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『ダンスの時間』サマーフェスティバル2008(4)関典子「風来居」

 これら2作が、身体が動くことで生じる魅力よりも、そこに身体が存在することで、ある世界を構築することをめざしたのに対し、身体の動きそのものを前面に提示して作品の時間を作ったのが、関典子の「風来居」だったといえるだろう。音楽はギターソロだけで、照明もシンプルな構成に抑え、曲調によって若干の緩急はあるにせよ、基本的には20分間踊りまくるという作品に組み立てた。彼女は、ダンスという表現に向き合うことについて、踊ること、動くことでその時空を塗りつぶしていくことを課し、また動くことが世界に対する自己の存在確認であるように把握していると見えた。動きの速度と、身体の関節が作る鋭角の美しさは、むしろ潔さに近い。時折見せた(特に昼の部で)武道の型のような構えや、攻撃する小動物のような動きからも、踊ることと世界と対決することが相似しているような世界観を持っているようだった。
 ソロを踊るということは、そのように何者かを仮定して、それと対面することなのだろう。それが現在の彼女の中では、このような徹底的に動き続けることによって匹敵することができるものとして把握されているのだろう。

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