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マイケルポーターの競争戦略論からコロナ禍における顧客コミュニケーションを読み解く

昔、『競争戦略論』という経営学の教科書みたいな本を読んだ、その内容の記憶が20年経った今も鮮烈に残っている。著者のマイケルポーターが言っている要旨は、

1.やめることを決める

2.他人と同じことはしない

というたった2つだったように思う。翻って今現在、新型コロナを契機に大きなマーケットチェンジが起こっている。ヨーイドンの『競争』に適応する上でこの考え方はとても参考になるのではないかと思う。

1つ目の「やめることを決める」というのは事業領域の絞り込みというだけではなく、その絞り込んだ領域の中の更に「誰に対して」価値提供するのか、誰に対しては「しないのか」を決めることにある。誰にとっても良いサービスというのは、誰にとっても大したサービスではない。究極まで想定顧客(ペルソナ)を絞り込むということだ。

昔から言われてる事では?と感じるかもしれないが結局多くの日本型旧来ビジネスモデルはそれをしてこなかった故、Amazonや Appleや様々なプレイヤーの後塵を拝しているのだ。マーケットを寡占してしまえば、後は絞り込んだものを広げても顧客はついてくる。

2つ目の「他人と同じことをしない」は、「やめることを決める(=絞り込む)」際の判断に関わってくる。一般的に既存の市場で勝負する場合、先行者の持っているアドバンテージはとても大きい。顧客があえて後発の売り手(自分)にスイッチするには、相応の理由ときっかけが必要だ。

なので一見して「他と違う」ことを示すことは、顧客への何よりのアピールになる。決して安易なキャンペーンやクーポンで価格を下げることをしてはいけない。割引では良質な顧客を開拓することはできず、値下げした価格が基準となってしまう。

そうではなく、今までのサービスと似ているがありそうでなかったもの、必要性に顧客は気づいていなかったがニーズを自ら顕在化できたものあれば、後発であっても十分にその価値を認知され、顧客を得ることが可能なのだ。

そしてこれら2つの原則はSOHO・小規模事業者の我々にもピッタリ当てはまると考えている。単に絞るのではなく、市場にいる先行他者を理解し、同じポジショニングは絶対に取らないということだ。「このサービスはまるで自分のために考えられたようだ」と、相手が感じてくれることが、信頼構築の第一歩になる。まだ会ってもいない顧客とのつながりは、商品サービスを通じて発信するメッセージを経由して成立させることは十分に可能だ。

コロナ影響でweb非対面での販売機会が増えているが、単に店舗からオンラインショップに切り替えました、では顧客の満足を高めることはできないし、顧客が増えることもないだろう。

web非対面でのセールスにおいて大切なことは、そこに表すテキストや画像を通じた顧客コミュニケーションに最大限の想像力を働かせ、まだ会ったことのない相手が「これは過去のサービスとは異なる、間違いなく自分にとって有益なものだ」と確信を持ってもらうことにある。

それらを形にするには時間や手間は確実にかかるだろう。商品のネーミング、説明文、アイコン、商品写真、日常生活における利用イメージ、利用者の声、サポート体制、FAQ、サムネイルetc. 適当で良いものは一つもない。しかし、それは市場で先行している多くの他者がさほど手間をかけずに機械的にやっていることだろう。だからこそ、そうでないやり方に価値があるのだ。

魂は細部にこそ宿り、そして心ある顧客は恐ろしいくらいにそれを見抜く能力がある。出会ったこともない、初見の販売者や商品であっても、webサイトに込められた売り手の気持ちと大切にしている価値観が通じた時、その顧客は購入するだけでなく既に貴重なインフルーエンサーの1人になっているだろう。

今の時代、感度高い消費者は誰もマスメディアや売り手自身から発信されたプッシュセールスの広告などでは判断していない。「これはいいよ、この人は大丈夫だよ」と身近な信頼できる知人友人からのレコメンデーション(推薦)こそが、最大の情報源になっている。口コミ、という意味の大きさがこれほどまでに重要な意味を持つ時代になってきていることを十分に理解しておく必要があり、それに即したブランド戦略の構築と顧客へのメッセージ発信をしていくことが大切なのだ。

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