4月18日

会社を休んで劇場版スタァライトの舞台挨拶を観に行った。
社会人はいつでも会社を休めるし、休んだ日に遊びに行ける。最強だ。

劇場版スタァライトのレヴューシーンで描こうとしている各キャラの心情はどれも刺さる。

香子。
実は香子が一番好きなキャラかもしれない。
もともと舞台#1では一番ギスギスしたキャラとして描かれている。本音を隠さず言うし、なんでも大袈裟に煽ってくる。
口だけではなく、それを言うだけの実力があることを舞台中で描写してくれていて、ただの噛ませとかではなくシンプルに強キャラのオーラが出ていた。
なのにアニメではレヴューで負け続け、戯曲スタァライトのオーディションも落選。
香子の解釈違いにがっかりしてしまったが、劇場版で盛り返してくれた。

新国立の見学の話で浮かれているメンバーに対してキレるシーンはまさに理想の香子。
前のキリンオーディションのことをしっかり覚えていて、ずっと待ち続けていた香子。
アニメ版からの続きとして見ると、努力はできないが本気出せば実力は結構ある子が周りについていけなくなったので、キリンオーディションで一発逆転するで!みたいな印象を受ける。
しかし、舞台#1で描かれていた実力とプライドの高さを前提に置けば、誰よりもトップスタァに執着していて、誰よりもプライドが高くて、キリンのオーディションという謎ルールで負けてしまった執念をずっと胸の内で燃やし続けていたわけだ。誰に言うわけでもなくずっと待ち続けていた。
こんなに執念深く、重く、自分に真っ直ぐな女他にいるか?香子がオーディションの話を持ち出してきた時点でボロ泣きだ。

鉄火場、セクシー本堂、ふたかおの怨みのレヴュー…全く弱みを見せることのない強い香子が終始描かれている。私が見たかったのはこれなんだよこれ。
怨みのレヴューで描かれているのはふたかおの痴話喧嘩で、少し間違えると香子がウザいキャラになったり、双葉が弱々しいキャラになりかねないところだが、ここも香子は執念深さと真っ直ぐを本音でぶつけてくる芯の強いキャラとして描いてくれて、ウザさは一切感じない。
香子大好きだ。

まひる。
まひるも舞台#1ではかなりの強キャラとして描かれていた。
天才として描かれていたひかりに対して、レヴューでひかりを打ち負かす寸前まで追いやっている。
これもアニメ版だと華恋ちゃんが好きな異常者に成り下がっていて、がっかりした。
とはいえ、アニメ5話のゴールとしてまひるちゃんが聖翔に入った理由、延いては舞台に立つ理由を自覚させたのは大変素晴らしかった。
安易なまひかれが描かれているが、シンプルにまひる単体でキャラクターとして成立している。
聖翔の9人はアニメ版の時点で一応の大団円の結末を迎えているが、華恋、ひかり、まひるを除いた他の6人はこれでいいのか?と悶々としていた。
劇場版では卒業を見据えつつ、自身の進路をどうすべきか、自身が抱えているものに対して悔いがないか、といった観点で描いてくれていたので聖翔全員が主役だったと言える。
その中でもまひるはそもそもアニメ5話の時点で自身の進路、自身が抱えているものに対してある程度解消されており、あえて劇場版で特別追加の感情の動きが必要なキャラではなかった。
そのため、まひるを軸にまひるの抱えている問題を取り上げてレヴューに持ち込むのは難しいと思っていたが、(既に解消されたものではあるものの)まひるの嫉妬の対象であるひかりとのレヴューという体にしつつ、最終的にはひかりを見送るまひるという既に精神が卒業に向かっていた先人からのアドバイス、というゴールにしたのはとんでもなく良かった。1㍉も不満がない。
もちろんまひるも完全なわけではないので、自身の不安を曝け出すところも人間らしいし、それを自分から言えるまひるは本当にすごい。
まひるにとって聖翔の学友としてのひかりちゃんから舞台を志す仲間でありライバルとしての舞台少女神楽ひかりとして向き合った点を、ちゃんづけをなくすことだけで表現できていることもびびる。この一言だけで今までのまひるとひかりの関係、過ごしてきた聖翔での日々、これからの自身の在り方、今後のひかりや他のメンバーとの接し方など、いわばまひるの舞台少女としての人生、舞台女優としての人生が想像として具体性を持って膨らみ、脳内のシナプスを駆け回った。
映画館で観ている瞬間は、情報量の多さにオーバークロックで脳が焼け焦げそうだった。

華恋。
スタァライトを演じ切って目標を見失っていた華恋に対して、起爆剤を与える物語。
それを電車やポジゼロの棺、思い出の償却、トマト、塔からの落下、…などなど様々なメタファーを用いてそれとなく伝えてくる。
言葉にすると単純だが、その内容を伝える手段は映像や音楽であって、具体性を伴う説明が劇場版の中にはほとんどない、という点が本当に素晴らしい。

「スーパースタァスペクタクル」からの「私たちはもう舞台の上」を見ると、元気がもらえて自分も頑張ろう、という気持ちにさせてくれる。

この感想自体は最初に観たときと変わらないが、時が経って改めてこの劇場版を観たときに「自分も頑張ろう」の気持ちがより重く感じた。
人生を上手く生きるコツとして、目標をしっかりと立てて、小目標と大目標に分離することが大事だと考えているが、自身の目標の達成具合、言い換えると人生の進め具合に応じて、この劇場版が与えるものは変わってくる。

一つの映画でこんなにも楽しめることはなかなかないし、今後また生活や人生が変わったときに改めて観てどういった感情になるのか楽しみで仕方がない。

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