「吾輩は爪楊枝である」

吾輩は爪楊枝である。小さな身体でありながら、大切な役割を果たすことに生きがいを見出している。

日々、私は様々な場面で活躍する。食事の後、人々は私を手に取り、歯の間を掃除する。その一瞬の時間に、私は彼らの口元を輝かせることができるのだ。

しかし、私が爪楊枝であるということは、決して楽なことばかりではない。使い捨てられることが多く、一度使われたら命を終える。それでも、私はその役割を全うし、誇りを持って存在する。

ある日、人々が賑やかに食事を楽しんでいる中、私は一本の爪楊枝として役立つことを願っていた。すると、一人の男性が私を手に取り、歯の間を丁寧に掃除した。

その男性は見るからに疲れているようで、笑顔を見せることは少なかった。しかし、私が彼の口元を磨くたびに、彼の表情が和らぎ、少しずつ笑顔が戻ってきた。

その光景を見て、私は自分の存在意義を再確認した。私はただの爪楊枝ではなく、人々の笑顔を引き出す一端を担う存在なのだと思った。

夜が深まり、人々が帰っていく中、私もまた役割を果たし終えた。使い捨てられることを覚悟していたが、それでも私は満足していた。吾輩は爪楊枝である。使命を果たすことが、私にとっての誇りなのだ。


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