還暦おやじのスタディアブロードWith ウクレレ㊹クバオに一人旅
いざ、クバオに日帰り一人旅
今朝も天気をスマホで確認。
鍵:「Could you tell me, What the weather today?」良かったら教えてくれる。今日の天気は?
S:「Today's Manila is sunny and then rainy with a maximum temperature of 30 degrees and a minimum temperature of 23 degrees. 」今日のマニラは、晴れのち雨、最高気温30度で最低気温23度です。
鍵:「Will it start raining?」いつ雨が降り始めますか?
S:「It has been raining since the evening.」夕方から雨が降ります。
鍵:「What the current temperature?」今の気温は何度ですか?
S:「In Manila, the current temperature is 25 degrees. 」マニラの今の気温は25度です。
スマホは何度同じことを聞いても嫌な顔を一切せずに答えてくれるのでありがたい。
しかし、Aiが進歩して「何度も同じこと聞かないでよ!」っていう時代がもうすぐそこまで来ているような気がする。
ラジオ体操とウクレレの練習後に、英会話ジムで分が続く言い回し動画をみてから、フレーズの一部を置き換えるレッスンをした。
そんな朝のルーティンを終えて、久しぶりに時間もあるので暇つぶしに桶まんを呼び出すことにした。
いでよ、桶まんごろう。
桶:「Good morning. A perfect day for going out.」おはようございやす。今日は出かけるのにもってこいの日でござんすね。
鍵:「Morning. But smartphone said It’s going to rain later in the afternoon.」おはよう。しかしスマホは午後遅くから雨が降るって言っておった。
桶:「I’m afraid so.」あいにく、そのようでござりますな。
鍵:「Why are you speaking in English?」どうして英語を話しているのですかな。
桶:「ご隠居は夕方部屋に戻るまで英語しか話せないのでござるから、英会話の準備体操でござる。」
鍵:「そうですな。かたじけない。」
桶:「ご隠居。万が一の為に、あっしをお供に連れて行ってくだせいやし。」
鍵:「何を言っているのですかな。いつも一緒ではありませんか。」
桶:「へい、そうでやすが、一度まんごろうに戻ってしまいやすと、パワースポットで呼び出して貰わないとご隠居とはつながることが出来やせん。」
鍵:「なるほど、そういう事なら分かりましたよ。」
桶:「フルーツの家は、パワースポットでやした。呼び出して欲しかったでござる。」
鍵:「どうしてですかな?」
桶:「ビーナスと話したかったでござる。彼とは気が合いそうでござる。」
鍵:「そうですな。次の機会は呼び出すことにしましょう。でも、わしはビーナスとおでこをつけるのは御免こうむりますじゃ。」
桶:「そうでござりますか。残念でござる。ところで、今日はパワースポットのところしか繋がりやせんので、プップッ通信がとぎれたりしやすが気にしないでおくんなせいやし。」
鍵:「わかりましたよ。頼りにしておりますぞ。」
そんな会話を交わしながら、朝食へ。それにしても桶まんが渡世人の格好をして部屋の中を浮遊しているとしても違和感を覚えなくなってしまった。
それどころかシチュエーションに合わせて違うスタイルで登場してくれることが桶まんには言えないが楽しみだ。
食堂で玉ねぎさんから夕方の待ち合わせ場所と時間のメモを手渡された。
鍵:「I’m looking forward to going to the restaurant tonight.」今夜、レストランに食事に行くのを楽しみにしています。
玉:「Me too. See you later. And I like your style. 」私もですわ。またあとでね。あなたの装いとっても好きですよ。と、新しく買った膝のところに穴の開いているダメージジーンズとTシャツを褒めてくれた。
見た目から想像すると、破れたジーパンを縫ってくれちゃうようなおばちゃんだと思ていたが実際には違うらしい。
玉ねぎさんの隣のご夫婦が頭を下げたので、こちらも軽く会釈をした。
ユリとチエとは、たわいない話を筆談でして、お互いに今日一日楽しみましょうと言って食堂を後にした。
さて、これからジプニーの乗り場に向かう。商店街を通り抜けてガードマンのいるゲートを抜けて大通りに出た。片側通行車線は5車線で、まるで高速道路のようだ。
そこに架かっている歩道橋を渡り右に行くとバス乗り場があり、そこからクバオ行きのジプニーに乗る。
右のポッケには20ペソだけが入れてあり、左のポケットには10ペソとノートが入れてある。そして、両足の靴下の中には20ペソずつ入れてある。それ以外のお金はリュックに2つに分けて入れてあり、リュックは胸の前に抱えている。
ジプニーに乗れない
思っていたよりも人が多いし、ジプニーは何台も近寄ってきて運転手が段ボールの看板を見せながら客を探していた。そして、時折大きなバスや一回り小さなバスが止まると、ドアが開閉して客が乗り降りしている。
ジプニーには運転席にも助手席にもそして一番後ろの部分のドアもない。乗降客は後部から乗り降りしている。この状況だとまったく乗ることが出来ないと感じて、面倒見がよさそうなおばさんを探して、声をかけた。
鍵:「Excuse me, How can I get to Cubao?」すみません。どうやたらクバオに行けますか?
お:「Wait a minute. I’ll ask the driver. 」チョット待ってね。私が運転手に聞いてやるから。といって、どんどんやってくるジプニーを見ながら、一台のジプニーの運転手に尋ねてくれて、乗る様に促してくれた。
そして、すでに乗っているおばあさんに何やら話してくれた。多分、この人はクバオに行きたいそうだからフォローしてくださいね。と、言ってくれたと理解した。
「Thank you for your kindness, ma’am. 」とマーガリンと練習したフレーズを使って、おばさんに親切にありがとうと感謝を伝えながら、バイバイと言いながら手をふった。
私が乗ったジプニーの乗車率は80%といったところ。最後部の私は確りつかまっていないと振り落とされる危険性があると感じていた。
マーガリンから教わったように、ポケットから20ペソを取り出して、フォローを引き受けてくれたおばあさんに手渡しクバオと伝えた。
おばあさんは隣の人に声を掛けて20ペソを手渡すと、私の20ペソが運転手に向かってボール送りのようにリレーされていった。その後ボール送りのようにお釣りが戻って来て、おばあさんが私に手渡してくれた。
一瞬「Keep the change.」お釣りは取っておいてください。と言いかけたが、その言葉を飲み込んだ。そんなことは失礼なことなのかもしれないと考えたからだった。
I don't speak English.と言われてビックリ!
鍵:「Thank you. How long does it take from here?」ありがとう、ここからどれぐらいかかりますか?
お:「Sorry, I don’t speak English.」すみません。私は英語を話しません。
そうすると隣の男性が、「It takes about 30 minutes from here.」大体ここから30分ぐらいです。と、教えてくれた。彼にはお礼を言ったが、「I don’t speak English.」って言われたのは人生で初めてでどのようにリアクションをすればよいか困った。
来日した外国人の気持ちが少しだけ分かった気がした。しかし、この場合どのようなリアクションをすればよいのかマーガリンに聞いてみなくちゃ、ポケットからノート取り出してメモした。
何度かバス停で停まり、乗客が入れ替わったがフォローを請け負ってくれているおばあさんは椅子に座ったままだった。
乗客がジプニーの天井を叩くたびにどこでも停まり、そして走っている途中に手を挙げている客を見つけると停まって新たな客が乗り込んできた。
私はクバオが終点と聞いていたので少しだけ運転手方向に移動した。その為ボール送りの列に加えてもらえるかと期待したが、残念ながら私のところを避けてリレーされていった。
少し運転手が見えるところまで来たら彼の左手には指ごとに札が挟まれていた。そして、運転しながら右手で乗客の運賃を受け取り、渡してくれた客にお釣りを手渡す。そうしながら目は道路の新規客を探している。凄い技術だ。運転は荒いが誰もドアがないのに振り落とされないということに驚いた。
そんなことに感心していると例のおばあちゃんが両手の人差し指を下に向けてクバオと教えてくれた。
ついに、クバオに着いた。
おばさんに手を引いて貰って道を渡る
ジャムからも言われていたので私は乗客が降りてゆくのを確認してから最後の方に降車した。それは、終点付近は危険なのでなるべく後をつけられないようにする為の方法だった。
私は速足で通りを抜けて大きな交差点のところまで来たところで、胸の前に抱えていたリュックを一度降ろしてから背負いなおした。
この交差点はどちら側の道路も通行量が多く、日本で例えると銀座にある鳩居堂の前の銀座通りと晴海通りの交差点のようだ。
そこで何人かが立ち止まって左右を見ていたが、やおら全員が歩き出した。信号が青になったのかと見渡してみるが驚いたことに信号がない。
走ってくる車を目と手で制止しながら車と車の間をすり抜けて渡っていく、車はスピードを緩めるでもなくぶつからないように走り去ってゆく。私は、足がすくんで動くことが出来なかった。遠回りしても良いからと左右を見渡してみたが歩道橋見えていて、渡りたいのに渡れないのでもじもじしていると、一人のおばさんが私の手を強引に引いて渡らせてくれた。
おばさんは、車にクラクションを鳴らされてもひるむこともなく、私の手を引きながらジグザグに車の間をすり抜けていき反対側の道路にたどり着いた。
この年になって自分より年上の人に手を引いて貰って道を渡るとは思わなかった。
マニラのスタバで注文
まずは、コロシアムの下のスターバックスで休憩することにした。Starbucksでの英語での注文のレッスンは、ジャムから受けたからここに来たらトライしようと思っていたからだった。
まず店内に入って若い客が座っているテーブルの近くを選んで席をとり、ジャムと練習したメモを確認することにした。
あえて若い客が座っている席の近くを選んで座るのは、ジャムから隣で話している内容を聞くのも英会話の勉強になると教えて貰ったからだった。
ジャムからは若い女性客とは言われていなかったが、私は積極的に若い女性客たちの席の隣を選んで腰を降ろした。
隣のテーブルにはTVドラマのチャーリーズ・エンジェルのファラフォーセットメジャーズのような金髪の女性が座って仲間たちと談笑していた。
もうそれだけで得した気分だった。
メモによると、Sales clerk(店員)はご注文はいかがされますか?という意味で3種類のフレーズを使うと教えて貰っていた。「Hi! What can I get for you? 」「Hello! What would you like today?」「What can we make for you?」と確認していざ注文。
S:「Hi! What can I get for you?」ご注文はいかがされますか?
鍵:「I’ll have a latte.」ラテをください。
S:「Which size?」サイズはいかがなさいますか?
鍵:「Tall please.」トールサイズをお願いします。
※サイズは、S,M,Lではなく。Short/Tall/Grande/Ventiというのも学習済みだった。
S:「Hot or ice?」ホットとアイスはどうしますか?
鍵:「Hot please.」ホットをお願いします。
S:「May I have your name?」お名前をお聞きしてもいいですか?
鍵:「My name is 鍵」私の名前は鍵です。
S:「How do you spell your name?」名前の綴りは何ですか?
鍵:「K・A・G・I」
店員は、カップに名前を書きながら。
S:「For here or to go?」店内で飲まれますか?それともお持ち帰りですか?
鍵:「For here please.」店内で飲みます。
S:「Anything else?」他に注文はありますか?
鍵:「That’s all, Thanks.」これだけでいいです。
S:「It’s 15 pesos. 」15ペソです。
鍵:「Here it is. 」はい。と、15ペソを手渡した。
S:「Thank you. Next, please.」ありがとう、次の方どうぞ。
桶:「ご隠居。隣の金髪の子は好みでござるか?」
鍵:「そうか。ここはパワースポットなのですな。」
桶:「彼はエゲレス人でござんすよ。きっと。」
鍵:「イギリス人でしょうな。しかし、彼じゃなくって彼女ですな。」
桶:「そうでないでござんす。耳を澄ませて声を聞いておくんなせい。」
助さんに言われたように彼女の声を聴いてみると確かに低音だ、それにのどチン子が動いているのが見えた。
鍵:「確かにそのようですな。」
桶:「日本もフィリピンも同じでござんす。」
英語のおねえ言葉ってどういうものか気になったが、彼らは多分タガログ語で話しているようだったので、何を言っているまったく分からなかった。
鍵:「彼らはなんの話をして盛り上がっているのですかな。」
桶:「ご隠居は知らないほうがいいでござんす。」
鍵:「知りたいですな。」
桶:「そうでござるか。怒ったらだめでござるよ。彼らは、隣のエロ爺じじいがこっちをいやらしい目で見ているわよ。いやーね。良い年をして気持ち悪いわね。ぶつぶつ独り言をつぶやいているからボケてるんでしょうね。目を合わせてはだめよ。かかわらないほうがいいから。でござんす。」
鍵:「なんですと。気分が悪いですね。早くここを出ましょう。」
実は、これから行きたい場所を彼女たちに聞こうと思っていたが聞かないで良かった。
しかし、道を尋ねたらどのようなリアクションをしたのかが気になるところではある。
水戸黄門としてはこういう時の為にタガログ語を少しでもしゃべれるようになりたいと思ってしまう。
彼らは、隣のおやじにはタガログ語が分からないからと、私を魚にしてさんざん悪口を言っている。
鍵:「助さん、格さん、懲らしめてやりなさい!」
桶:「へい、ご隠居、格さんはいませんが、きゃつらをどうやって懲らしめやすか?」
鍵:「そうですね。翻訳ソフトに日本語で『君たち楽しい一日を過ごしてくださいね。でも夜遊びはいけませんよ。』って吹き込んで、タガログ語に翻訳して彼女たちに聞かせるようにしましょう。
桶:「御意!」
それは面白かった、私はロパクだったが彼女たちは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になってこちらを見て、複雑な顔をして頭を下げていた。
彼女らはさぞ極まりが悪かったのだろう。
日本でも同じような光景を目にしたことがあった。ラーメン屋で食事をしている時に、白人男性がラーメンを食べていた時。
客の一人がこれ見よがしにあの外人は箸が使えるんだって言ったら、彼が「ハイ。私は竹の集成材を使用したマイ箸を使っていますよ。」と、ひとこと言ったので店内は和やかな雰囲気に包まれた。
あの外人はと言った客はきまり悪そうにしていて、周りからも嘲笑されて、顔を真っ赤にしていた。
私も日本人として白人の彼に対してとても申し訳ない気持ちになったのを覚えている。その時に私は人を見た目で判断しないということを心に刻んだ。
ウクレレカフェを探す
スタバを出て、目的地であるウクレレカフェを目指して歩き始めた。ノートの手書きの地図を見ながら目印のデパートの伊勢丹を探してみるが、看板は見えない。
そこで歩いている人に聞いてみることにしたが、「Excuse me.」と声を掛けても「Sorry, I’m busy right now.」すみません、今忙しいです。や「I’m in a hurry.」急いでいますと言いながら通り過ぎてゆく。
歩いている人に訊くのは難しいと考えて、マーガリンから貰った地図を広げながら困っている様子で立ち止まっていた。
そうしたら親切な人が「May I help you?」や「Do you need any help?」と近寄ってきてくれて声を掛けてくれると信じていたからだったが、なかなか声を掛けてくれなかった。
もしかすると中国人か日本人にしか見えない人間に声を掛けて、万が一英語が通じなかったら面倒くさいと思われている可能性が高いのかもしれない。
そんな時おばちゃんが寄ってきてくれて地図を指さして何か言っているが聞き取れない。多分、ここに連れて行ってあげると言ってくれていると思ってYesと言って首を縦に振ったら。
さっき渡った道の向こう側を指さしてくれただけで、連れて行ってはくれないようだった。しかしこの道は一人では渡ることは出来ない。何故って、車が途切れることがないからだ。
そういう私の思いとは別に、一人の男性が渡って行った。後ろから見ているとまるでボールを持ったラグビー選手の様だ。
スピードを落とさない車をうまい具合に体をひねりながらかわしながらすり抜けて行く、スーツの上着は車の風圧を受けているがかすりもしないで渡り切ってしまった。
見ていて格好良かった。思わずナイストライ!と叫んでサムアップしてしまったが、彼は何事もなかったように急ぎ足で振り返ることもなく行ってしまった。彼にとっては、日常なのだろう。
私も同じことをやらなければならいと思うだけで足がすくんでしまった。これは私には無理!仕方がないので、信号機や歩道橋などがある場所まで歩くことに決めた。そして、20分ほど歩いて巨大なショッピングセンターのところまで来てやっと、歩道橋を見つけて道路を渡ることが出来た。
そのまま、ショッピングセンター内を歩きながら屋台の前に並んでいる客に声を掛けた。
鍵:「Excuse me. Could you tell me how to get to the Isetan?」すみません。どうしたら伊勢丹に行けますか?
客:「Isetan? Go straight that way until the end.」伊勢丹?あの道をまっすぐ突き当たりまで行ってください。
「Turn right at the end. Then go straight for three blocks. 」突き当りを右に曲がって。そして、3ブロックまっすぐ行ってください。」
「It’s on your left.」それは、左側にあります。
鍵:「How long does it take from here?」ここからどれぐらいかかりますか?
客:「It’s about 20 minutes on foot. 」歩いて20分ぐらいです。
鍵:「Thank you.」ありがとう。
客:「You are welcome. Good luck!」どういたしまして。見つけられますように!
私は、教えて貰った通りにその場から、伊勢丹に向かって歩いて行った。
説明した貰った通りに歩いて行くと伊勢丹に着いた。
何人かが待ち合わせをしているので、その中から一番可愛いレデイに聞いてみることにした。
鍵:「Excuse me. I would like to go to the ukulele café.」すみません。ウクレレカフェに行きたいのですが?
Ⅼ:「Ukulele café? Sorry, I’m not quite sure.」ウクレレカフェ?すみません、よく知りません。
鍵:「Is that so.」そうですか。
Ⅼ:「Let me look at it.」地図で調べてみましょう。
鍵:「Your very kind.」ご親切に。
Ⅼ:「It’s next to the cat café.」猫カフェの隣です。
鍵:「Is it close to here?」ここから近いですか?
Ⅼ:「It’s right over there. It’s just behind this building.」すぐそこです。ちょうどこのビルの裏側です。
鍵:「Thank you.」ありがとう。
Ⅼ:「It’s easy to find. Have a nice day.」簡単に見つけられますよ。良い一日を。
鍵:「You too. This way?」あなたもね。こちらの方角ですか?
Ⅼ:「No, the other way.」いいえ、反対側です。
鍵:「Got it. Thank you.」分かりました。ありがとう。
と言って、その場を後にした。やっぱり、きれいな人は優しいな。
角を曲がって進んでゆくと「Cat café」の看板が目に飛び込んできた。その隣がウクレレカフェ、思ったよりスムーズに来ることが出来た。
しかし「Cat café」は営業しているが、隣はシャッターが閉まっている。
ネットであらかじめ調べていたので今日は定休日ではないはずなのだがどうしたのだろうと思ったら、シャッターに張り紙が張ってあった。
その張り紙には「Our shop has closed due to the circumstances of various groups. Thank you for your patronage.」と、瞬時には理解できないフレーズが書いてあった。
「Due to」は、良くない理由として使うということをマーガリンに教わったかすかな記憶があるが「groups」と「patronage」が分からない。その単語をスマホで調べたいが、ネットは繋がらない。
仕方ないので写真を撮って後で調べることにした。
代官との再会!
桶:「ご隠居。お困り・・・・すな。」
鍵:「姿は見えないけど。」
桶:「・・パワーが弱い・・・でご隠居とつなが・・・やす。」
鍵:「それで、途中で途切れるんですな。これはなんて書いてあるのですかな。」
桶:「読めやせん。」
鍵:「そうでしたか。残念!写真に撮って後で調べることにしますよ。」
桶:「隣・・・行やしょ。」
鍵:「助さんは猫が好きなのですかな。」
桶:「へい。親方も好き・・・やした。」
鍵:「ほう、北斎は猫好きでしたか。じゃあ、少しだけ『Cat café』に寄りましょう。」
と言って、店内に入った。
中に入ってみるとメニューも他のカフェと同じでコーヒーから軽食まであった。
そして、お店の中に猫と遊べるスペースが設けてあり、50ペソを払うと部屋に入ることが出来る仕組みだった。
お金を払ってから中に入ったら既に何人かが猫と遊んでいた。ソファに寝転んで猫に顔に乗られて嬉しそうにしている男性やテーブルで遊んでいる女性や子供たち。
猫は20匹ほどいて、太陽の光が差し込んでくるので、ほとんどの猫が気持ちよさそうに寝ていた。
この中だと桶まんの姿がハッキリ見えるから、ここはパワースポットなのだろう。
今日の桶まんの姿は晩年の北斎だった。そして座って猫の絵を描きながらじゃれあっている。もしかしたら猫には桶まんの姿が見えているのかもしれない。
ソファに寝転んでスマホで猫の写真を撮っていた男性が起き上がってこちらを見たので、思わず会釈をしたらなんとその男性は代官だった。
お互いに顔を見合わせてしばらく黙ったままだったが、猫が飛びかかってきたのをきっかけにして挨拶を交わした。
鍵:「代官ですか?」
代:「Oh, I was surprised. あ、失礼しました。シゲさんですよね。びっくりです。又、お会いするとは思ってもみませんでした。」
鍵:「私もですよ。ここには良く来るんですか?」
代:「はい。家から近いので何度かきています。あなたは、確かスタディアブロードでケソンにステイしているんでしたよね?」
鍵:「そうです。今日はレッスンが休みなので、隣のウクレレカフェに来たんですが、生憎やってなくって。」
代:「そうでしたか。ところで、ここまでどのように来たのですか?タクシーですか?」
鍵:「いいえ、ジプニーで来ました。」
代:「えっ、一人でジプニーに乗ってですか?随分無茶しますね。」
鍵:「フィリピンの先生にもタクシーを利用するよう勧められましたよ。」
代:「当然ですな。それで、危ない目には遭いませんでしたか?」
鍵:「おかげ様で大丈夫でした。そうだ。空港では両替の場所に寄らずに勝手に先に行ってしまい申し訳ありませんでした。折角,先に両替をした方が良いと教えて貰っていたのに、空港に着いたとたんすっかりそのことを忘れてしまいまして。」
代:「いいえ、問題ないです。ところで、英会話の勉強はどうですか?」
鍵:「マンツウマンの授業で、先生を独り占めできてとても満足です。」
代:「それは良かった。これからどちらへ。」
鍵:「ウクレレカフェが休みで予定がなくなってしまったので、フィリピンの電車に乗ってみようかと。」
代:「そうですか。それならMRTがお勧めですよ。」
鍵:「MRT?」
代:「はい。『Metro Rail Transit.』の略でMRTです。マカティやオルティガスなどの主要ビジネス街を繋いでいるのです。私も通勤に使っていますが、他の電車よりも犯罪率が低いと言われていますから。」
鍵:「そうですか。それじゃあMRTに乗ってみます。」
代:「ランチはどうするのですか?」
鍵:「ファストフードで済ますつもりです。」
代:「折角、再会したんだからレストランのランチをご馳走しますよ。」
鍵:「いいえ、ランチを頼むのも英会話の練習として一人でトライしたいので。」
代:「分かりました。マニラにいる間にまた会いましょう。LINEやっていると言ってましが友達になりませんか?」
鍵:「良いですね。では、フルフルしましょう。」と言って、フルフルで友達になった。
代:「シゲさんは、ファミリーネームは鍵さんなんですね。」
鍵:「はい。代官は朝倉というのですか?」
代:「はい、そうです。」
鍵:「さすがに、代官という名前ではないと思っていましたが。」
代:「いや~。代官山に住んでいることもあって、仲間から代官と呼ばれているのです。」
鍵:「代官山って渋谷区の?」
代:「そうです。又、お会いしましょう。」
鍵:「そうですね。こちらのウクレレカフェに又来る予定ですから。その時にでも。」
といって、外に出てシャッターに貼ってある文章を見て代官が言った。
代:「休みではなく閉店したようですよ。この張り紙には、当店は、諸般の事情により閉店いたしました。今までのご愛顧ありがとうございました。と書いてありますよ。」
鍵:「そうでしたか。このカフェでウクレレの弾き語りをしたかったのに残念です。」
代:「僕もシゲさんのウクレレ聞きたかったなぁ。」
鍵:「あ、今度老人ホームに慰問に行って仲間とウクレレを演奏します。良かったら見に来てください。詳細はLineしますね。」と言って別れたが、代官が本当に翌週の日曜日に老人ホームまで来るとは思わなかった。
それに彼は連絡先を交換したことを後悔させられるほどのLine依存症おやじだった。
代官と別れた後は彼が書いてくれた案内図に沿って歩き、途中のマックでランチを食べてから駅に向かった。彼が書いてくれた地図には私への心遣いが感じられた。流石に役員になるような人は違うものだと感心した。
それは、とても遠回りになっているが信号のある交差点のところを通るルートを案内してくれているからだった。
駅まではビジネス街をのんびり歩いて15分ほどで着いた。その間に信号は一か所で歩道橋が一か所あったので命がけで大通りを渡らなくて済んだことはありがたかった。
マニラの地下鉄
駅ビルの一階にはデパートがありブランドに興味のない私でも知っている高級ブランドが並んでいた。
駅は、ビルの4階にあった。
チケットの買い方も代官からレクチャーを受けていたので、窓口に並んで行きたい駅を指さして、「ポ」って伝えた。
駅員が示してくれた15ペソを支払って、チケットを受け取りって改札の列に並んだ。
改札では、リュックの中身をチェックされたが問題なく通ることが出来た。
代官からはラッシュ時間帯は大変混雑して、電車に乗るだけで40分かかってしまうこともあるということを聞いていたがすぐに乗れそうなのでありがたかった。
チケットを改札に通して、上から出てきたのを受け取っていざホームへ。
代官から時刻表はないけど、通常15分から20分に一本来るから心配しないでと聞いていたので、列に並んで電車の到着を待った。
車内は空いていたが、座らずに吊革につかまって外の景色を見て楽しんでいた。チケットを買った駅までは3駅ほどしか停車しなかったが乗り心地も良くメトロのようで快適だった。
一度改札を出てから再度、チケットを買って元の駅に戻る途中にLineの着信音が鳴った。誰からだろうとみてみると、朝倉??あ、代官だ。
そこには、猫の写真が沢山。そして、Thank you!ニャン!という動きのあるGIF画像だった。
まさか、と二度見してしまった。
一流企業の役員でしかも強面の悪代官という彼のイメージとはかけ離れていたからである。
代官から帰りはショッピングモールからバスを利用した方が良いというアドバイスを受けたので、とりあえず来た道を戻ってモールに向かって歩き出した。
「Cat café」まで戻ったところで、Lineの着信音が鳴った。また代官だった。
来週の日曜日の仕事は部下に押し付けたので、参加するニャン。楽しみ!ニャンというメッセージとともに、可愛い猫の動画が添えられていた。
私も面白い動きのあるGIF画像を送りたかったが、やり方が分からなかったので、こちらこそという言葉だけ返信したが彼に一本取られた感じがして悔しかった。
40分ほど歩いてモールに辿り着いたが、流石にマニラ最大の規模というだけあってどこに何があるのかさっぱりわからない。
楽器屋さんを覗いてウクレレを見てみたい気もするが、まずは飲み物を買ってベンチで一息ついた。
幽体離脱??
桶:「ご隠居。お疲れでござるな。」
鍵:「はい、疲れましたよ。助さんからバス乗り場が見えませんかな。」
桶まんは、私の頭の少し上を旋回していた。
桶:「ご隠居。一緒に空から探しますでござるか。」
鍵:「何言っているか分からんですな。」
桶:「ご隠居の親魂とあっしで行くのでござる。」
鍵:「わしはどうするのじゃ。」
桶:「本体はここに置いていくのでござる。」
鍵:「理解できませんがな。」
桶:「ご隠居は、ガンダムを知ってやすか?」
鍵:「勿論、知っていますよ。」
桶:「それと同じでござる。本体は置いてゆくので、ベンチに座って考えているポーズをとってくだせい。目はあけて、そして、親魂が本体から抜けている時は、動けやせんからリュックは胸の前で抱えてくだせい。」
鍵:「こんな風で良いですかな?」
桶:「それじゃ、いきやす。ワンツウスリー。」
私は桶まんと一緒に飛んでいる。一番高いビルよりも上空に行くと電車の線路やドームも見えて楽しい。桶まんが高度を下げてくれて、モールの隅々まで見て回ってバスの乗り場を見つけることが出来たので、本体に戻ったが興奮は続いていた。
しかし、スクールに戻るためのルートは確認できたので一安心。
短い時間だったので、リュックも盗られずに済んだ。考えているポーズで目を少し開けていたのが抑止力になったようだ。
こんなに可愛い娘こなら送り強盗をされてもいい!
ここからバス乗り場は、ずいぶん遠いので寄り道せずにバス乗り場に向かった。途中で、可愛い若い女性に声を掛けられた。
こちらで買ったジーンズにTシャツでもしかしたらフィリピン人に見えるのかもしれない。
Ⅼ:「Excuse me, sir.」すみません。
鍵:「What can I do for you?」どうしましたか?
Ⅼ:「Do you speak Korean?」韓国語をしゃべりますか?
鍵:「No, I don’t.」いいえ、話しません。
Ⅼ:「I’m sorry. You looked like a Korean. Where are you from?」すみません。あなたが韓国人に見えたのです。ご出身はどちらですか
鍵:「Guess What?」当ててみて?
Ⅼ:「Are you Chinese?」中国人ですか?
鍵:「No, I’m not Chinese?」いいえ。
Ⅼ:「You are Japanese, right?」あなたは日本人です。そうでしょう?
鍵:「No, I’m French.」いいえ、私はフランス人です。
Ⅼ:「Seriously? You’re Kidding.」マジですか?冗談でしょ。
鍵:「Your right. I’m Japanese.」そうです。私は日本人です。
Ⅼ:「You bet. Do you live in Manila?」そうですよね。マニラに住んでいるんですか?
鍵:「No, I’m here to study English conversation.」いいえ、こちらには英会話の勉強に来ています。
Ⅼ:「How wonderful!」なんて素晴らしい!
鍵:「Why are you looking for Koreans?」どうして韓国人を探しているのですか?
Ⅼ:「Because I am studying Korean at university. I want to talk in Korean.」大学で韓国語を勉強しているからです。韓国語で話したいのです。
鍵:「That make sense. You are very aggressive.」そうだったのですね。あなたは凄く積極的ですね。
Ⅼ:「No, I don’t have the money to go to a Korean language school.」いいえ、韓国語のスクールに行くお金がないからです。
鍵:「I hope you can meet Koreans. Good luck!」韓国人と出会えるといいですね.幸運を!
と言って、その場から立ち去ろうとしたら。
Ⅼ:「Where are you going. 」どこまで帰るんですか?
鍵:「I will return to Ali mall.」アリモールまで帰ります。
Ⅼ:「How do you get there?」そこまでどうやって行くんですか?
鍵:「I’m thinking of going by bus.」バスで行こうと思っています。
Ⅼ:「I will send you by my car.」私の車でお送りしますよ。
鍵:「Thanks.」ありがたい。
桶:「ご隠居。なんか変ですぜ。大学生が自分の車を持っているなんて、ありえないでござる。こやつについていったら大変な目にあいますぞ。」
鍵:「助さん、口を慎みなさい。こんなかわい町娘が嘘つくわけないと思いますがな。」
桶:「ご隠居。顔で騙されてはダメでござる。」
その時、Lineの着信音が鳴った。また、代官だったが今度は電話だった。
代:「先ほどはどうも。今どこですか?」
鍵:「ショッピングモールです。」
代:「私の車で送りましょうか?」
鍵:「ありがとう。でもここで知り合った女子大生が車で送ってくれるとういうので大丈夫です。」
代:「そんなばかな。ありえない。チョットその彼女に代わってください。でもスマホから手を離さないでください。」
代官と彼女が何やら話しているが、タガログ語なのでまったくわからない。と、挨拶もせずに突然彼女が走って行ってしまった。
鍵:「もしもし、何があったのですか?」
代:「彼女は送り強盗の一味です。こちらがタガログ語で話して、今すぐそこに行くから待っていろと言ったんです。」
鍵:「えっ、あんなに可愛い子が送り強盗の一味。」
代:「はい。最近増えているんです。韓国語を勉強していると言って日本人に近寄ってくるんです。たいがいは、鼻の下を伸ばしているおやじたちが狙われるのですよ。車に乗せてから人気のないところに連れて行って、身ぐるみ剥いでそのあたりに捨てられるんです。」
鍵:「マニラだと暖かいので身ぐるみはがされても寒さで死なずに済みますね。」
代:「そんな問題ではないです。」と、代官は語気を強めて言った。
鍵:「そうでした。おかげで怖い目に合わずに済みました。ありがとう。これからバスでスクールに戻ります。」
バス乗り場までは、桶まんが忍者の恰好で飛びながら誘導してくれたので、迷わずに来ることが出来た。
バスでスクールに戻る
ここには、ジプニーやバスが沢山停車していた。そして、多くの人が列に並んでいた。
人のよさそうなおばさんを見つけて、訊いてみることにした。
鍵:「Excuse me, ma’am. Could you tell me which bus goes to Ali mall?」すみません。アリモールに行くのはどのバスか教えていただけますか?
客:「Let me see. Wait a minute.」そうねえ。チョット待ってと言って、大声で何か言ったが聞き取れなかったが、タガログ語で聞いてくれたようだった。
鍵:「Sorry.」すみません。
客:「Bus number 5 goes there. 」そこなら5番のバスが行きますよ。
鍵:「Thank you. It was helpful.」ありがとう。助かりました。
客:「Not at all. Have a nice day.」どういたしまして。良い一日を。
鍵:「You too.」あなたもね。
と言って、5番のバス乗り場に移動して男性に尋ねた。
鍵:「Are you at the end of the line?」列の最後はあなたですか?
男:「Yes, I am.」はい。
鍵:「Does this bus go to Ali mall?」このバスはアリモールに行きますか?
男:「Yes, it does.」はい。
鍵:「May I ask when the bus comes?」バスがいつ来るか教えていただけますか?
男:「They come about every five to ten minutes. 」だいたい5分から10分間隔で来ます。
鍵:「How long does it take from there?」ここからそこまで、どれぐらい掛かりますか?
男:「It takes about 30 minutes from here. 」ここから約30分ぐらいです。
鍵:「How much is the boarding fee?」料金はいくらぐらいですか?
男:「Maybe 20 pesos. 」多分20ペソです。
鍵:「Thank you. Nice talking to you.」ありがとうございます。あなたとお話しできて良かったです。
男:「Same here. It was very nice meeting you.」私もですよ。お会いできて光栄でした。
鍵:「You too.」こちらこそ。
お辞儀をしてバス乗り場で振り返ってみると、知らない間に私の後ろには随分長い列ができていたが私は前の方に並んでいたので椅子に座ることが出来た。
私を乗せたバスの車内は、満員というほどではなかったのに列に並んでいる人達を残して走り出した。
5番乗り場に目をやるともう次のバスがところてんのように押し出されて停車するところだった。
練習通りに出来たことの満足感に浸りながら、疲れたので椅子にもたれてうとうとしていると、Lineの呼び出し音が鳴った。
ハッとして見てみると、又、代官だった。
バスに乗っていますか?疲れていても絶対に寝ないようにニャン!ここは日本じゃニャイ!
リュックの中の物を盗まれても文句は言えないですよ。というメッセージだった。
そうだった、フィリピンの先生方からも言われていたことだ、と立ち上がり「助さん!シッカリサポートしてくれよ」とつぶやいたが、反応はなかった。
バスの中は、パワースポットではないらしい。
私を乗せたバスは停留所以外にもタクシーのように手を挙げる人がいるとその都度停車した。そして、乗客がパーラーポ!!というとどこにでも停車した。
乗降客があると、近くの乗客は必ずドアのカギをかけている。
これも犯罪に巻き込まれないためのルールだそうだ。言い換えればそれほど犯罪の多い国だという事だ。
代官のlineがなかったらこの平和ボケのおやじは寝こんでしまい、リュックを持っていかれていたかもしれない。
先ほどの送り強盗の件といい、これから先は心してかからねば。リュックの中の財布にはペソしか入れていないから惜しくはないけど、ウクレレとスマホは盗まれたら取り返しがつかないのでアリモールに到着するまで吊革につかまって外を見ていた。
車窓からは、ずっと茶色だらけの景色が続いていた。
マカオの蚤の市
たまに極彩色の建物が見えるがそれらはほとんどが教会であり、その周りには、蚤の市が立っていて、人であふれていた。
次の停車場所は、多分セントピーターズチャーチなのだろう。車掌がセントチャーチを連呼していてだれかが「パーラーポ」と言ったので、ほどなくしてバスは教会の前で停車した。
私は、蚤の市でにぎわっているのを見て予定を変更してここで降りることにして車掌さんにfrom クバオと告げて20ペソを手渡してバスを降りた。
それというのもこの教会には何度か来たことがあり、アリモールがこのすぐ近くだと知っていたし、玉ねぎさん達との待ち合わせ時刻までは、まだ間があったからだった。
蚤の市には服や食料品、生活雑貨、おもちゃ、絵画など魅力的な物が格安で売られていた。
そして、物色しながら歩いたがなんと蚤の市はアリモールの近くまで続いていた。
私は一番端まで歩いて、モール内のいつものスーパーマーケットで買い出しをして部屋に戻った。
この教会の前の蚤の市は、毎週日曜日に開催されているということを聞いたので、来週の午前中に買い物に来てみることにする。
桶:「ご隠居。お疲れ様でござんした。」
鍵:「いや~。疲れましたな。それにしても、空からみた景色は壮観でしたな。」
桶:「そうでやしたか。親方も空から見る景色がお気に入りでござんしたか。」
鍵:「北斎も空からの景色を見たのですかな。」
桶:「そうでおま。それで黒い富士山を描きやしたでござんす。そして、波も好きでやした。親方は、富士山と波の絵を描いた時には一艘の船がアニメのように動いている様子を描きやしたでござんす。」
鍵:「えっ、あの波の絵の船は3艘だと思っていましたよ。」
桶:「一艘だとお親方は言っておりやしたでござんす。」
鍵:「そうだったのですか?わしは、北斎の富士山の浮世絵を何度も観ていますが気が付きませんでしたな。」
桶:「親方の親魂をつれて、本体はそのままにしていろんな景色を見に行きやしたが、ある時、親方が全く動かないし話しかけても全く反応しないので、死んだと思われて大騒ぎになったことがありやしたでござんす。」
鍵:「そんなことがあったとは、驚きですな。しかし、埋葬されなくって良かったですな。それにしても、北斎がどんな景色を見ていたか興味がるなぁ。」
桶:「ご隠居。それなら本人に直接聞けばいいでござんす。」
鍵:「You’re kidding. そんなばかな。でもそんなことが出来るのですかな。」
桶:「そんなに難しくないでござんす。チョット時間がかかりやすが運が良ければすぐに訊けるでござんす。ご隠居は訊いてみたのでござるか?」
鍵:「そりゃートライしたいですな。その為なら高所恐怖症の私ですが富士山でも登りますよ。」
桶:「わかりやした。そうしたら親方の親魂が今どこで仕事しているか問い合わせてみますでござんす。多分明日の昼過ぎぐらいには分かるでござんす。」
鍵:「なんのことですかな。」
桶:「あっしたち魂は、生き物じゃないので死にやせん。魂労働基準監督局の管理の下、親魂とサブ魂とを交互に担当しやす。あっしは、ご隠居の担当の前は、虫の親魂でやした。その時は、ガサゴソと食べ物を探し当ている時に突然、バッシッと音がして、本体がつぶれてしまったので役目が終わって多分20年ぐらい休憩しやした。
親方を担当した親魂が休暇中ならスグ連れてきやす。しかし、今違う本体の魂をやっているとこっちから会いに行かないとなりやせんでござんす。」
鍵:「休暇中なら嬉しいですな。万が一誰かの魂をやっていても近くにいてくれたらうれしいですな。その場合どんなことをしても会いに行きますぞ。」
そんなアホな話をしていると待ち合わせ時刻が近づいてきた。これから連れて行ってもらうレストランで桶まんに頭の上を旋回されたら気になって話に集中できないと考えて、まんごろうに戻ってもらった。