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明日方舟公式漫画「序文組曲:無拘奏音」後編翻訳

 先日(10/27)、泰拉记事社にて公開された明日方舟公式漫画の個人的な訳となります。

注意:キャラクターの解釈は私個人のものです。効果音は雰囲気で読み取ってください。


本編訳

序文組曲:無拘奏音

紡がれる音、映される心

イベリアの海岸

~~

アルトリア:ああ、なんて整然としながら壮大な音色なの。ただ本能と欲望にのみ突き動かされてるなんて。

けどこれを……感情と呼べるのかしら?


1092年リターニア

子供:クライデ!広場に行くのか?噴水の所で演奏してる人がいるぜ!

クライデ:うん。買い物終わったらすぐ行く。そこでお爺さんを探すから。

子供:わかった。先行ってるぜ!

~~

憲兵隊:広場を囲め!急げ!

すべての感染者を捕らえよ!

憲兵:逃げるな!

感染者:うわぁ!

感染者:何もしてないのになんで捕まえるんだよ!

憲兵:黙れ!

アルトリア:……

~~

アルトリア:伯爵閣下。私はただ師の死を悼み、彼の遺されたチェロを受け取るためだけに参りました。お招きに預かった方に前にも説明しましたが、私の音楽に時を戻す力などありません。

貴方の願いを叶えることは出来ないでしょう。

伯爵:貴様はそのためだけに来たわけじゃないだろう?

アルトリア:そうだとしても、私のこれから行くところは貴方様だと役不足かと。

伯爵:貴様に警告される筋合いはない!

アルトリア・ジャッロ、私だけで巫王の遺跡に行くことなど造作もないわ!

感染者:ぐぇっ

伯爵:話せ!

感染者:はっはい……!

南西の方角に大きな湖が……通りかかったときに湖の中心から楽器の音がしたんです。一晩中……

そこでこの石を見つけたんです。

伯爵:巫王の遺した邪悪なる旋律が今もなお鳴り響いているということだ。アルトリア、貴様の師は巫王の塔の下で演奏したのだろう?となれば巫王の残党共と同罪のはずだ。

さあ、私と共にそこに行き、私のために演奏し、私が悪を滅ぼす手助けをしてほしい!

~~

伯爵:そこのサンクタと感染者共を連れて行け!

感染者:!?

アルトリア:一つ忠告をいたします、水面に映るご自身の内面にはお気をつけくださいね。

エトヴィン卿、くれぐれも溺れないよう。

クライデ:お爺さん……いない……

子供:クライデ!さっき来たら、エトヴィン卿がたくさんの人を連れ去ってたぞ!

~~

夕方

憲兵:よし、全員止まれ!今夜はここをキャンプ地とする!

感染者:お願いです、少し食糧を分けてくださりませんか……

憲兵:目障りだぞ!

感染者:エトヴィン様はよく無実な感染者を捕まえて、斥候や労働力として酷使しているの。連れ去られた人達は誰も戻ってきていないわ……

アルトリア:……

憲兵:変だな、何か聞こえた気がしたんだが。

~~

アルトリア:君、街を出てからずっと私たちの後付いてきてたでしょ?違う?

クライデ:……あなたたち悪者じゃない。

クライデ:フェリーン。老人。感染者。右手に結晶。

アルトリア:えっ?

クライデ:見たことない?

お爺さん噴水行った。噴水にいた人達ここで捕まってる。

アルトリア:見たところお爺さんはいないようね。

クライデ:ついてきた。手がかりあるから。

アルトリア:だったら捕まらないように、ここから離れた方がいいわよ。

クライデ:……

アルトリア:はぐれるのが怖いの?

じゃあこっそり連絡を……

クライデ:これ。

カツンカツン

クライデ:森の中。石の音。普通。

アルトリア:じゃあ、私はこう返事するわ。

クライデ:……

~~

三日後

感染者:なんだ?急に霧が出て……

感染者:まさか……巫王の旋律?本当に存在していたの……

感染者:きっと巫王だ、人をアーツに変えてしまうあの巫王だ……

感染者:霧の中に何かいるぞ……

感染者:あっあれは……巫王のアーツだ!!!

~~

感染者:嫌だ!アーツなんかになりたくない!

憲兵:どうした?暴れるな!

エトヴィン伯爵:フンッ

憲兵:おいっクソガキ、おとなしくしろ!

エトヴィン伯爵:たかが残像風情をここまで恐れるとは。

逃げられると思わないことだな。

クライデ:うわぁ!

エトヴィン伯爵:私の計画を潰す奴は誰だろうと許さん!

見張りの数を倍にしろ!しつけのなっていない感染者共をおとなしくさせておけ!

アルトリア:大丈夫かい?

クライデ:ごめん。僕のせい。みんな巻き込んだ。

アルトリア:お爺さんはここにいないのにどうしてまだついてくるの?

クライデ:あいつら感染者にひどいことする。僕助けたい。

~~

アルトリア:知らない人たちのために、君は危険を侵せるのかしら?

クライデ:お爺さん教えてくれた。人に優しくしろって。

アルトリア:……

君は怖くないの?この森には恐ろしいアーツがあってみんな死ぬかもしれないんだよ。

クライデ:……怖い、けど怖くない。

なんだか……この音あれば怖くない。

僕に、教えてくれる?

アルトリア:う~ん

クライデ:あっ、無理ならいらない。今どうせ外、僕もそれ使えない。

アルトリア:教える以上はせめて君の名前が知りたいな。

クライデ:……クライデ。

アルトリア:じゃあ、クライデ。

~~

アルトリア:しっかり感じるんだよ。

チェロの音色は私たちの心を強くしてくれる、そして私たちの心を一つに繋げてくれるわ……

~~

クライデ:うぅっ……おかしい、なんで……

やった!

感染者:やっとすこしはまともに聴けるようになったな。

感染者:うふふ!

感染者:弾いてたのは『青空の歌』だったのね!

感染者:覚えも早いし、才能があるんだな。

~~

クライデ:先生、僕がチェロ運ぶ!

エトヴィン伯爵:見つけたぞ!

湖だ……止まらぬ旋律、まさしくここだ!

アルトリア:この旋律……ただの噂じゃなかったのね……

エトヴィン伯爵:テントを張れ!私のマントも持ってこい!

憲兵隊:はっ

~~

侍従:エトヴィン様、この作品のような麗しいお姿で……

エトヴィン伯爵:作品などではない!「過去」だ!

あの日、巫王の暴政を打ち倒し女帝陛下から恩賞を受けた者の中でも、私が一番秀でた男だった!

あの頃の私の肉体、私の精神、私の気質こそが私の青春だったのだ……

私がこの地を浄化しさえすれば

すべて……あの時のすべてが……再び……!

フッフフッ

おい!何をボサっとしてる!

~~

エトヴィン伯爵:さっさと感染者に奥を調べさせろ!

感染者:お願いです……!殺さないでください!

子供:ママ……!

アルトリア:私が行きましょう。

クライデ:先生……

~~

アルトリア:駄目だよ、着いてきちゃ。

~~

クライデ:……あっ!この場所……前見たことある……

アルトリア:

かわいそうに、これが君の運命なのかしら?

クライデ:先生、僕死ぬの?

アルトリア:……

死はどんな人でも避けられないものなの。けどね、後悔しながら去っていく人もいれば、笑顔で後悔はないと言い切れる人もいるのよ。

この塔が君の運命だとしても、クライデ、たとえある日死や別れに直面したとしても……

~~

アルトリア:少なくとも、今ではないわ。

それに、今はみんなを助けることが出来るわよ。私の教えたことちゃんと覚えてる?

クライデ:うんっ!

エトヴィン伯爵:どういうことだ……?どうしてあやつらの返事が帰ってこないのだ……

来い貴様ら!奥を調べにいくぞ!

感染者:寒い……

暗くて、まったく先が見えない……

~~

感染者:ねぇ、後ろの人達いなくなってない?

感染者:道を間違えたんじゃ?

感染者:キャー!

感染者:なっなんなんだここは!

~~

感染者:なっなんなんだよこりゃ?!

憲兵隊:エトヴィン様!

エトヴィン伯爵:慌てるな!これは巫王のアーツの残滓に過ぎん!

奴らの……紋様を切り捨るだけのことだ!

~~

憲兵:あれは……、巫王がかつて使用していたアーツユニット!

あれさえ破壊すれば……!

憲兵隊:ちくしょう!

エトヴィン伯爵:私に続け!奴らを撃退しろ!

憲兵:「ギャー」「うわぁぁぁ!」「ギャッ……!」「たっ助けてくれ!」

エトヴィン伯爵:逃げるでない!

憲兵:うわぁぁぁあ!

~~

エトヴィン伯爵:させるか……

やらせはせんぞ!!

~~

女帝の声:尊敬なるエトヴィン卿。

エトヴィン伯爵:女帝の声!

女帝の声:よくぞ悪を除いてくれた、両陛下は貴方を待っておられます。

エトヴィン伯爵:女帝陛下……

陛下が再び私に恩寵を賜りくださったのか?!

~~

エトヴィン伯爵:女帝陛下!

?!

一体何が……どうして……?

そんな……そんな……!

~~

エトヴィン伯爵:嘘だ!!

アルトリア:……エトヴィン卿、どういたしました?

エトヴィン伯爵:うっ嘘だ……

私は全てを取り戻していたはずだ……肉体も精神も……。

アルトリア、あれは巫王の音楽か?それとも、貴様が演奏したものか?

アルトリア:違うわ。あれは遺されたアーツの残響、貴方の欲望が共鳴したに過ぎないわ。

イディオム、かつて巫王に抗った戦場だった場所、貴方はここで双子の女帝の決起の号令に応え、市民達を守ってきた。

 きっとあの時の貴方は、女帝からの恩寵、ひいては自身の魅力や栄光のことなんて微塵も考えてなかったのでしょうね。

~~

アルトリア:それが今や、貴方はかつて守ってきた人々を殺し傷つけているわ。

感染者:来るな!

アルトリア:あまつさえ、私利私欲のために貴方についてきてくれた憲兵までもこんな姿にしてしまっている。

エトヴィン伯爵:だがこれしか……私の望みを叶えるにはこれしかないのだ!

たとえ人の犠牲が必要だったとしても……

それがなんなのだ!?

~~

感染者:あっ!化物達が消えていく!

感染者:ねぇ、あそこから音色が……

~~

アルトリア:古今東西の英雄だろうと欲望には溺れるもの。そして今、その欲に貴方は溺れ、最早かつて討ち滅ぼした敵と同様の存在に成り下がってしまったわ。

終わりよ、エトヴィン卿。

もう何も響かないわ。

貴方の心に演奏する価値はない。

~~

感染者:さっき女帝の声を見たのよ!遺跡を封鎖しててね……

クライデ:先生……

感染者:君の先生ならもう行っちゃったぞ。

クライデ:えっ?

感染者:音楽家っていうのはみんな自由人なんだよ。

ああでも、そのチェロは君にあげるって言ってたぞ。

ところで、女帝の声はなんでこんなタイミング良く駆けつけてくれたんだ?

感染者:えっ知らないけど……

クライデ:……

カツンカツン

~~

クライデ:お爺さん?!

アルトリア:師匠、あなたのチェロはある子供にプレゼントしましたわ。

~~

アルトリア:あの子は……とても良い子でした。いつか再会するかもしれませんが、それが早く来ないことを願いたいものです。

謎の声:久しぶりだな、アルトリア。

アルトリア:来てたのね。

謎の声:女帝の声がイディオムに来た。遺跡に行ったのか?

アルトリア:そうよ

あなたが予想した通り巫王はとっくに死んだけど、彼のアーツの余韻は途絶えていなかったわ。

彼の魂は……まだ滅びていない。


THE END



注釈

 アルトリアとクライデがはじめて出会ったときクライデが石を「カツンカツン」とぶつけたのは憲兵達に見つからないようアルトリア達と連絡を取るため。アルトリアそれに対してチェロの音で答えようと返答している。(次ページで使用してるコマあり)
最後、お爺さんと再会した時も前ページで「カツンカツン」と音が鳴っており、おそらくお爺さんと取り決めた合図だったのだろう。

 アルトリアが最後、師の墓前に手向けたものは湖から彼女が持ってきた巫王のアーツユニットとなっている。(憲兵隊が発見していたもの)

上記二つの箇所は個人的に読み取りずらかったので注釈として入れることにした。

まとめ

 以前、この漫画の前編となる幼少期のアルトリアとフェデリコ(イグゼキュター)の登場する漫画も翻訳したので見ていただけると嬉しい。


  現状日本版では、アルトリアに関する情報が「吾れ先導者たらん」で名前のみ、「塵影に交わる残響」で???としての短時間の登場しかないため彼女のことがよく分からない人も多いと考え、weiboなどの情報も含めて(シナリオについては触れません)彼女の情報をまとめた記事を作ったのでこちらもよろしくお願いします。先日(10/29)公開されたweiboの紹介文や先行PVの翻訳も含みます。

 最後になりますが、翻訳はミスがあれば適宜修正していきます。何か質問や誤字脱字の報告、言いたいことがあればsivol(@sivol07)までよろしくお願いします。
感想いただければうれしいです。

謝辞

 前回と同じく、今回の翻訳でもチェックから訂正までおーちゃんさん(@oochan0803)にお手伝いしていただきました。ありがとうございました。


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