「英文法・用法 ネイティブもはまる落とし穴」―『CNN English Express 2024年9月号』特集の紹介

毎月楽しみにしている英語学習雑誌『CNN English Express』の最新号（2024年9月号）に、私の関心にどストライクな特集が掲載されていましたので情報を共有します（あっ、「どストライク」もハイブリッド語だ（小声））。「英文法・用法 ネイティブもはまる落とし穴」と題した特集です。特集の主旨は以下の通りです。

　英語学習者の皆さんが「あれ？」とつまずきがちな英文法は、ネイティブスピーカーにとっても曖昧だったり、自信がなかったり、あるいは間違えてしまうことさえあります。文法には一定のルールがあるものの、特に現代の英語では、状況や場面によって「より適切な」使い方があったり「どちらもOK」となったり、はっきりしないものも実は存在するのです。
　本特集では、ネイティブもはまりやすい「落とし穴」をクイズ形式で出題し、文法的に正しい、会話では適切、といったニュアンスがつかめる解説とともにご紹介します。

『CNN English Express 2024年9月号』 p.35

ここから読み取れるように、本特集の特徴は規範と記述のバランスが取れた解説です。規範と記述という二項対立に言及されてはいませんが、「文法には一定のルールがある」の箇所は、言語のあるべき姿を定める規範文法を想起させます。一方、「状況や場面によって「より適切な」使い方があったり「どちらもOK」となったり、はっきりしないものも実は存在する」と述べられている箇所では、言語使用のありのままの姿を記述する記述文法が念頭にあると思われます。

本特集は、① 名詞・代名詞編、② 疑問詞・関係代名詞編、③ 前置詞・副詞・動詞編の三つのパートから構成されており、様々な文法・語法上の問題が取り上げられています。各パートから代表例をいくつかご紹介します。なお、最新号の紹介ページから① 名詞・代名詞編の1ページ目を読むことができます。

① 名詞・代名詞編

• either ofやeach ofで始まる名詞句の数の問題（単数扱いか複数扱いか）

• 代名詞の格の問題（e.g. You and I went out… vs. You and me went out…）

② 疑問詞・関係代名詞編

• whoとwhomの使い分け

• 間接疑問文内の語順

③ 前置詞・副詞・動詞編

• onlyの位置の問題（被修飾語との関係）

• lieとlayの使い分け

文法・語法好きの方ならば思わずよだれが出てしまうようなラインナップですよね。これらの項目について、要点をおさえた簡潔な解説が加えられています。一部の項目については三段階の評価を設け、規範文法の観点から問題がない用法には〇評価を、規範文法には反するが記述文法の観点からは問題がない用法には△評価を、どちらの観点からも好ましくない用法には×評価を与えています。

さらに、「まぎらわしい単語・フレーズ集」というコーナーでは、disinterestedとuninterestedなど使い分けについて長年に渡って議論が繰り広げられてきた論争語法が扱われています。

広く文法・語法に関心のある方は是非手に取ってみてください。特に
卒業論文やレポートで文法・語法を取り上げてみたい学生のみなさんは要チェックです。興味を持った用法は、是非、Fowler’s Modern English UsageやGarner's Modern English Usageなどの語法書を使って掘り下げて調べてみてください。しばしば槍玉に挙げられる文法・語法の現状や歴史についてより詳しい情報が得られますよ。

参考文献
Butterfield, Jeremy. 2015. Fowler’s Dictionary of Modern English Usage. 4th ed. Oxford: Oxford University Press.
Calude, Andreea S., and Laurie Bauer. 2022. Mysteries of English Grammar: A Guide to Complexities of the English Language. London: Routledge. [昨年の授業で講読した書籍です。数の一致や代名詞の格の問題など、本特集で紹介されている多くの項目についてより専門的な解説がなされています。]
CNN English Express（編）. 2024. 『CNN ENGLISH EXPRESS 2024年 9月号』 朝日出版社.
Garner, Bryan A. 2022. Garner’s Modern English Usage. 5th ed. Oxford: Oxford University Press.

代名詞の格の問題については、heldioの以下の放送回が記憶に新しいです。