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病気や怪我による心への影響

こんにちは。
今日は病気や怪我による心への影響と、作業療法士の関わり方について話します。


私は病院に勤務する作業療法士です。
病気になった方、怪我をされた方の生活をデザインする仕事をしています。
病気や怪我は治っても、後遺症は多くの方に残ります。
体力が落ちた、身体が動かない、気持ちが折れた、生活環境が変わった。
後遺症は、身体のことだけでなく、その方の気持ちや環境も変えてしまいます。

元通り動く身体だから、元通りの生活過ごせるね!
ってことは実はあまりないんです。
怪我をしたから、ちょっと外出控えようかな
病気になったから、頑張ってたけど潮時かな
なんて、思っちゃうんですよ。
想像できますよね?

だから、私たちは身体の回復と同時に、心の回復も支援していかないといけないです。

心の回復ってどうするの?
一つは時間です。
落ち込んだけど、時間が経ったら前向きになった。
そんな経験は誰にもあるかもしれません。

それじゃあ時間をかけましょう!!



まあそれも大事だけど
時に身を任せるだけでは仕事としてあれなので
いくつかご紹介します。

○受容すること
病気や怪我で傷ついた心に対してしっかり寄り添うことです。
びっくりしましたね、つらいですね、不安ですよね、とその方が感じるものを共有することが大事になります。
人は自分を理解してくれる人がいるだけで、心が楽になったりします。

○話を聞くこと
上と同じ方向性です。
話を聞くことで、ああ理解してもらえている、そう感じることで心が楽になったりします。

○解決策があることを伝える
あなたのお困りごとに対して、一緒に考えますよ、そして解決する方法はたくさんありますよ。
と伝えることです。
不安は未来に対して起こる気持ちです。
あなたの未来は変えることができますよ、そう伝えることで気持ちは前向きになっていきます。

○あなたは悪くないと伝える
あなたが怪我をしたのは、病気をしたのは、あなたの習慣に原因があるかも知れないけど、それがすべてじゃないですよ。
好き勝手に生きても病気しない人もいるし、どれだけ気をつけていても怪我をする人はいます。
不運だったんです。
そのように認知の歪みに対して違う視点を与えます。
思い込みに支配されないようにするんですね。

○良い習慣は続けていこうと後押しする
ゴミ出しに出かけたら怪我してしまった。
じゃあもうそれは家族にお願いしよう…
いやいや、待ってくださいね。
ゴミだしはきっかけではあるけど、それ自体が悪いわけじゃないですよ。
そこにたまたまトラックが猛スピードで走ってきたのが原因だと思いますよ。
だから、今度は違う道を通ったり、道路に出る前に少し確認すれば良いかもしれませんね。
と、新しい方法を助言すると、解決策が見つかるかもしれません。

また、家事を家族に任せる…というのは一つの手段ですが、その方の役割を一つ失うことになります。
人は役割を全うすることで、社会での自分の在り方を感じることができます。
危ないからといって、今まで行ってきた家事を全て家族に任せた場合、その方は家族という社会の中で何をすれば良いのでしょうか。
代替できるものがあれば良いですが、役割や習慣はその方のアイデンティティを作り出すものですから、それを安易に崩してしまうのはリスクだと思います。
家事をしていたから、家族という社会の中での自分があった。それを怖いからと失ってしまうのは、その人の人生において、それこそ大きな転機になってしまいますね。


と、こんなところでしょうか。
他にもたくさんあります。

傷ついた心を回復させるには、その方の生き方を肯定することから始まります。
そして未来の不安に視点を増やします。
あなたは間違っていないんだと伝えます。
そして大事なのは、実際にやってみることです。
やってみて、気づくことが多いです。
「これなら、これからもやっていけそう」
「今回は運が悪かったかな」
「人生にうまくいかないな笑」
なんて笑い飛ばすことができると良いですね。

病気や怪我はその方に起こるイベントですが、その原因はその方にある訳ではありません。
様々な条件が運悪く重なって偶然に起きることもよくあります。
糖尿病だって幼少期の食事が影響しますし、遺伝するような病気や体質もあります。
誰かが100%悪いことなんてないんです。

病気や怪我をした、その事実と向き合って、病んだ心を回復する手伝いをすることも、作業療法士の仕事の一つだと私は思っています。

それでは。

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