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【AIx資産運用】の現在地

新年明けましておめでとうございます。(少し遅めのご挨拶です)
まずは、この度の震災で被災された皆さまには心よりお見舞いを申し上げます。我々FOLIOホールディングスとしても可能な限りのご支援をさせていただきたいと考えております。1日でも早い復興を心より願っております。

これが2024年最初のnoteとなりますが、今月から新しいNISA制度が始まり、金融庁が「資産運用立国実現プラン」を発出するなど、日本の資産運用業界は大きな盛り上がりを見せています。

そんな中、本日はFOLIOのロボアドバイザー『ROBOPRO』を題材として、資産運用にどのようにAIが利用されているかを、実際の事例も合わせてお話しします。

まずよく聞かれるのが、

ロボアドバイザーってどれも一緒なんでしょ?

というところ。
この点、2023年4月にロボアドバイザーやファンドラップ商品における各社のパフォーマンス比較を金融庁が公表いたしました。(2022年末時点での過去3年・過去5年)
ROBOPROは2020年1月のリリースとなるため過去3年間の累積パフォーマンスにのみ登場しますが、下記添付のグラフの通り費用控除後で+35.4%となりました。
ご覧いただくと分かる通り、モノによってはマイナスパフォーマンスのものも存在します。

どれも一緒ということはないですね。

なお、ROBOPROのサービス開始当初2020年1月15日から2023年11月末までの約3年10か月の運用実績は+64.15%(※)となりました。 (※算出根拠等は下部をご参照ください。将来の運用成果等を示唆又は保証するものではありません。)

では、なぜこのようにパフォーマンスに差が出るのでしょうか。
『ROBOPRO』の特異性を踏まえてお話ししましょう。

理論的な話は後述しますので、まずはわかりやすく実際の事例を持って説明します。

『ROBORPO』は最大8種類のETF(米国株式、先進国株式、新興国株式、米国債券、米国ハイイールド債券、新興国債券、米国不動産、金)に分散投資をします。そして我々も提供している『おまかせ投資』のような一般的なロボアドバイザーとは異なり、毎月かなりダイナミックに資産配分の比率を変更します(リバランスと呼びます)。

左がROBOPROの資産配分、右が弊社『おまかせ投資』のような一般的なロボアドの資産配分

このリバランスはパフォーマンスに対してどう影響しているのでしょうか。過去の実際のケースを基に説明していきましょう。

Case 1:リリース当初

リリース時はバランスの良い資産配分

リリース当初はバランスの良い資産配分ですね。当時の話題としてはコロナ感染が拡大する中でも、株式市場は最高値を更新するなど比較的楽観ムードでした。そんな中で、2020年2月18日にROBOPRO初めてのリバランスが行われます。(↓)

債券の比率を一気に高めた

ROBOPROは株式を減らし、債券の割合を一気に増やしました。株式市場は盛り上がっている中での守りへの変更となりました。
ではこのリバランス以降のパフォーマンスをみてみましょう。(↓)

一気に相場は下落を始めた中で一定ダウンサイドを守ることに成功

蓋を開けてみると、2020年2月中旬から米国株式は最大30%以上下落(※)しました。(※上図の期間において米国株式の最大下落幅は-30.7%(3月16日時点)。米国株式のリターンはVTIの時価を用いて算出。)

コロナショックです。

この時、ほぼ全ての資産クラスが売られた(現金化が進んだ)のですが、債券を増やしていたことで相場下落のダメージを抑えることができました。

では、なぜそのようなリバランスが行われたのでしょうか?

銅の価格がS&Pに先行して下落していた

この資料を見てもらうとわかりますが、銅の価格が株式市場に対して明確に先行して下落しています。
後ほど理論編で話をしますが、ROBOPROは相場予測のために銅の価格を入力データの一つとしてインプットしていますので、このような「危険察知」ができたのではないかと考えています。

Case 2:コロナショック後の動き

では、2020年3月のリバランスも見てみましょう。過去に出会ったことがないショックの中で、米国各州では続々と非常事態宣言が発出され、人が動かなくなっていきます。そんな中、ROBOPROはどう動いたのでしょうか。(↓)

大きく値下がりをしていた米国不動産を買い始めた

ご覧いただいた通り、債券を売り、米国不動産ETFを買います。当時、人が動かなくなるため米国不動産ETFの価格は大きく値下がりしていました。正直、このタイミングでの不動産の買いは、プロのファンドマネージャーでも中々難しかったと思います。相場格言にも『落ちてくるナイフは掴むな』と言う言葉がありますが、この時、ROBOPROは淡々と不動産ETFを買いました。

では、その後、結果はどうなったのでしょうか。

2020年3月中旬から一気に相場は息を吹き返し、年央にかけて上昇トレンドに入っていきます。その過程でROBOPROは徐々に株式保有比率を引き上げていき、年央には株式の保有比率が68%まで達しました。

結果として、リリース以来コロナの荒波を乗り越え、ダウンサイドを守りながらしっかりと相場の反転にもついていくことができました。

では、ケースとしては最後になりますが、面白い事例があるのでみてみましょう。

Case3:2022年1月

2021年は米国株式は高値を更新し続けた

みなさま、一緒に考えてください。
ご自身で資産運用をしているとして、2021年ずっと調子の良かった米国株式市場を経て、2022年にはコロナは落ち着く(Afterコロナ、Withコロナ)と言われていた中で、どういう資産配分で2022年を迎えますか?

当時は金融引き締めへの懸念と、コロナ収束への期待が入り混じっていましたが、ROBOPROはこう判断しました。

米国株式全売却

なんと、調子の良かった米国株式を全て売却し、新興国株式へ比重を寄せます。当時はかなりネガティブなTweetも散見されました。
気持ちはわかります。。

では結果どうなったのか?(↓)

米国株が大きく下落する中、新興国株はプラスで月を終えた
ROBOPRO保有の3資産が月間パフォーマンスの上位を占めた

上記資料の通り、2022年1月から米国株式は下落を始め、同月25日時点で最大10%以上の値下がりをしました。一方で最大保有の新興国株に関しては同月末時点でしっかりとプラスで終え、その他保有していた金や米国債券に関しても、ROBOPROが投資対象としている8資産の中で上位のパフォーマンスとなりました。

実はこのようなことは2018年にも起きていて、その状況をしっかりと学習できていたのではないでしょうか。

後ほど理論編でも書きますが、ROBOPROは数多くのマーケットのデータを多角的に分析し学習することで、金融環境の変化や危機察知への対応を目指した運用を行うように設計されています

本日提供した事例は上手くいったケースですが、もちろん思ったよりパフォーマンスが伸びない月なども存在します。

ただ、先ほども2022年末までの過去3年パフォーマンスの良さをお示ししましたが、2023年11月末時点でのリリース以来の累積パフォーマンスは64%を超えています(*)。

2024年の見通しに関しましては別途お話しますので、今日の実例編はこの辺りで終えますね。

では、ここからはROBOPROの仕組み(理論編)を書いていきます。

(理論からではなく事例から入ったのは、理論から入ると結構小難しい話になってしまうから。と言うシンプルな理由です。)


ROBOPROのポートフォリオ構築の過程

少しだけ専門的な資料になりますが、ここが肝になるので、少しだけお付き合いください。

ROBOPROは主要なロボアドバイザーサービスでよく利用されている枠組み(緑色のハイライトの部分)に、子会社のAI会社、AlpacaTechのユニークな技術(上のフロー図)を付加してポートフォリオを構築しています。

何がユニークか?
相場の予測にAIを用いているという点です。

通常ロボアドバイザーと言っても、AIを用いている方が少なくて(この辺、よく勘違いされている人がいますが)ROBOPROのように相場予測にAI技術を用いているサービスはほとんどありません。

では、どのように予測するのか?順を追って説明しましょう。

1、データのインプット
  まず40種類以上のマーケットのデータを入力データとしてインプットします。この時、SNSの言語解析データや、衛星データ、経済指標などは一切分析対象とはせずに、マーケットのデータのみを分析対象としています。
なぜなら、経済指標の多くやSNSのセンチメントなどは、マーケットに対して遅行するデータも含まれていたり、データ量が不足していたりするからです。ですので、我々は以下のようにマーケットの動きに対して先行性が高く、流動性があり膨大な量の分析が可能なものを入力データとしてインプットしています。

長短金利差などは景気予測にもよく利用されますし、銅の価格はDr.Copperという異名を持つほど、景気に敏感に反応する資産だとも言われます。

2、インプットされたデータから特徴量を生成して2000種類以上の説明変数を作成する
 もう少しわかりやすく言うと、単に価格の動きそのものだけを分析するのではなく、価格の動きの変動率、尖度、歪度、移動平均乖離率などなど、1つのマーケットのデータにも数多くの特徴量が存在しており、それら全てを分析対象としています(例えば『銅の価格の移動平均乖離率』など)。

3、説明変数を自動削除・抽出する
 
ただ、2000種類以上の説明変数をそのままモデルに入れ込むと計算量や精度の点で問題が出てくるので、相関や、説明力などを見て自動的に取捨選択します。

ここまでの過程がモデルの予測精度を上げるために非常に重要なポイントとなりますし、ここがAlpacaTech社が創業来培ってきた技術でもあります。

4、複数の機械学習モデルに各説明変数を学習させて膨大な量の予測モデルを生成する
 基本的には1つのモデルではなく、複数の独立したモデルにデータをインプットした上で、膨大な量の予測モデルを構築します

5、予測モデルの中から予測スコアの安定性などを見て、予測モデルを選ぶ
 
大切なのは一番パフォーマンスが良いものを選ぶわけではありません。さまざまな評価軸において、最適だと判断されたモデルを選びますし、そのモデルは定期的に更改されます。(常に同じモデルで予測を続けるわけではない)

6、上記の過程を経て生み出された予測スコアを、FOLIO社が活用して、毎月資産配分を変更する
 
FOLIOではAlpacaTechから提供された予測スコアの信頼度などを独自で計測しながら、AIをどれくらい信頼するのかなどの手を加えた上で通常の資産配分構築プロセスに載せます。(以下、FOLIOのホワイトペーパーをご参照ください)

https://folio-sec.com/omakase/white-paper/asset-allocation

以上のプロセスを経て、先ほどお見せしたダイナミックなリバランスが実現されています。なかなか人の手ではできないデータの解析や予測を行ったり、また冷静な取引執行などもAIx資産運用のメリットではないでしょうか。

ただし、理論は常に新しく生まれ続けます。FOLIOもAlpacaTechも、日々新たな技術的な飛躍を生み出すべく頑張っています。

最後に。
資産運用は長期目線で捉えることが大切です。
10年後の米国株式は今より値上がりしているか値下がりしているか』を聞くと、おそらく多くの人は今より値上がりしていると答えるのではないでしょうか。一方で、『明日の米国株式は今日より値上がりするか値下がりするか』を聞くと、およそ半々くらいに分かれるのではないでしょうか。

つまり、短期になればなるほど相場のノイズの影響が強くなり、予測しにくくなりますが、長期になればなるほど、相場のトレンドの影響が強くなり読みやすくなります

したがって、短期的な目線で資産運用を考えるのではなく、毎日の値動きに一喜一憂せずに、長期目線で運用を継続していくことが何より大切だと思います。

我々も、ここから大きくなっていく日本の資産運用業界において、しっかりとお客さまに価値を届けることができるように頑張ります。
日本の資産運用立国化に向けて最前線で動きたいと思います。

では、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

株式会社FOLIOホールディングス
代表取締役CEO
甲斐真一郎 


■本記事について
・投資環境に関する過去の事実等の情報提供や、発行時点での投資環境やその見通しに関する当社の見解をご紹介するための資料です。
・AIの将来予測、過去の運用実績および投資環境に関する過去の事実等は、将来の市場環境の変動や運用成果等を示唆又は保証するものではありません。記載内容は作成時点のものです。
■株式会社FOLIO
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2983号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
金融商品の取引においては、株価、為替相場、金利水準、不動産相場、商品(コモディティ)相場、その他の指標の変動等により損失が生じ、投資元本を割り込むおそれがあります。ご契約の際は、契約締結前交付書面、ROBOPRO投資一任契約書等の内容を十分にご確認ください。
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