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グラボ搭載ファンレスPC


1. グラボ搭載ファンレスPCの利点

グラボ搭載のファンレスPCが選ばれる理由は、静音性が求められる多岐にわたる用途にあります。ゲームや映像編集、ディープラーニング、AI、オーディオ、そして快適なネットサーフィンなど、これらの用途では静かな環境が重要です。ファンレスのグラフィックボードは、この要求に応える理想的な解決策です。

通常のグラフィックボードには、セミファンレス機能が搭載されているものがありますが、負荷がかかるとGPUのファンが作動し、騒音を発生させることがあります。ファンレスのグラフィックボードは、この騒音を排除し、無音に近い環境を提供します。そのため、静音性を重視するユーザーにとって非常に魅力的な選択肢となります。

このようなファンレスのグラボは、特に音に敏感なユーザーや、音楽制作や音響編集などの音楽関連の作業を行うユーザーにとって重要です。静かな環境下での作業やエンターテイメントを求めるユーザーにとって、ファンレスのグラフィックボードは、ストレスなく快適な体験を提供します。

2. グラボ搭載ファンレスPCケースのおすすめ評価

2.1. Streacom SG10 おすすめ度◯
2.2. Monsterlabo Beast おすすめ度△
2.3. Turemetal UP10 おすすめ度✕

2.1.Streacom SG10

streacom sg10

利点:

  1. 強力な冷却能力

    • 大型ヒートシンクと自然対流冷却: 高性能なハードウェアでも効果的に冷却できる設計。特に、高負荷時でも安定した温度管理が可能。

  2. 高い拡張性

    • 広い内部スペース: 複数の拡張カードやハイエンドGPUを容易に搭載できる。追加のストレージや冷却システムも組み込みやすい。

  3. ビルドの柔軟性

    • 多様な構成に対応: ミドルレンジからハイエンドまで、様々なパーツを組み合わせて使用可能。将来的なアップグレードにも対応しやすい。

欠点:

  1. 大きなサイズ

    • 設置スペースが必要: 比較的大きいため、設置場所を確保する必要がある。特に、デスクや部屋のレイアウトによっては制約が生じることもある。

2.2. Monsterlabo Beast

monsterlabo Beast
  1. 優れた冷却性能

    • 大型ヒートシンク: 高性能なCPUやGPUを効率的に冷却し、温度管理が容易。特に、長時間の使用でも安定したパフォーマンスを維持できる。

欠点:

  1. 重さ

    • 取り扱いの難しさ: 重量があるため、移動や設置が困難。頻繁にPCを移動させる必要がある場合には不便。

  2. 拡張性の制約

    • 限られた内部スペース: コンパクトな設計のため、拡張カードや大型のパーツを取り付けるのが難しい。追加のストレージや高性能なグラフィックカードの導入に制約がある。

  3. サポート体制

    • サポートが十分でない場合があり、トラブル時の対応が遅れることがある。購入前にメーカーのサポート体制を確認することが重要。

2.3. Turemetal UP10

Turemetal UP10

利点:

  1. コンパクトなサイズ

    • 小型PC構築に適した設計: 場所を取らず、限られたスペースにもフィットするため、デスクや小さな部屋での使用に最適。

欠点:

  1. 冷却性能の限界

    • 高性能ハードウェアの冷却: 小型設計ゆえに、特に高性能なCPUやGPUを搭載した場合、冷却が追いつかない可能性がある。長時間の高負荷作業やゲームプレイでは、温度管理に注意が必要。

  2. 拡張性の制約

    • 限られた内部スペース: コンパクトなため、拡張カードや大型のパーツを取り付けるのが難しい。追加のストレージや大型GPUの導入に制約があり、将来的なアップグレードにも限界がある。

3. Monster Lab Beastを注文して組んでみた

Monsterlabo Beastを選んだ理由は、Streacom SG10発売前には最大の冷却性能を誇っていたためです。特にファンレス設計と独自の冷却システムに惹かれ、高性能なハードウェアを静音環境で使用できる点が魅力でした。

組み立ては順調に進み、大型のヒートシンクが効率的に熱を拡散し、ファンレスでも優れた冷却性能を実現している点が印象的でした。

3.1. 構成

Monsterlabo Beastに組み込んだPC構成の詳細は以下の通りです。ATX電源にファンがついているため、完全なファンレスではありませんが、全体として静音性は非常に高いです。

  • グラフィックボード:MSI GeForce RTX 4080 SUPER

  • マザーボード:MSI MPG Z790 CARBON WIFI II

  • CPU:Intel Core i7 13700KF

  • メモリ:G.SKILL F5-6000J3238G32GX2-TZ5S × 4

  • 電源ユニット:Corsair AX1600i

  • ストレージ:Corsair MP600 PRO 2TB M.2 NVMe PCIe × 2

  • 拡張カード:JCAT USBカード、JCATネットワークカード

3.2. 組み立て

この記事では、Beastのビルドプロセスの詳細が写真付きで紹介されており手順が解説されていますので、ご覧ください。

Beastを実際に組み立ててみると、いくつかの潜在的な問題点や特性に起因する組み立て上の課題が浮かび上がりました。特に、CPUとGPUのエバポレーターへの密着状況の確認が困難であることが挙げられます。また、ネジの締め具合が均等でないと、冷却性能が発揮できない可能性があります。過度に締め付けると、基板を損傷する恐れもあるため、慎重に取り扱う必要があります。

さらに、干渉やPCIEケーブルの取り回しによって、PCIEの拡張が困難になる問題も発生しています。このような問題に対処するためには、パーツの配置や配線の工夫が必要です。特に、PCIEの拡張カードを追加する場合は、空間の制約やケーブルの取り回しを考慮しながら慎重に作業を進める必要があります。

組み立て作業を行う際には、ビルドガイドや関連する情報を参考にしながら、注意深く作業を進めてください。これによって、効率的で安全な組み立てが実現し、最終的には安定した動作と優れたパフォーマンスを得ることができます。

グラフィックボード側面
マザーボード側面
ケーブル取り付け前後でもCPUがエバポレーターと密着しているか確認できない
動作確認用PCIEケーブルの関係でとんでもない配置に

3.3. パフォーマンス

アイドル状態(24時間放置後)

アイドル状態(24時間放置後)

CINEBENCH 2024 ベンチマーク結果

CINEBENCH 2024
  • GPU温度: 最大 78℃

  • DRAM温度: 最大 96℃

  • CPU温度: 最大 90℃

ベンチマーク中にPCがシャットダウンすることや、サーマルスロットリングによるCPUおよびGPUのパフォーマンス低下は確認されませんでした。

今回のCinebench 2024のベンチマーク結果では、システムの冷却性能が十分であることが示されました。特に、CPUおよびGPUの温度が高負荷時でも安定しており、パフォーマンスの持続性が確保されています。この結果から、長時間の高負荷作業やゲームプレイにおいても、安定したパフォーマンスを期待できることが分かりました。

また、メモリ温度がやや高めであったものの、動作に問題は見られませんでした。今後の対策として、追加の冷却装置の導入やエアフローの改善を検討する価値があるかもしれません。

全体として、今回のCinebench 2024ベンチマークはシステムの高い安定性とパフォーマンスを裏付ける結果となりました。

3.4. BeastファンレスPCケースまとめ

Monsterlabo Beastはビルドクオリティや冷却性能には満足していますが、いくつかの問題点が浮き彫りになりました。

製品の配送に関しては、注文から製品が届くまでに1年半以上もかかり、さらに不備があったサポートパーツの交換にも2ヶ月を要しました。メールでの問い合わせに対する返信も、催促しないと得られない状況であり、製品が本当に届くかどうかに不安を感じました。

さらに、公式Discordチャンネルでは、経営難により今後の製品提供やサポートが行われない可能性が示唆されています。これらの状況から、製品の納期やサポート体制には不透明さが見られるため、現時点ではお勧めできません

Beastは素晴らしい製品であり、その冷却性能や静音性は称賛に値します。しかし、製品の配送遅延やサポート体制の不透明さなど、ビルドプロセス全体を通じての問題点には改善が必要です。将来的には、製品とサポートがより信頼性の高いものとなることを期待しています。

4. グラボ搭載ファンレスPCを選択する上での注意点

  1. 将来のGPUの対応性:

    • GPUの基板レイアウトが変更された場合に、ファンレスPCが後続のGPUに対応できるかどうかは重要です。ニッチな需要の分野であるため、メーカーが製品のアップデートや対応を保証しているかを確認しましょう。

  2. メーカーの信頼性とサポート体制:

    • キックスターターや新興企業がプロジェクトを立ち上げても、経営難や資金繰りの問題で頓挫することがあります。信頼できるメーカーや長期的なサポート体制を持つ企業の製品を選ぶことが重要です。

  3. GPUの分解と保証:

    • 一部の例外を除いて、GPUの分解は保証対象外となります。そのため、自作PCを組んだ経験がある方が、可能な限り自分でのメンテナンスやアップグレードを行う準備が必要です。

  4. 過去のGPUモデルの検討:

    • 最新のGPUでなくても、過去のモデルでファンレスのものが販売されています。予算や必要なスペックに応じて、過去のモデルやミニPCなどの選択肢も考慮しましょう。

5. 余談: オーディオ用途におけるPCの利点

PCの利点は音楽や動画を楽しむだけでなく、インターネットやゲーム、そしてオーディオ関連のアプリケーションを利用することで、さまざまな環境での音楽体験を実現できます。特に、グラフィックボード搭載のファンレスPCは、静音性や性能といった利点があります。

また、音楽サブスクリプションサービスの利用や、Roonなどのオーディオ関連ソフトウェアを活用する際には、PCの柔軟性が大きなメリットとなります。複数のサービスに対応し、将来的な変化にも迅速に対応できるため、長期間にわたって使い続けることが可能です。

ただし、音質向上を求める場合には、専用のオーディオ機器やプレイヤーを検討するのも一つの方法です。特に、高品質な電源や回路を備えた製品は、音質面での優位性が期待できます。Taiko Audioの製品は、そのような要求に応える優れた選択肢となります。

結局のところ、音楽を楽しむ方法は個々人の好みやニーズによって異なります。音質よりも多様な環境での利便性を求めるのであれば、PCを利用することが最適です。それぞれの状況や嗜好に応じて、最適な選択を見つけることが大切ですね。

6. 参考文献