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2021/6/1〜2 長野へ旅をした(下)
寝て起きた。
あの後私は上諏訪から2つ先の岡谷という駅で友人と落ち合い、ご当地ファミレスで飯を食い、泊めてもらった。
異郷の友人の家に泊まるのは初めてで特別な体験だった。
(ナイスなご当地ファミレスのナイスな看板。)
気づいた時には友人はもう仕事に出ており、かたや私は昨日歩き回ったツケでなかなか起き上がれず。
弾丸旅行のくせに家を出たのは10時頃だった。
曇天。
目の前にはハイウェイ。
左手には静岡まで続く天竜川が流れる。
前日と打って変わってこの日は快適に過ごせそうな予感がした。
10分ほど歩けば岡谷駅があった。
特に何かあるというわけでもない。
駅前のロータリーにあるララ・オカヤという商業施設。
商業施設、だった、に限りなく近い状態でそこに残っていた。
84年に地場の食品スーパー(松電ストア)とイトーヨーカドーをメインに運営が始まってから、30年以上の年月をかけて少しずつ衰退していったという。
売り場は3フロアくらいあったようだが写真の通り「もぬけのから」となっている1Fだけが現状で解放されている。
1階には和菓子の小売りと、飲食店を含むいくつかの小さいテナントだけ残っていた。
エレベーターの2,3階のボタンを押してもそのフロアには止まらず、それは物理的に、触覚からこの商業施設の衰退を私に伝える珍しい体験だった。
このエレベーターは最上階の駐車場と1階を橋渡しするのみにとどまっていた。
かつての面影を残して。
この施設は今年に閉館し、解体される予定だそう。
こういった大型ショッピング施設は他にも地方に点在する。
80年代〜90年代前半の物質的豊かさを我々世代に伝えてくれる稀有な存在だから、あるうちになるべく見て回りたいものだ(2年前に行った茂原のアスモという商業施設は最高だった!だってケーヨーデーツーが母体でドムドムが入ってるんだぜ、有形文化財だろもう)。
*
私は旅行のスケジュールをあまり詰めないでその場に向かうことが多く、旅がどうなるかはわりかし運次第だ。
今回、1日目には行きたいところをある程度回ってみたが2日目にどこに行くかすらあまり決めていなかった。
一つ戻って下諏訪駅から諏訪大社に行くのもいいが、あまりその他が芳しくないということで少し考えて電車で30分の松本まで行くことにした。
松本に何があるかは分からないが、長野の中では指折りの繁華街だし、立派な城もあるからとりあえず行くことにした。
城下町ということは大概何かしらあるだろうし。
岡谷駅前で行き先を決めあぐねていたから時刻は11:00を回っていた。
それから40分経って、中央線松本行きの列車がようやく到着した。
ガラガラだと思っていた車内には高校生がわんさか座っていて驚いた。
だれもいない車両の7人掛けで横になって寝てやろうというくらいの意気込みだったのだが(しない)。
千葉の郊外で育ち、都内の大学に通った私は土地によって人の「ナリ」が違うのをつい観察してしまう癖がある。オノボリさんだかんね。
もちろんその土地の中でもみんな一人一人別々の人間であるのは言わずもがなだが、やっぱり土地によって人間たちの雰囲気は違って見える。
こういう人がいるな、こういう人がいないな、この感じだけど意外とこんな靴を履いているな、ウチの方にはこういう感じの人はあんましいないな、…。
私が生活圏から離れたときのひっそりとした楽しみ。
*
到着。
駅から周辺を見渡す。
松本は私が思っていたよりも大きかった。
エイブル、GU、マクドナルド、ビッグエコー…私の見慣れた企業がたくさん目に入ってくる。
地方においての中枢都市と、朝まで私がいたような、それ以外の地域の格差を、歴然の差を、私は早速目の当たりにしている。
松本にはPARCOがあって無印もヴィレバンもマーガレットハウエルもムラスポもある。
私が昨日降りた下諏訪や岡谷にはそういったチェーン店は一切見当たらなかった。
私は千葉の郊外生まれとはいえ、市内には飲食チェーンならだいたいある。映画館も一応ある。BOOK-OFFもスポーツオーソリティもトイザラスもくら寿司もはま寿司もマクドナルドも。
車で30分や1時間くらい走ればレイクタウンもIKEAもコストコも、ららぽーともある。
おらこんな街嫌だ、と散々思っていたのだが、比較的恵まれていたのかもしれない。
そんなことを思った。
さあて、飯だ飯だ。
出先の飯において私は失敗を許さない。
生粋の食いしんぼだからだ。
そんなわけで電車の中でしっかりリサーチをしていたわけで。
独特の雰囲気漂うタイポグラフィが素晴らしい定食屋・若大将へ。
くさかんむりが徳永英明の「英」みたいになっていて風情がありますね。
風情があります?ありますよね。
折角だから食べたいですよね、ご当地メニュー。
大丈夫です、私はしっかりとリサーチを重ねてこの場所でしか食べられないご飯を見つけましたから。
そう、それが
山賊焼味噌ラーメン(¥1200)
だ!!
写真では伝わらないデカさ。
長野における山賊焼というのは要するにデカい唐揚げのことです。
写真のこれはもも肉1枚使ってますね。デカいんだよ。
そいつがスッと馴染んでるくらいにはどんぶりがめちゃめちゃデカいということを皆さんには知ってほしい。
でも、ただのインパクト勝負メニューではなくて山賊焼もラーメンも比類なき素晴らしさ。
私、松本のこと好きかもしれん…と思った。
松本がおれへんと調子狂うねん、とラブコンの小泉リサみたいな心境になっている(なっていない)。
20分かけてようやくご馳走様をした。
完食後一息ついていたら、後輩が松本城をとんでもなくおすすめしてきたのでとりあえず今日中に行ってみることにした。
駅から少し遠ざかったあたり。
左手にPARCOが見える。
中町通りという商店街。
城下町の風情を感じながら歩く。
大火を防ぐために漆喰で作られた建物が多く残っているエリアで、飲食や小売など様々な店が立ち並ぶ。
昭和初期ごろだろうか?古い看板が綺麗に保存されている。
立派な看板建築もある。
いやはや、こんなに上等な建物が状態良く残されているなんてびっくりだ。
こういうものを永く残そうという姿勢は東京にはないので、心底羨ましい。
松本の爪の垢煎じて飲んでおくれ、東京ったら…。
この通りには松本民芸家具のショールームもあった。
400年余りの歴史を持つ家具店だが、注目すべきは柳宗悦らによる民藝運動に当時感化され、桜などの土地の木材を使用した「和風洋家具」を制作している点である。
おおむねイギリス家具風の造りだが、どことなくジャパナイズされている。
見ていて面白かった、が、私はこのツルツルテカテカの塗装のことを好きになれなかった。
でも、これである程度統一したら昭和的・ファンシーな部屋を作れそうだなとトキメキ感じた。それもいいな。と妄想。
中町通りに並行して走る水路を渡り縄手通りへ。
うわーすごい店あるな…と思ったら実印を作ってくれるお店らしい。
店前に出ているがらくたも値札はついていないものの、きっと売り物なんだろう。
よ〜く見たが、古物というよりやっぱりがらくただった。残念。
縄手通りも小さな商店が文字通り軒を連ねているエリア。
中町通もだったのだが、火曜日はやっている店が少なく人の姿もまばらであった。
そして暑い。暑くて私はヘトヘトである。
長野に行く予定の人にお伝えしたいのですが、長野も地域によっては普通に暑くてヘトヘトになります。気をつけてください。
*
とにかく歩き続けなくては何も得るものがないのである。
暑かろうがなんだろうが歩かなけりゃならぬ…それが旅の約束なのである…
さあ、城下町の中でも見どころの路地をいくつか通ったのでいよいよ城へと向かっています。
とはいえ、5分くらいで着くのですが。
特筆すべき点のない道をぺたぺた歩くと少し見晴らしが良くなる。
あ、木々の隙間から普通に城が見えた。
すごくデカいというわけでもないのであんま驚かなかった。
とにかく近くに行ってみる。
大きな道を渡って敷地に侵入、木々を抜ければ砂利の道。
で、でたーっ。
これが松本城だ!
世界史選択だし歴史にそんなに興味がないので、すごくふつうのことしか言えないんだけど、城、綺麗〜。
名古屋城とかと違ってやらしさのない、凛としたいでたちが見れば見るほどトゥンクであり、また黒色の塗膜の質感があんまりにも素敵でキュンですになりました。すきぴしか勝たん。
塗膜の質感よすぎて(あの塗料欲しいな…)という感情に支配されながらあたりを少し歩いていると、三脚を立てデジカメでセルフタイマー自撮りをしてるおじさんがいた。
このおじさんは私が城の周りをうろうろしてる少なくとも5分以上の時間自撮りをしていらした。
多分、ずっと逆光で自分が真っ暗になってるのをどうにかしたかったように思えたが、あまりしてあげられることがないのでそのまま立ち去った。
立ち去ったところでスマホを砂利に突き刺して城をバックに自撮りをしているおばさんを発見した。全身自撮りの聖地なのかな。
*
歩いて歩いて午後2時半を回っていた。
私は4時のバスで帰る予定なのでもう少ししたらこの土地ともサヨナラなんだ。
城から少し歩いたところにタイの食料品店があったので少し物色した。
店前で煙草をのんでいる(*注釈1)おばばが少し遅れて店に入ってくる。
それで、グリーンカレーのペーストをゲットした。
インド系の小売りはよくあるけどタイ系はあまり見かけないので旅行だろうがなんだろうが買う、カルディだと倍くらいするから。
これ、辛いですか?と訊くと、少し辛いけどそこまでじゃないよ。そんなことよりこれはココナッツミルクをたくさん入れるでしょ、それを半分くらい牛乳にした方がいいよ。日本人はココナッツが多いとウゲーとなっちゃうからね。と教えてくれた。
ココナッツミルクは高いし有用な情報を得た。
そしてまたおばばは煙草をのみはじめた。
(↓注釈1)
(この会話気持ち悪すぎて好き)
*
駅の方まで戻ってきた。
私は松本をちゃんとエンジョイできているだろうか?よく分からないけれど、とにかく気分は良い。
特別な事をしなくても、知らない土地をウロウロしている時点でけっこー特別な思いがある。
あ、松本城の中に入るのをケチったのだけ後悔がある。あれはドジったぜ(死語)。
気分は良いけど疲れたので、バスが来るまで喫茶店で休憩することにした。
UCC系のお店「信濃館」
雑居ビルの二階にあるファンシー系。
入り口のドアをくぐると、そこにいる赤外線センサー付きのドラえもんが「ぼくドラえもん」と喋る画期的な仕様に衝撃を受けた。
ファンシーだヨ全員集合!
水槽がある喫茶店は平和で最高だと相場が決まっていますのでね。
アイコとイチゴケーキ。ナイスコンビ。
そうだ、この日は誕生日だったからショートケーキっぽいやつを頼んだんだった。
そういうのを案外マメにやっている事がバレてしまいますな。ヘヘッ
(クリスマスもショトケキ絶対食べてる)
美味しいアイコは冷たいのに風味がとてもよく広がる。旅の最後に美味しいものを口に入れる事ができてとても嬉しかった。
*
16時前、松本駅前バスターミナルの地下で小急ぎに土産を買ってバスに乗車した。
バスのドアが閉まってアクセルの音が力強く鳴る。
さようなら、2日の逃避行。
そして(上)の前書きへと繋がる。
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