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SIWAの和紙トークvol:01-深澤直人さんとの出会い「ジュースの皮の紙パック」

みなさん。こんにちは。山梨県和紙メーカー大直の一瀬です。日常使える和紙製品ブランドSIWAを運営しています。この「SIWAの和紙トーク」では私が和紙屋の家に生まれ、40年ちょっとの人生の中であっと驚き、心が動いた紙にまつわることについてお話ししていくマガジンです。

第1回目の本日の投稿はSIWAブランドのデザイナーでもある世界的なデザイナー深澤直人さんと私が最初に衝撃的な紙ものでの出会いを果たした逸品についてお話ししたいと思います。

株式会社竹尾さんが1965年から開催している紙の展覧会「竹尾ペーパーショウ」。毎回紙の最新の加工技術や印刷技術を様々なデザイナーさんが参加し展示を行い紙の可能性を提案しているとても素晴らしい展示会です。
その私の大好きな竹尾ペーパーショウに始めて出会った2004年の展示「HAPTIC」-五感の覚醒-で、深澤直人さんの私にとっては衝撃的な作品に出会いました。2004年というとSIWAブランドが誕生する4年前。この作品との出会いはSIWAブランドにとっても、とても大きな意味をなしました。

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タイトル「ジュースの皮」-Juce Skin-

制作意図|深澤直人

四角いジュースの紙パックに桃のうぶ毛を生やしたらどうだろうというのがそもそもの思いつきだった。その思いつきはキウイになり、バナナになり、ついには木綿豆腐を豆乳の紙パックにしようというまでになった。苺の粒々はきもちわるいだろうなと思いつつ作った。最近の新しい8面体のパックは角が鈍角なのでバナナにはもってこいだと思った。本当のバナナみたいにできた。ジューシーな中身を覆っている果物の皮の色とテクスチャーを紙パックとしての表面にすれば、本物の果物のしずる感が出るのではないかと思った。果物を果物として認識できる要素としての皮の色とテクスチャーをジュースの紙パックとしての四角いアイコンと合体させれば、新しい感覚の飲みものの形ができるのではないかと思った。
五感の複合で世界は認知されている。「認知」あるいは「印象」の強い部分を残してさらにセンシティブに立ち上がる。作者はそのうろたえあわてて立ち上がったセンサーの滑稽な動きをはたからみて笑うのだ。これはいたずらのデザインなのだ。「???・・・!お〜〜っ」。感覚の喜びは感触の戸惑いによって生まれる。


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深澤直人さんのことは、この作品を見る以前から存じ上げていましたが、紙に関わる人生を送るであろうと思っていた私にとって、とても衝撃的な作品でした。このパックにストローをプスっと挿して吸い込んだときのジュースの味がリアルに想像できて期待してしまう。。。制作意図にもあるように私の感覚のセンサーがピンと立ち上がった紙製品でした。

この作品を見た3年後の2007年に深澤さんにSIWAブランドを一緒に作りましょうとアプローチしたわけですが、完全にこの「ジュースの皮」の作者に仕事を依頼するのだ。と心躍る思いで会いに行ったことを鮮明に覚えています。

SIWAの製品は、この「ジュースの皮」で感じられる、感覚のセンサーが立ち上がる雰囲気がある。最初のプレゼンの時にそう感じで、本当に嬉しかったです。人の記憶や感覚をブルっと揺さぶるものを生み出したいと切に願っていた私の夢が叶った瞬間でもありました。

SIWAのデザイナー深澤直人さん、今でも変わらずSIWAの製品のデザインをしてくださっています。

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次回は、海外で出会った紙製品を作る素敵な方々についてお話ししたいと思います。



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