新アニポケが膝に刺さってな・・・(今更?)
リコロイを観るにあたったきっかけ
最近、アニメポケットモンスター(2023)、新アニポケが面白い。
ただ、この「最近」というのは、シリーズが最近盛り上がっているという意味ではなく、私が観ることになったのが本当に最近のことだからです。
この記事は、既に40話以上放映されているこのシリーズで、今更「どこが私に刺さったのか?」という備忘録です。
私はポケモンのゲームはほぼ全シリーズやってはいるものの(赤緑、ピカブイは未経験。コロシアムやダンジョンなどの外伝シリーズはほぼなし)、アニメポケットモンスターは、正直、XY編からは全話通して観ることは無くなっていました。
それでも新無印編まで、私が観たいな、と思った時にはいつも我らが主人公、サトシがそこにいてくれたので、いつ観ても「ああ、これこれ」となって楽しめていました。知っている人物がそこにいつでもいてくれるというのは、私にとっては嬉しいことで、私がいくつになっても、サトシたちは変わらずいつでも迎えてくれるような気がしたから、全話観られていなくても気軽に観に行くことができました。
でも今はもうサトシはいない。いるのは新しい主人公、リコとロイです。今飛び飛びで観ても、未知の彼女たちの冒険を楽しめないのではないか、と思って観ることは無くなっていました。
そんな私が彼女たちを観るきっかけとなったのは、人(キャラクター)ではなく、ポケモンを目当てにしてのことでした。第38話「SOSはイッカネズミから?」という話です。
私がワッカネズミ・イッカネズミに狂った理由は、恐らく純然たるイッカネズミファンからすると「え?」と言われる内容なので、ここでは割愛させていただきますが、とにかくバイオレットでも旅パとしてお世話になったワッカネズミがアニメーションで見られる!? と思い、これは観るっきゃねぇぜと観るに至りました。キャラクターのことは知らなくても、ポケモンたちのことは、ずっと知っています。だから、観るに至りました。
カワイイって、強い。ポケモンって、すごい。
しかし妙なところで捻くれている部分が出た私です。何とアニメを観るにあるまじき体勢を取りました。ワッカネズミが動いているシーンだけ、何となく観るという暴挙です。
石を投げられても文句が言えないのですが、私はやっぱり、主人公たちのことを知らないまま、第1話さえ視聴していない状態で、彼女たちのことを知りたくなかったのです。でもワッカネズミが動くところは今すぐ観たかった。強欲。「じゃあ第1話から観ろよ」って話なんですが、長編シリーズということもあり、妙に腰が重かったんです。
だってサトシの時はそうじゃなかった。サトシの旅立ちは知っていたし、彼の目標も知っていた。地上波とキッズステーションで繰り返し観た。日曜の12時はいつもポケモンの映画を観てた。
でも、私は、リコのことも、ロイのことも、何も知りません。オープニングに出ている人たちのこともほとんどわかりません。新アニポケのことはわからないけれど、ポケモンのことは大事に思っている私です。ゲームをたくさんやっているわけではないし、何事も流行りには疎い私ですが、ポケモンだけはずっとやってきました。何だか、中途半端に彼らのことを知りたくはないな、と思ったのです。結果的に一番中途半端なことやっとるやんけというのは言わないでください。私もそう思います。
ただ、第38話を流し見以下の視聴方法で観て思ったのは、「丁寧だな」と感じたことです。
私が観た第38話は、嵐が過ぎた森で、傷ついたワッカネズミの一匹を主人公たちが見つけるところから始まる話です。ワッカネズミの治療をする主人公たちは、「いつでも二匹のワッカネズミが一匹しかいないのはおかしい」と、片割れの捜索に向かいます。
作画のこともありますが、何だか、話が丁寧だな、と感じました。どこにそう思ったのか、この時点ではわかりません。しかし思ったのはやはり、彼らのことを知らなくては、十分に楽しめないなということです。
やっぱりポケモンって面白いから、知りたいな。リコとロイのことも。
基本何事に対しても重い腰の私がようやく動きました。長くなりましたが、これが新アニポケを観るに至ったきっかけです。
「慎重だけど行動的な主人公」リコ
さて観るぞ、新アニポケ。第1話「はじまりのペンダント 前編」第2話「はじまりのペンダント 後編」。アニポケあるある、新シリーズなどは初回一時間スペシャルの名残でしょうか。恐らく一時間スペシャルから始まったんやろな、というタイトルです。
新アニポケシリーズには副題がついております。第1話〜第25話までは「リコとロイの旅立ち」、第25話〜第42話(2024年3月8日放送時点)では「テラパゴスのかがやき」となっています。文字通り、第1話は、ダブル主人公の一人であるリコの旅立ちから始まります。
ただ、彼女の旅立ちはサトシとは当然違います。サトシはオーキド博士からポケモンを貰い、ポケモンマスターになるべく旅へと出ますが、リコはパルデア地方から単身、カントー地方にある全寮制の学校「セキエイ学園」に入学します。そこで初めてのポケモン、ニャオハを貰うことになるのです。つまり、リコは旅に出る予定ではなかったんです。
従来の主人公、サトシと違うのは、その始まり方だけではなく、彼女の目標にもあります。
前主人公であるサトシはポケモンマスターになるという目標に一直線、ポケモンジムの挑戦を経てポケモンリーグの優勝を目指しています。ただ、今回の主人公、リコには夢や目標がない。何だか、現代らしいと思ってしまいます。
どこを現代らしいと思ったのか。ポケモンというシリーズに限って言えば、サトシの時代は、「ポケモンがどういうゲームか」というのをストーリーで伝える必要があったように思います。
「ポケモンという不思議な生き物がいて」「ポケモントレーナーという人たちがいて」「捕まえたりバトルをして」「ジムというシステムがあって」「ジムリーダーというすごいトレーナーがいて」「その最高峰にポケモンリーグがあって」「頂点にチャンピオンがいる」。そういう要素を、わかりやすく押さえていてくれたように思います。そして、サトシはそれらの経験を得て「世界一のポケモンマスターになる」と志していくわけです。まぁポケモンマスターって何やねんっていうのは26年間謎だったわけですが。
しかしリコロイの時代、現代はそうではありません。みんなポケモンというのがどういうゲームか、馴染んできている時代だと思っています。なので、子どもたちもある程度、ポケモンについて知っているし、知りやすい環境になっていると思うのです。
だからこそかどうかはわかりませんが、リコは、「自分でもわかんない何かを知りたいから、ここまで来たんだ」「自分をもっと知って変わりたい」とかつて両親が在学していたセキエイ学園への入学を決めています。今からやりたいことを見つけにいく主人公となっています。
全て行動や顔に出るサトシと違い、リコは慎重で引っ込み思案、内向的です。サトシが基本、即決即断即行動なのに対して、リコは頭の中で色々考えるシーンが多いです。しかし実際彼女が口に出す言葉は少ない。だからか、彼女は以前、「何を考えているのかわからない」と言われた経験があります。
ただ、だからといってもじもじしているわけではなく、行動的な一面もあります。学園から譲渡された初めてパートナーポケモン、ニャオハ。ポケモンが大好きなリコは、その可愛さに打ち震えつつもニャオハを触ろうとしますが、引っ掻かれて逃亡されます。ピカチュウを受け取り10まんボルトを喰らうサトシを彷彿とさせますが、スーパーマサラ人ほどの耐久性はない模様。そりゃそうだ。ただ、「初めてのパートナーポケモンに反発される」という点では同じです。
ロトム図鑑からヒントを得つつ学園中を探し回り、何とか逃げ出したニャオハを見つけます。リコは安心してニャオハを抱き上げますが、ニャオハはリコを拒否。「なんでぇ……?」と彼女はニャオハとどう歩み寄ったらいいのかわからず、悩むことになります。
バトルの授業でも、リコとニャオハのテンポが合わず、リコが考えているうちにニャオハが勝手に行動してしまい、返り討ち。「何考えてるんだかわかんない」とリコは肩を落としますが、これは彼女自身が言われてきた言葉。「もしかして、私とニャオハ、似た者同士……?」と作中でも自分で言っています。
リコのいいところは、サトシのような体当たり戦法ではなく、ニャオハのことを知ろうと時間をかけている部分だと思います。サトシが悪い、リコがいい、またその逆という話ではなく、彼女の思慮深さが現れているシーンだと思います。
サトシは無印第1話では言うことを聞かずボールにも入ってくれないピカチュウを縄で括り付けて引っ張っていきますが(時代を感じるし今やったら恐らくめちゃくちゃ怒られる)、リコはニャオハの観察日記を毎晩スマホロトムに記し、夜な夜な警備員の目を掻い潜りながらバトルの練習までします。内向的でありながら、行動力があるな、と思わせられた一面です。そりゃそうだ、彼女、自分が何を見つけたいかわからないままでも、一人で別の地方まで来たんだから。行動力があるに決まっています。
それでもうまくいかないリコとニャオハ。悩む彼女に、寮のルームメイトであるアンから、「自分のこと知ってもらうのって難しいじゃん? ニャオハも同じかも! もっとリコが、自分のこと伝えなきゃ!」とアドバイスを受けます。わかる〜……とこちらがダメージを喰らうくらいにはいい言葉。実際、リコにとってこの言葉は、今後大事なものとなります。リコはますます、ニャオハの観察に気合いが入り、日中夜問わずニャオハの観察に努めます。
そんなリコとニャオハの関係は、祖母の代理人だと名乗る少年・アメジオが彼女を訪ねてきたことをきっかけに変わります。彼はリコの祖母・ダイアナからお守りとして受け取ったペンダントを狙っているらしく、不審さを感じたリコは部屋の窓から逃げ出すも(ここも行動力すげえとなった場面)、アメジオとその部下たちに追われる羽目になります。
謎の危機的な状況に混乱しつつも、屋根づたいに逃げるリコ。お前もちょっとおかしいな? そこに突然、リザードンに乗った第三者、フリード博士が現れます。彼はリコの母親から、リコのボディーガードを頼まれてやってきたのですが、リコにとっては誰が味方でどうしたらいいのかわからないまま、美少年とイケメンのポケモンバトルが始まった状況。兎にも角にも巻き込まれないように、そして学校を巻き込まないように逃げ出します。
しかし逃げるためには時計塔の屋根から、違う建物の屋上に飛び移る必要がある。スーパーマサラ人ならともかくリコはただの学生です。当然怯えるリコでしたが、ニャオハの叱咤もあり、「踏み出さなきゃ、見つからない!」という一念で跳び渡ります。その危機に、彼女のペンダントが光り出し、その不思議な力の正体を知りたいと、旅が始まるという流れになります。知りたい、というのが、リコの原動力になっています。
面白いなと思ったのは、サトシが無印第1話でピカチュウを庇いオニスズメに立ち向かったのに対して、リコは逃げるために一歩を踏み出しているところ。けれど今までならできなかった行動をしたことで、前に踏み出している描写になっていると思います。
詳しいストーリーの内容はまだまだあるのですが、リコのキャラクターだけに焦点を当てるなら、内向的な少女が自分のポケモンと見つめ合い、わかり合おうとするこの流れが、私は「すごく丁寧で好ましい」と感じました。特に、ニャオハとの仲がさらに深まる第40話「さよなら、ニャオハ?」は、彼女のそんないいところがより深くわかるめちゃくちゃいいエピソードです。
今までいたサトシは、私は彼が同年代、または彼よりももっと幼い頃から観ていたので、何だか先を走ってくれるお兄さんがいるという感覚だったのですが、リコの場合は少女の成長を大人(私)の視点で見守っているという感覚になります。
当然観ている年齢が違うので、昔の私の価値観ではどうなるのかはわかりませんが、今の私にとってはこれがすごくハマりました。熱血主人公よりも、考え過ぎるというリコの性格は私に馴染みがあるものですし、彼女がニャオハと成長する様は、こちらも嬉しくなります。もちろんサトシだって、ポケモンバトルを通して内面的に成長する場面は多くあります。しかし、リコはもっと繊細な場面が多いように感じられるのです。
もちろん、リコに対しては賛否両論あるでしょう。ただ、リコの思慮深さと立ち止まらない咄嗟の行動力は、親しみがありつつも尊敬できるような部分があり、彼女の冒険を見守りたいと思わせる力がありました。あとめちゃくちゃにかわいい。
つまり第1話・第2話でもうガッツリ沼に両足をつけている状態となったのです。こっから更に爆速で沈みます。
「実直でありながら寄り添う主人公」ロイ
今作は、新無印編のサトシとゴウのように、ダブル主人公という構成になっています。
リコに並ぶもう一人の主人公・ロイが登場するのは第4話「ながれついた宝物」から。彼は、カントー地方にあるとある島に住んでいます。彼は島のポケモンに囲まれて暮らしていますが、まだポケモントレーナーではありません。島に同年代の子どもはいないらしく、オンラインで授業を受けています。時代を感じる……。
嵐が起きた次の日、ロイは海岸に「お宝」が流れ着くことを楽しみにしています。その中でも、「いにしえのモンスターボール」という、開かないモンスターボールを本当の宝物として扱っています。
リコが彼と出会うのは、リコがフリード博士率いる「ライジングボルテッカーズ」が乗る飛行船、そこに住み着くポケモン・ホゲータがどこかに行ってしまったのを探している最中です。ロイは飛行船から逸れてしまったホゲータを見たことがないポケモンだと興味を持ち、素直な性格からホゲータと仲良くなります。
ロイはポケモントレーナーに憧れています。トレーナーになって、絵本で読んだ「いにしえの冒険者」のように伝説のポケモンに挑戦したり、お宝を見つけたりしながら世界中を旅するのが夢だと語ります。リコと対照的なのがこの部分。ロイには夢があるのです。この対比がいいですよね。リコとロイがいることで、夢や目標を今から見つける人も、持っている夢や目標に向かって頑張る人も、応援しているように思えます。
ロイは、活発で素直で直向き、とにかく真っ直ぐな少年です。サトシと似通っているように思います。ただサトシと違うのは、咄嗟の行動力や、バトルのセンスには欠けるように思えるところです。マイナスな表現をしてしまいましたが、これも私が新鮮に面白いと思った部分です。
ロイはポケモントレーナー、ひいてはポケモンバトルに興味はあるものの、第7話「特訓! キャプテンピカチュウ」でロイはリコとポケモンバトルをしますが、“ひのこ”と“このは”を連発するばかり。結局、ホゲータとニャオハが疲れてバトルはなあなあで終わってしまいます。そこでライジングボルテッカーズのキャプテン、キャプテンピカチュウに特訓をしてもらうことになるという話です。また、第10話「ネモとコルサと」では“ちょうはつ”を喰らって言うことを聞かなくなってしまったホゲータに「もお〜、なんで!?」と苛立ってしまったり、第20話「カブさんのバトル修行」でヒトモシの頭に火を多くつけた方が勝ちという修行でも、ロイは愚直に攻めてしまいます。
ロイのバトルセンスがそう高くない部分は、裏返せば伸びしろがあるということです。実際、話の中で、同じく成長していく様は、上述したリコと同じ理由で好ましく思います。ここでいいな、と思うのは、サトシほど突拍子もないことをすることはない部分です(何話かは忘れたんですが、確かサン&ムーン編でピカチュウに竜巻を駆け上れとかそういう無茶を言ってた覚えがある)。
周りから見れば突飛なことをしだすことも当然あります。ホゲータが“ひのこ”を使えないのを見て、ホゲータが口ずさむリズムをロイも歌い、ホゲータを鼓舞する場面は周囲からすれば何をしているのかわからないでしょう。実際リコも「今?」と驚いてしまいます。でも、彼らにとっては最善の策で、ロイはいつでもホゲータに寄り添おうとしています。旅に出たいとロイが祖父に頼む時も、自分の夢だけでなく、ホゲータの夢のためにも頑張るのだと宣言します。そういうところが良いと感じる部分です。
また、面白いなと感じた部分は、咄嗟の危機的な状況で、ロイよりもリコの方が判断が早いように感じる場面があることです。第11話「森のオリーヴァ」で、見上げるほどに巨大なオリーヴァに襲われた際、森のポケモンを治療する仲間が「逃げない」と言い切ったのに驚くロイに対して、リコは「私たちがなんとかする」と答えます。ロイはそれに「無理だよ!」と首を振る。ここが面白い。だってサトシなら「よし、やるぞピカチュウ!」とでも言いそうな場面です。でもロイは無理だと言う。
彼は観察力に優れています。だからこそ、「無理」だと思ってしまうような、どこか冷静な視点があるのだと思います。今までの主人公とは違うな、と思える部分が、細かいところでたくさんある。けれど、確実にそこに魅力があります。ちなみにこの後ロイはリコに鼓舞されて、「二人一緒なら」とオリーヴァに立ち向かいます。怯むのは一瞬、というのもいいですよね。
本当に細かいところなんですが、第27話「仲間といっしょなら」で、ワイルドエリアに訪れたリコたちの背後から食材屋が現れた時、ロイは構えてリコはその背後に隠れているという描写があります。いいですか、背後に隠れてるんですよ。すごくないですか!? すごく素敵な描写だなと思いました。きっとリコにとって、ロイは頼れる人物なんですよね。先に「こうしようよ!」って言い出すのはロイだから。互いに助け合って頼りになる。すごく素敵な関係を築いているんです。
ロイのこういう部分について、嫌だなと思われる方もいらっしゃると思います。実際ロイで検索しようとしたらとんでもねえサジェストが出てきて「おおん……」となりました。悲しい。でも、リコだけではできなかったことを、彼はしてくれていると思います。リコとは違う観点で、一緒に成長してくれるキャラクター。すごくいいと思います。
「ライジングボルテッカーズ」の大人たち
今作において、前作まではなかった描写。それは、主人公たちのそばには大人たちがいるという点です。
厳密に言えば、サトシは定期的にオーキド博士に連絡したり、サン&ムーンではククイ博士の元で暮らしたりしていたので、大人から完全に離れていたわけではないのですが、リコとロイはフリード博士率いる「ライジングボルテッカーズ」の一員として一緒に冒険をしています。つまり保護者と共に旅をしているような状態なんです。
個人的にはこれ、大人の視点ですごく安心できる。今にして思えばタケシってめちゃくちゃできた14歳だったんですよね……。なんでもできるもんあいつ。しかも、リコもロイもスーパーマサラ人ほどの身体能力もバトルセンスもない。そこに、ちゃんとした大人がそばにいると言うのは、すごく安心して観られる要素だと思います。
そもそも説明していませんでしたが、「ライジングボルテッカーズ」はフリード博士が立ち上げたチームになります。結成秘話を詳しく観られたいは本編の第18話「そらとぶピカチュウ、どこまでも高く!」が作画的にも構成的にもめちゃくちゃにいい話なのでぜひどうぞ。
『戦うポケモン博士』ことフリード、メカニックのオリオ、料理担当のマードック、医療班のモリー、飛行船「ブレイブアサギ号」の元となった釣り船の持ち主ランドウが「ライジングボルテッカーズ」の大人たち。彼らは子どもたちをよく見守り、仲間としていい関係を築いています。その中でも今回は「ライジングボルテッカーズ」の設立者・フリードについて書きたいと思います。
彼は最初、ペンダントを狙うアメジオたちからリコを守るため、リザードンに乗って上空から現れるというインパクトのある登場の仕方をします。余談ですがこれを始めとする彼の活躍回の作画、作画がべらぼうによくてたまげるマジで。キバナさんでタレ目褐色イケメンに味を占めたか……? いいぞもっとやれという気持ちになります。
フリードがリコを助けたのは、彼女の母親・ルッカがフリードの恩師だという関係があるからです。事情があって祖母から危機を知らされたルッカは、フリードにボディーガードを頼み、そうしてリコは「ライジングボルテッカーズ」の一員となります。
しかしこの男、基本バトルもできてポケモンの知識がありリーダーシップもあるのですが、とにかく報連相をしない。リコに何も言わないまま、「ブレイブアサギ号」まで連れて行ったので、これでは誘拐と同じだと衝撃が与えられました。「言ってなかったか?」が口癖で、他のメンバーも呆れています。最悪の口癖過ぎないか? 一歩間違えれば本当に誘拐犯である。リコが押しに弱い性格じゃなかったらもっととんでもないことになってたかもしれない。
ただフリードは、こういったタイプの快男児ではあまり見ない気がするんですが、意外と心配性に思えます。第5話「みつけたよ、ホゲータ」では、初めてのバトルに挑むロイの様子を「無茶すんな!」と言ったり、自分もバトルしながらロイの方を気にかける場面が見られます。第11話「森のオリーヴァ」や第12話「わたししが選ぶ未来」でも、連絡の途絶えたリコとロイを気にかけ、原因が電波障害だと知るや否やすぐに飛び出す場面があります。また、第24話「古城での再会」でリコの祖母に会いに向かった際、降り立ったウインディに対してすぐにボールを構える姿も見られます。
フリードは博士としての知的好奇心やそれに基づく行動力がありつつも、ちゃんと保護者でいてくれるんですよね。あと下船準備を手伝うと申し出るリコとロイに、「やることがあるだろ?」とオンライン授業を受けるように促す場面すらあります。めちゃくちゃちゃんとした大人だ……報連相が出来ないこと以外は……。
リコとロイはサトシほど身体能力に優れているわけでも、バトルセンスがあるわけでもありません。サトシ以上に、発展途上の子どもなんです。だからこそ、こうやってバトルに長けたフリードたちがいてくれるからこそ、リコとロイの成長を安心して見守れるというところが大きいと思います。
「第三の主人公」ドット
さて、そろそろ締めてもいいのですが、語るべき登場人物はもう一人います。というか語っていない「ライジングボルテッカーズ」のメンバーはまだまだいるのですが、その中でも私が話したい人物がいます。それが上述した中にはいなかった、ドットという少女です。
上で書かなかったのは、彼女が大人ではなくリコたちと同年代の子どもだから。ただし、リコとロイからすれば、先輩のメンバーに当たります。担当は情報収集とアプリなどの開発。飛行船のシステムも彼女が管理しているような場面があります。
ドットは最初、一切姿を見せないままその存在を紹介されます。料理担当であるマードックの姪だという彼女は、基本部屋に篭り切りで、ほとんど姿を見せないのだそう。トレーナーを見る目が厳しく、最初新米トレーナーのリコとロイにもそっけなく対応します。基本的に素直なリコやロイとは違い、少々捻くれていて気難しい性格です。
しかし、彼らが認められるために努力したり、無理に部屋に押し入ったりしない距離感でいてくれたりと、徐々に心を開いていくようになります。その一方で、着ぐるみ配信者「ぐるみん」という一面も持っており、クワッスと共にポケモンやトレーナーについて語るハイテンションな姿を見せてくれます。
関係性が変わる決定的なきっかけとなる話は、第15話「みえないヤツだ! 何者なんじゃ?」です。ペンダントを狙うアメジオたちが所属する組織「エクスプローラーズ」の策略によって、記憶をすっかり失ったリコがどこに行ったかわからなくなってしまいます。その彼女を探すため、ドットは自分の力を駆使して外に出る決意をします。ナンジャモとコラボ動画を配信して、ファンたちの力でリコを探し出すのです。ここで、ロイは見知らぬ少女をすぐにドットだと気づくのですが、リコは「誰だっけ?」と首を傾げます。ここもロイの観察力の鋭さが見られていい場面です。
そしてペンダントを取り返すため、クワッスのトレーナーになることを決意します。そう、ポケモンやトレーナーについて、配信で散々語ってきたドットでしたが、実はポケモントレーナーではなかったのです。これ、普通に驚きました。クワッスとめっちゃ仲良く動画配信してたやん……。でも、ドットが投げたへろへろのボールに、クワッスが自分から入るところを観て、リコとロイは「クワッスはよっぽどドットのパートナーになりたかったんだ」と笑うシーンを見たら納得しました。クワッスはきっと、ずっと待ってたんでしょうね。もちろん、周りの仲間たちも。
これらをきっかけにして、外に出るようになったドット。リコとロイも、今までは扉の外で話していたのが、部屋に入って話すようになります。距離が縮まっていることがわかる描写が本当に丁寧です。
大事な友達のため奔走したり、今まで興味なかった食事を一緒に取るようになります。おすすめは第27話「仲間といっしょなら」と第41話「キョーレツかーちゃん現る!」です。偽情報に踊らされている自分に怒る場面は、捻くれていながらも仲間思いな彼女の性根が表れているし、第41話で母親に意見を言う場面では今までは聞けなかったドットの本音が聞ける、彼女がどんどん好きになるシーンが詰まっています。
さいごに
さて、色々語りましたが、これはひとえに私が新アニポケのどこがいいと思ったのかの言語化であり、備忘録です。賛否両論あると思います。実際、新アニポケについて検索したら望ましくないサジェストが上の方に出ます。悲しい。でも、私にとってはめちゃくちゃいい。
リコとロイ、子どもたちの眩しい成長。頼りになる大人たち。かわいくてかっこいいポケモン。私はキャラクターにハマっていますが、他にもハマる要素はきっとあると思います。
サトシと一緒に見た、ポケモンマスターを目指す旅ではない、どこにあるのかわからない場所を目指す不思議な冒険のその先を、一緒に見られることがとても嬉しいです。今回はキャラクターに焦点を当てましたが、当然彼らが冒険する理由がわかるストーリーやポケモンたちも魅力的なので良ければぜひ観てください。アマプラなどで配信されてます。
ポケモンっていつだって面白くってワクワクさせてくれる。歳を取って視点は変わっただろうけど、やっぱり変わらず楽しめる作品だと思います。
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