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めちゃくちゃ良かったアルバム2022

今年の振り返り!
良かった/かなり聴いたアルバムをプログ系中心にダラダラ列挙していこうかなと思います。なお結構話題になった作品とか誰もが知ってるバンドは書くまでもないので今回は省略。

あとメタル系アルバムベストは来月あたり某誌に載りますのでそちらをご覧いただければなと思います。そっちに入れた作品も今回極力除いていますが、一部はかぶってたりかぶってなかったりします。まあそれだけ良かったということで。


ということで2022年の新譜ですが、Gospel『The Loser』が圧倒的でしたね。17年ぶりに唐突な復活を遂げて(マジかよ)と思いました。内容も相変わらず、純正伝統プログレッシヴロック/シンフォニックロック/'70sハードロックとハードコアパンクを同居させた超刺激的な作風で何度聴いてもめちゃくちゃワクワクするしとんでもなくカッコいい。
この人たちはプログとハードコアの「融合」とか「要素の導入」とかじゃなくて「同居」って感じが良いのよね。気に入った人は'05年の前作『the moon is a dead world』もぜひ。

Gospel - The Loser

完成度で言うとThe Dear Hunter『Antimai』が非の打ち所のないパーフェクトっぷりで震えました。間違いなくプログロックではあるんですが、このファンキーな感覚とかクリアで色気のあるVoは他ジャンルのファンにも訴求し得る音楽だと思いますね。

The Dear Hunter - Antimai

シンフォニックプログ/メロディックプログ枠で言うとCollageの27年ぶり復活作『Over and Out』はすげえ良かったし、ピート・ジョーンズ aka Tiger Moth Talesの新作も安定の素晴らしさ。プログメタルからプログロックへ変貌したLaluも最高でしたね。Yesが好きな人はぜひ聴いてほしい。
ドイツのMealine Mau & Martin Schnellaによる新作も濃厚で聴き応え抜群。MoeTarの二人によって結成されたRaze the Mazeの2ndも奇妙なポップ感がクセになる良作でした。

Collage - Over and Out

他のプログ方面で言うとOren Ambarchi『Shebang』が凄すぎてヤバかったです。ミニマル・ミュージック系でこれほど聴き入ったのは初めてかもしれない。後半に向けて壮大さと感動が高まっていく流れは圧巻です。とんでもない傑作。

Oren Ambarchi - Shebang

Tangerine Dream『Raum』もめちゃ聴きました。故エドガー・フローゼの遺志を継ぎつつ新たな叙情性を生み出しているのが現行TDの素晴らしさ。
吉田達也氏や小埜涼子氏、Univers Zero、Knifeworld、Unit Wailのメンバー等等が参加したメキシコのGreco Bastiánによるアルバムもまさに前衛オールスターズなヤバさと刺激に満ちていて最高でした。
オーストラリアのLack The Low、ドイツのDer Neue Planetも良かったです。

Tangerine Dream - Raum

あとdälekの新作も最高でした。ヒップホップとノイズ/アンビエント/クラウトロックの融合を長年やっている人たちで、毎回カッコいいアルバムを出してるんですけど今回も素晴らしい。過去にはFaustとのコラボレーション作品を出したりしてるのでそちらもぜひ。dälekにはいつかプログ視点でのインタビューをしてみたい。

dälek - Precipice

プログメタル系だと、まずこないだの配信でも触れたんですけどOceans of Slumberの新作『Starlight and Ash』。ソウル/R&B/ブラックミュージックをメタルに導入する方法論となると近年はZeal & Ardorが注目を集めがちですが、Oceans of Slumberもなかなか凄いのですよ。余分なメタル要素を極力削ぎ落とした今作は本当に良いです。

Oceans of Slumber - Starlight and Ash

沖縄出身プログメタルulma sound junction『Reignition』も素晴らしかったです。めちゃくちゃ聴いた。曲がとても良くて応援したいですね。
他に聴きまくってたのはPort Noir『Cuts』、デンマークのCold Night for Alligators『The Hindsight Notes』、ノルウェーのMaraton『Unseen Color』。このへんの現代ポップス/ロック感覚を備えたモダンプログは本当に好きだなあ。

Port Noir - Cuts

ハードコア/メタルとサイケ/ストーナーをブレンドしているアメリカのLasiodora、荒々しさがカッコいいインドのエクストリームプログManeating Child、アメリカの実験的メタルWithout Waves、同じくアメリカのポップメタルBerried Alive、イタリアのDjent/プログメタルSYK、前衛エクストリームWaxwolfあたりもプッシュしておきたい次第。

Lasiodora - Molt

Marunouchi Musik MagazineでインタビューもされていたフランスのアヴァンギャルドブラックメタルPensées Nocturnesや、同じくMMMで特集されていたウクライナのポストブラックWhite Wardもカッコよかったです。

【Marunouchi Musik Magazineリンク】
 Pensées Nocturnes
 White Ward

Pensées Nocturnes - Douce Fange

フランスのThe Algorithm、インドネシアのKekalも新作を出してまして、それぞれカラーは違いますが毎度の如く最高の内容でした。もうこのへんは中堅どころと呼びたい。

The Algorithm - Data Renaissance

名が知られてる枠だとMonumentsの新作はとても気合入ってて良かったし、Pusciferのリミックス盤『Parole Violator』『V is for Versatile』もすげえ好き。Coheed and Cambriaの新譜もここ数作の中では屈指の出来だったのではないでしょうか。

Puscifer - V is for Versatile

ダニエル・トンプキンスのシングル『The Abyss / Frenzy』も愛聴しましたね。特に"The Abyss"は今年二番目によく聴いた曲です(一番聴いたのはデヴィン・タウンゼンドの"Call of the Void")。シンセウェーヴ型プログメタルをやらせたらこの人の右に出る者はいない。ソロでもTesseracTでもZETAでもWhite Moth Black Butterflyでもなんでもいいので早く来日してください。

メロハー枠で最も良かったアルバムは冒頭で触れた某誌のベスト10に入れてるのでそちらをご覧いただくとして、次に良かったのは安定と信頼のLionville『So Close to Heaven』です。冷静に見ればアルバム全体としての完成度は過去作に軍配が上がる気もしますが、私の場合「ラーズ・サフサンドが歌ってるアルバムはすべて名盤とする」という先祖代々の教えと宗教上の理由があるので、今回も名盤です。"True Believer"のリリックビデオの映像なんかは完全に解釈一致って感じでたまらなかったですね。もうラーズ・サフサンドの声だけを聴いて一生を終えたい(定期)。

Lionville - So Close to Heaven

Giant新作『Shifting Time』も、(ダン・ハフいないのかよ〜)って感じで正直期待してなかったんですけど、蓋を開けてみるとかなりの良作で嬉しい驚きでした。

他にはThe Hellacopters新譜も初期のアティテュードと『By the Grace of God』期の哀愁感&楽曲の良さがうまく合わさっていて素晴らしかったし、Magnum『The Monster Roars』もかなりの会心作だったと思います。ボブ・カトレイもトニー・クラーキンも75歳ですよ。それでこのパワフルさ。バケモノですよ。こんなに元気な75歳、この二人以外にはサミー・ヘイガーしかいません。

個人的に普段あまり聴かないタイプのメタルなんですが、Shewolfのデビュー作はメロディが良くて結構好きでしたね。


それ以外でよく聴いたのはPaul Draper『Cult Leader Tactics』Anne Paceo『S.H.A.M.A.N.E.S』、後期The Clashのギタリストだったニック・シェパードがピアニストとコラボした作品『Pratunam』。どれも超良かった。

Anne Paceo - S.H.A.M.A.N.E.S

どこにも書くところがないので改めて触れておくと、Archive『Call to Arms & Angels』Pure Reason Revolution『Above Cirrus』はどちらも私の中で今年のベスト5に入ります。

Archive - Call to Arms & Angels

あと知り合い枠を二つ挙げておくと、オーストラリアのKurushimiセルフ再解釈EP新作を出しました。ジョン・ゾーンmeetsデス/ブラック・メタル感が今回かなりストレートに響くカッコよさを醸し出しているのでおすすめです。なお首謀者のAndrew Mortensenは今年Hashshashinに加入しており、そちらの新作にも期待したいところ。

Kurushimi - Return III: Death

昨年フランスのバンドBend the FutureをTwitterで紹介したことがあり、それ以来メンバーとやり取りをしてるんですが、来年5月に新作をリリース予定とのことでした。新曲が一つ公開されているのでぜひどうぞ。


そんなところですね。今年は本当に充実した作品が多かったです。コロナ禍が多少なりとも落ち着きを見せ、ツアーが再開され始めた状況ですが、一方で各バンドが「パンデミックにより諸々のリセットと停滞を余儀なくされた時期」を経て今後どういったヴィジョンで作品を作っていくのか、そしてどういう音楽的潮流が2023年に生まれていくのかに注目したいところであります。そしてそういった新たな流れが見え始めたとき、単に情報を羅列するだけでなく考察や体系的特集を積極的に行うような動きが音楽メディア側にも発生するといいなと思います。

ではみなさま良いお年を。

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