな感じだよね」という印象を抱かせる程度には割合として多かったです。
本作の傾向
さて、類似ジャンルの傾向はだいたいわかりました。
それでは次に、今回キービジュアルを作成するゲームの概要と、キービジュアルを作成する目的を整理しておきましょう。
話の内容としては、ハッピーエンドなら正統派のBL、バッドエンドだと敗北エロを楽しめる一粒で二度美味しい構成です。
攻略対象は魔塔に棲まう魔族、主人公は魔塔に挑む冒険者という設定ですが、ストーリーはそこまでシリアスではなく、ラッキースケベ多めのコメディ寄りなテイストになっています。
キービジュアルは広報・販促のためのあらゆる場面で使い倒しこすり倒すつもりで作りますので、見るたび後悔に襲われないためにもクオリティはなるべく上げていきたいところです。
案出し:描く人数
以上の要素を踏まえた上で、どういったイラストを作成すればもっとも広報的な効果を得られるかを考えていきます。
まず大事なこととして、「主人公ピン」か「メインキャラクター全員入れる」かを決めます。
ここで画面に入れる人数が1人か6人かが決まるので重大な決定ですが、これはほぼ初手で全員入れようと決めていました。
やはり恋愛ものなので、どういったキャラクターと恋愛できるかの情報はなるべく開示しておきたいというのがあります。
また、主人公ピンの場合、よほど主人公のキャラデザがハマっていないと印象が薄くなるのではという懸念もありました。
最近の商業BLゲームで主人公ピンのキービジュアルのものだと、ニトロキラルの「スロウ・ダメージ」なんかがありますが、これはめちゃくちゃ主人公のデザインがいいです。さらにハチャメチャに絵が上手い。
私はキャラデザ力(ぢから)も画力も遠く及びませんので、主人公単体の魅力で勝負するよりはキャラクターを増やして情報量を増やす方向で行くことにしました。
案出し:構図
次に、印刷用途を想定して、画面構成的な観点から構図案を出しました。
詳しくは「イラスト 構図」とかで検索するとわんさか情報が出てくるので割愛しますが、対角線とか三分割とか、そういうのを参考に人物の配置を考えました。
ラフ自体は他にも大量に描きましたが、まあまあいけてるのが↑のやつらです。
あまりにも大人数の絵が描けなかったので、「多人数 イラスト」とか「集合絵 描き方」とかで検索したりしていました。
で、気に入ったラフをもうちょっと描き込んでみたのが↓です。
これに色を乗せてみたのが↓です。
色を乗せてもやはり気になるところは気になるまま…
ということで、この辺で人の意見を聞くことにしました。
女性向けゲーム(BLではない)を作っている方に相談しながら、「落ちる」という要素は残したまま別案を考えてみます。
ここから色をつけたのが↓です。
エロゲだから背景ピンクでよくね!?とか言ってた気がします。
色ラフ
おおよその方向性は決まったので、ラフを詰めていきます。
このあたりで、「ひとつのイラストの中に注視してほしいポイント(=人の顔)が6つもあるのは多すぎる」ということに気づきますがどうしようもありません。
次に作るゲームでは攻略対象の数を絞ろうと思います。
さて、ここまでですでに1週間が経過していました。
だいぶ行き詰まってきたので、ここらでひとつプロの意見を聞くことにします。
ココナラで添削サービスを利用しました。
色ラフを添削してほしい旨を明記してメッセージを送り、ご承諾いただけた方に添削していただきました。
具体的な添削内容は割愛しますが、添削の結果修正したものがこちら↓
とりあえず背景ピンクはやめました。
というか、おそらく背景は利用用途によって変わってくるので、一旦背景のことは考えないことにします。
背景はデザインする私がなんとかしてくれる!(は?)
下書き
ラフが決まったところで下書きに入ります。
今回、各キャラクターはほぼ全身を描いて、デザイン時にトリミングすることにします。(使いまわしできそうだし)
下書きの時点で、線画で引くべき線はほぼすべて引いておくようにします。
描き込みの量はイラスト全体のクオリティに直結します。特に私のようなものぐさな人間は、「描き込みすぎて情報量過多」になることはまずないので、描き込める部分はできるだけ詳細に書き込むようにします。
デッサンの狂いなんかも、ポーズモデルを使ったり左右反転したり時間を置いてみたりして不自然さがなくなるまで修正します。
とはいえあくまでも正位置の状態で不自然じゃなくなればいいと思ってるので、反転しても美しい!とかは目指していません。反転するなよ!
全身図×6人分ということで、まあまあ…だいぶ…当社比かなり時間はかかりましたが、ひとまずこんな感じで下書きは完了しました。
軍服キャラの飾緒(肩についてる紐)はブラシを使うのでこの時点では適当です。というかこいつ、服もだけど髪も作画コスト高いので描いてる間キレ散らかしていました。
迷い線をなるべく減らすために下書きのペンは細めのものを使っていますが、それでもところどころ太いところがあるんだよなぁ…
ぶっちゃけ人物イラストは首から上のクオリティが高ければまあまあ誤魔化しは効くと思うのですが、私は人体の中で首から上を描くのがクソほど苦手なので白目を剥きながら描いていました。
とにかく主人公の顔を可愛くすること、髪の毛を描き込むことを意識しつつ…
線画
下書きに納得できたところで線画に進みます。
主線はあまり強弱の付いてない線が好きなので、クリスタにデフォルトで入っているカブラペンを最近は使っています。
しかしどんな太さにすればいいのかは全然わからない 俺たちは雰囲気で線画を描いている
主線は太すぎると野暮ったく見えたりしますが、細すぎても絵の印象が弱くなってしまうのでいい塩梅にしたいところです。その塩梅がわからんから困っとるんやろがい
ひとまず今回は、A4/350dpiでペンの太さは「6」、ベクターレイヤーでゴリゴリ描いていきました。
別にラスターでもいいんですが、線画もあとから修正しまくるのでベクターの方が何かと都合がいいことが多い
というわけで出来上がったものがこちら↓
線画だけの画像書き出すのめんどかったので下塗りまで終わってるけどまあ心の目で見てもろて
輪郭以外の線(服の皺とか)は気持ち細めに描いていますがやっぱり塩梅はわからない
あとこの時点で主線の色を茶色にしてレイヤーモードを乗算に変更しています。色トレスしなくてもそれっぽく見えるようになるので最近はこうしてます
塗り
問題の塗りです。
「ポルピュリオスの魔塔」のグラフィックは、アニメ塗りをベースにすることに決めていました。
この辺の絵柄とか塗りのトンマナ(トンマナって言いたいだけ)は揃えておきたいので、制作開始したら早めに決めるようにしています。
で、基本はアニメ塗りなんですが、一枚絵としての鑑賞に耐えうるリッチさは必要です。
アニメ塗りでリッチさを出そうとすると、だいたいエフェクトとかライティングとかを工夫することになると思いますが、今回は背景込みの一枚絵というよりは複数の立ち絵の組み合わせのような構成なので、キャラ単体の絵では派手なエフェクトはちょっと入れにくいです。
まあ影をでかめに入れておけばだいたいドラマチックに見えるので、そんな感じでやっていきます。
というわけで主人公を塗ったものがこちら↓
首から上がちゃんとしてればそれなりに見える!というわけで普段は(あんまり)頑張らない首から上を頑張りました。
空気遠近の表現として影の濃いところに青系の色を置くといいらしいので置いてるんですが、なんかあんまり青みが目立たなかったな…
それから、影自体をぼかすのではなく影の中でグラデーションを作ると陰影がそれっぽく見える気がしました。あと質感はハイライトが9割
ともあれ、このクオリティを基準として他のキャラも描いていきます。
そんなこんなでこうなりました↓
塗りはハイライトが9割!
仕上げ・デザイン
ここから小手先のテクニックを使って見栄えを上げていきます。
ラフにもある瓦礫をここで追加します。
瓦礫自体はブラシを使いました。最初から入ってたやつかダウンロードしたやつかわからんけど既に入ってたやつです。
適当にビャッとやって変形ツールでパースらしきものを効かせています。
一応軽く影もつけてますが、あくまでも賑やかし要員なのであんまり細かく描き込まないようにしました。
それから、私はいろんな色を使うのが苦手なので、ここで色味を増やして情報量を上げていきます。
空気遠近を意識しつつエアブラシで色を乗せたレイヤーとかグラデーションレイヤーとかを透明度下げつつオーバーレイで重ねると手軽に色味を増やせていいです。
で、こうなりました↓
問題の背景は、彩度低めで攻略対象たちが埋もれない色…ということでこんな感じになりました。
まあ媒体によっては別の色とかになってるかもしれませんが、一応これが正式版ということで
今回、攻略対象たちにイメージカラーを設定していたので、その色は避けた結果この色です。
当初ベタ塗りでしたが、キャラにかけたフィルターの関係で下側は暗めにしてみました。
ここからさらに、攻略対象の顔をもうちょい目立たせたり瓦礫の調整したりして完成です!
完成
最終的にこうなりました。
自画自賛しますが、かなり…いいんじゃないでしょうか!?
主人公はかわいいし、攻略対象のキャラクターもわかるし、画面もなかなか華やかだし!
今後ポスターやらフライヤーやらジャケ画やらでクソほど使い倒すに足るイラストになったんじゃないかと思います!
私は神絵師ではないので、世にある「目を引くイラスト」がなぜ目を引くのかを言語化した上で自分のイラストに落とし込もうとしたわけですが、一応の成果は出せたんじゃないでしょうか。
少なくとも自分の目から見て目を引くイラストにはなっているので!
反響
そんなこんなでキービジュアルが完成しまして、今月のスーパーゲ制デー(毎月第二土曜にゲーム制作の進捗報告をするXのタグ企画)(今回は12/9)にキービジュアルと、あわせてゲームの公式サイトの公開をしました。
現時点(12/13)でのインプレッションはこんな感じ↓
ゲ制デー翌日時点でのいいね/リポストを直近半年のスーパーゲ制デーのポストと比較したものが↓です
直近半年のうち2回でシャドウバンされてるのであんまりあてにならない感じですが、一応投稿時間はどれもほぼ同じ(当日0時頃)なので、近い条件で比較はできると思います。
一応数値としては増えていますが、イラストそのものが良かったからなのか、単純にポストにイラストが付いていたからなのかはちょっとよくわからないというのが正直なところ。
元がそれほど多くないので誤差といえば誤差のような気もします。
参考までに前回前々回のゲ制デーポスト↓
↑の2ポストに比べれば、気合の入った一枚絵が添付されてるだけ目に止まりやすかったのかなとは思いますが…う~ん…
一応、ゲ制デーツイート後にBL好きっぽいアカウントにフォローされたりもしたので、おそらく成果は出ていると思います。思いたいです。
まとめ
わかりやすい成果が出たわけではありませんが、一応数値で見る結果としては微増となりました。
今回、一枚のイラストを描くためにだいぶ頭と時間を使ったわけですが、使ったなりに良いものは出来上がったと思います。
さっきも描きましたが私は神絵師ではありません。「なんとなく」で良いものは作れません。
なので、イラストを制作する目的、イラストに求める役割、イラストに持たせるべき意図、そういったものを明確にすることは大事でした。
つまりは「考えて描く」ということです。おそらく神絵師と呼ばれる人々は、私が考えて、意識しなければできないことを無意識のうちにやっているのでしょう。
ですが、私も私なりに意識すればある程度のところまではできるというのが今回の制作を通してわかりました。これはかなりの収穫です。
一枚の絵を描くだけで基礎画力が上がるわけではありませんが、魅力のある絵を制作するコツは多少なりとも掴めたように思います。
というわけで、今後のスチル制作もがんばっていきたいところです。まずは全スチルの大ラフ60枚!(白目)立ち絵エロのラフ200枚!(卒倒)
今回キービジュアルを制作したゲーム、「ポルピュリオスの魔塔」は現在絶賛制作中です!
公式Xでは進捗状況やたまにらくがきも投下しているので、18歳以上の全人類はチェックしよう!