4月12日

最近見ていたドラマで「危篤」という単語が出てきた。
「危篤」という単語は、「入院してヤバイ」みたいなイメージを持っていたが、そもそもこの単語、おそらくドラマでしか聞いたことがない。

多分ニュアンスは理解できていそうだが、ちゃんと調べておこうと思って意味を調べてみた。

「危篤」は「病状が悪化して、意識がなくなり、命の危険が迫っている状態」という意味らしい。
「危篤状態」と後ろに「状態」をつけることもよくある。

正確には「危篤」には、意識がなくなることまでは含まれていないが、命の危険が迫るほどの酷い状態では意識がなくなることが一般的らしい。
また、担当医師から「危篤」と言われた場合には「回復が期待できない」と察するのも一般的のようだ。

私が想像していた以上に厳しい状態を意味する単語だということがわかった。
私は日本語や漢字が大好きなのだが、自分の持っていたニュアンスの理解と実際の意味に少し乖離がある単語は久々だったので、ショックを受けた。

「篤」の語源を知っていればもう少し予想できたかもしれない。
そう思い、「篤」の語源を調べてみた。

「篤」の漢字の異体字は「草冠」+「馬」で、草や竹でできた柵で馬を囲っている様子を表している漢字だった。
馬を大事にする様子から「手厚い」という意味に使われ、「厚い」と同義とされ、「厚い」の「分厚い、物事の程度が著しい」という意味が派生し「これ以上悪化しないほど酷い」という意味になった。

と書かれていた。
確かにこの漢字で「あつし」と読む名前もあったのを思い出した。

「危篤」の意味を知ってホクホクになったのだが、ここでさらに一つ思いついたことがある。
それは「なぜ危篤の意味をニュアンスの理解だとしても、すぐに察することができたのか?」だ。

ドラマ内では「〜さんが危篤状態だ」というセリフでベッドに横たわって意識がない状態の映像だった。
この「危篤」という単語を言われた瞬間、脳内では自分の経験の中から今まで「危篤」という単語が使われたシーンの記憶が呼び起こされる。
ほとんどの記憶はベッドに患者が横たわって謎の機械がピーピーなって、横線のグラフが表示されており、急いで駆けつける男の絵面だ。
さらに過去に「危篤は入院してヤバイという意味だ」と判断したことがある、という履歴も残っていたと思われる。
その数々の経験と過去の判断から「入院していてヤバイ」という意味を取り出せた。
この間、1秒にも満たないと思うが、今そういう頭の使い方をしていたな、という思いがある。

さらに「危篤」という単語は前述した通り、自分の人生においてはほとんどドラマで出現した単語だ。
『「危篤」は「キトク」と読む』という知識1と『人間の体調を表現する文脈における「キトク」は「入院してヤバイ」という意味っぽい』という知識2が組み合わさって『「危篤」=「入院してヤバイ」』と捉えているように思える。

この分析をしている理由として、「自分が日本語の曖昧な単語をどう理解しているか」を理解することによって、ノンネイティブな言語(主に英語)をスムーズに理解する取っ掛かりになるのでは?と考えた。

「危篤」を例にした場合
「危篤」という単語を辞書などで調べたこともないが、「キトク」と読むことは知っている。
人間の体調を表現する文脈において「キトク」という意味は「入院してヤバイ」という意味でだいたいOK。
前者は経験あるいは勉学により知ることができるが、後者は経験でしか知り得ない。

ここで私の苦手な英語に置き換えて考えてみる。
「yield」という単語は発音として「イールド」(カタカナで書くのはナンセンスではあるが)と読むことは知っている。
さらに勉強してきた単語帳の記憶を思い出すと「yield」は「産む」だったような…というぼんやりとした記憶が10秒くらいかけて出てくる。
しかし、「yield」は自分で使ったこともなければ、どのような文脈で出てくるかもわからないし、自動詞なのか他動詞なのかも理解していない。
「ニワトリがタマゴを産む」みたいな文脈で使うんかな?くらいの理解だ。
実際に調べてみると「ニワトリがタマゴを産む」ときは「lay」を使うので「yield」ではないらしい。

「危篤」との違いを考えたとき(動詞と名詞なので考え方の違いはあるが)に、圧倒的に「yield」に関する経験、記憶、思い出が足りない。

自身の母国語である日本語では「これどういう意味の単語なんだろう?」と疑問に思ったときに、自分の中で考えて、その場にいる人間の表情、シチュエーションなどから推測している。
そして、その推測は概ね当たっているわけだ。

仮に日本語であっても、私は政治や社会に疎いので、書類やニュースに出てくるような難しい日本語で意味が取れてないものは多い。
こうしたものはシチュエーションが分からないから推測自体が難しくなってしまう。

以上のことから、ある単語について理解を深めるには、自身が何度か意味を推測し、それにより解釈が成功した経験が重要であり、その経験をなるべく多く積むことが大事なのだろう。

そういえば、英語の勉強方法の一つに YouGlish というものがある。

https://youglish.com/pronounce/yield/english?

その単語が使われる動画とそのシーンの抜粋をたくさん持ってきてくれる。
試しに「yield」を調べてみたら
「ロブスターが湯からあげられる」
「折り紙から折り鶴を作る」
「yieldという標識があり、右に寄せて他人に道を譲ることを意味する」
「野菜を収穫する」
「利益をあげてる」
といったものが映像から読み取れた。

意味を推測する、という経験ができるので、これは本当に良い勉強法だと思う。

やっと言語を学ぶための大事なステップを一つ踏めた気がする。
学校でこういうことを教えて欲しかったよ。

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