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7/9 はまの朝をリレーする

梅雨明け待ち遠しい7月の第2日曜日ごろは例年市民清掃の日で、皆それぞれが近隣の線路や海岸沿いで、一斉に草むしりやゴミ拾いに集まる。コロナ禍により他の地区は軒並み中止になった去年も、はま地区だけは全員参加、開始時刻は7時だというのに7時前には広場にたんまりむしって積まれた草の山がある。早朝からまとまった雨が降ったり止んだりが続く今日、7時過ぎにはまへ着くと、渡船場でおばちゃんがダックスフンドの散歩をしながら、今日の市民清掃は来週に延期だと教えてくれた。昨夜食べたポテトサラダが、少し味が薄かったこともついでに。この天気だから、どうせ清掃は無いだろうと踏んでいたけれど、せっかく早起きしたので店に向かうことにした。
いつもコーヒーを飲みにきてくれるじいちゃんたちは、朝4時半に誰かと会って、朝の6時にみんなで待ち合わせして…なんて会話をごく当たり前に交わしている。夜行性の私が机に突っ伏して眠りにつく明け方、じいちゃんたちは元気に集まって茶を啜っているなんてもはやロマンであり、谷川俊太郎の「朝のリレー」の詩そのものではないか。鹿島通りで最後の明かりが消える頃、法橋公園にたむろする老人たちがその日1杯目のコーヒーを口にする…。
何も予定がない朝の8時はやっぱり瞼が重くて、お腹も空いていて、眠気覚ましを探して冷蔵庫を開ける。栄養ドリンクを取り出したら、「今年もできたよー」釣具屋のおばちゃんがガラガラと戸を開けて持ってきてくれたのは薄紅の赤紫蘇ジュース。おばちゃんの作るジュースは酸味とお砂糖のバランスが本当にちょうどよくて、赤紫蘇が苦手な人にこそ勧めたい。作り方を教えてくれるけれど、翌年に紫蘇を見かける頃にはすでにおばちゃんが赤紫蘇ジュースを作ってくれていて、ちっとも身につきそうにない。

だいたい清掃の日なんて設けなくてもはまは、春夏秋、季節の祭りが近づくと誰かしら気づいた人が、自分の家の庭のように掃除を始める。
見かけたら私も一緒になって草をむしる。嵐のたびに、港に打ち上がったゴミを集める。「港のゴミなんて集めたってキリがないよ、ご苦労やね」と通りすがりの人が知った風に言うこともあるけど、それはマジで掃除してないやつの言うセリフだから適当に流していて、それよりも近所のおいちゃんたちが、「いつもありがとう」と一緒に参戦してくれるのがありがたい。鎌やら斧やらを持ってきて、コンクリの隙間から伸びる強そうな木枝まで切り倒してくれる。おそらくしけの日も台風の日もあっただろうけど、幼い頃の私の記憶は、はまの港はいつもきらきらで透き通っていて、ゴミの溜まったところを見ると、なんだかはまじゃないような感覚がする。ここを訪れる人には、綺麗な海だけを目に焼き付けてもらうことが、何か意味がある気がしてる。

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