BtoBにおけるプライシング戦略(販売価格の決め方)を知りたい。

ビジネスが成功するかどうかのカギ「価格設定」とは

販売価格を決めることは、ビジネスにおいてとても重要な意思決定です。

KDDIの創業者、JAL名誉会長の稲盛和夫氏の名言にもあるように「値決めは経営である」ということなのです。
シンプルに考えると、売上というのは「価格×販売数」であり、この売り上げを作る数字が「販売価格」となるわけです。
低価格で大量に提供するのか、高価格で少数に提供するのか、それによってビジネス戦略も変わってきます。

ただ単に低価格で販売すれば売れるのでしょうか。
原価をかけずに品質の良くない商品を安く売ったところで、売上は期待できないでしょう。逆に高品質なものをあまりに低価格で売ったとしたら、売れば売れるほど赤字になってしまったというような価格設定では経営は成り立ちません。
販売価格の決める際に気をつけなければならないポイントは、最大限に利益を出し、最大限に顧客を増やすという、最良なバランスで経営を行えるようにすることです。

顧客が自社の商品やサービスを購入し満足すれば、間違いなく以後リピーターになるでしょう。
企業側はこのような「顧客価値」とを意識した上でマーケティング・営業活動を行うことが必要とされます。

「顧客価値」とは「製品やサービスに対して顧客が適正と認める価値」または「製品やサービスを利用することで顧客が実際に得られる価値」であり、商品そのものの価値に加えて顧客へのサービスが含まれるものです。
企業は、顧客が何を望んでいるのかを正しく理解し、それを解決するための商品やサービスを提供すること、これが顧客価値を向上させるということであり、市場で競合他者に勝ち抜くための要素でもあるのです。

価格設定には顧客価値を正しく把握することが重要な理由

1.ビジネスを維持するため

価格設定において考慮すべき主な要因は「顧客価値」「製造コスト」「競争環境」の3つです。

利益確保するには、製造コストを上回る価格設定が必要なので、製造コストが設定の下限です。一方、顧客価値は価格設定に置ける上限値です。
顧客が認める価値を超えるような価格で商品を販売することが難しいためです。

コスト<設定価格<カスタマーバリュー

2.お金を払う人によって価値観が違うから

BtoBのマーケティングにおける価格設定と、BtoCのそれは考え方が違うものです。
BtoBとはそもそも「Business to Business」、つまり法人ビジネスを意味します。
これに対してBtoCは「Business to Customer」で個人相手のビジネスです。

BtoBとBtoCではマーケティングに違いがあり、もちろん価格設定も異なってきます。
BtoB商品は、卸・まとめ売り・継続納品といった大口の取引形態が多くなるため、BtoCのようにインターネットから気軽に購入できるような商品でも、まずは実際顧客と会って商談成立に持っていくことから取引が始まります。
取引額も大きくなるため、取引を行うにあたり自社の会社規模や取引実績といった信頼性の高さを示すことも必要になってきます。

3.お金を払う人によって支払う値段を決める手順が違うから

BtoCでは、顧客が欲しいと思ったらそのまま商品を購入するでしょう。決済者は購入した本人です。
しかしBtoBでは、例えば社内で上司から指示を受けた担当者が探しているケースもあります。

また、担当者が決裁権限を持っていたとしても、購入の際には社内で相談したり、予算を確認したりすることが必要なケースもあります。これが社内稟議システムであり、社内稟議を通して複数の人物が決裁を承認しなければならないことも考えられます。

稟議書には必ず自社にとって「投資に対しての利益がある」という内容を記載する必要があり、このため稟議書には論理的に顧客価値を説明できるような価格設定が必要になるのです。

BtoBで価格設定するための顧客価値を正しく計算する方法

1.できるだけ顧客価値を定量化する

BtoBマーケティングでは、特に「経済合理性」が重視されます。
このため出来る限り顧客価値の定量化を行うことが重要になります。
顧客に対して提供価値が定量的に説明できなければ、価格競争に陥ってしまう恐れがあります。

例えば、顧客から「営業効率化のためにタブレット端末を導入したい」との要望があるという事例を挙げてみましょう。
この時、以下のような価格計算の論理が考えられます。

①自社コスト+標準利益の価格設定

例えば、コストが1台当り5、000円、標準利益がコストの20%と仮定します。 

商品価格設定=コスト+利益=5,000円+1,000円=6,000円

②自社製品導入によるコスト削減効果から顧客価値を計算

例えば、営業が日報を書くために毎日会社に戻るための30分を無駄にしているとします。
タブレット端末導入により、営業1人当たりの時間が30分×20営業日=10時間の削減、営業担当の時給が2,000円とすると、毎月20,000円のコスト削減効果=顧客価値が生まれます。

顧客価値=コスト削減額=2,000円+10時間=20,000円

③自社製品導入による利益創出効果から顧客価値を計算

例えば、タブレット導入により毎月の営業担当の顧客訪問が5件増えるとします。
訪問受注率は20%、5件訪問すると1件受注できる換算です。販売商品価格が20万円で、粗利が20%とすると、40,000円となります。タブレット端末導入により、毎月営業1人当たりの40,000円の利益創出=40,000円の顧客価値が生まれます。

顧客価値=利益創出額=訪問件数5件=受注件数1件=20万円×20%=40,000円

このように3つのパターンで比較してみると「営業効率化のためにタブレット端末を導入したい」という同じ状況でも価格設定は大きく分かれることが分かります。

「コスト削減の顧客価値は20、000円/月」なので価格設定は18、000円/月、利益創出の顧客価値は40、000円/月なので価格設定は36,000円/月、といった計算が可能です。
一方、コスト+標準利益で計算すると価格設定は6、000円/月です。

このため「コスト+標準利益」で販売価格を決めた場合、本来得られるはずの利益を逃すことが予想されます。
顧客価値を論理的に算出し顧客を納得させることができれば、顧客は元のコストより遙かに高い価格設定でも購入することが考えられるのです。

まとめ

・価格設定は顧客価値を正しく計算する
・顧客価値を納得させれば利益率の高い価格設定でも購入してくれる
・BtoBにおいては稟議で論理的に顧客価値を説明することが必要不可欠
・BtoCにおいても顧客価値は重要であるが、得られる価値は個々で大きく変わる


以上のポイントを踏まえ、価格設定を行っていきましょう。






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