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細野晴臣「泰安洋行」の私的な思い出

いわゆるトロピカル3部作については、YMO写真集「OMIYAGE」で知ったので、3作同時に認識したはずだ。

生まれ育ったのは千葉県市川市中山で、自転車など使って遊ぶ範囲は中山~八幡辺りだったか。

中学1年で木更津に引っ越すこととなる。
当時知っていた大き目のレコード屋といえば、けいせいやわたの駅ビル京成百貨店に入っていた(と思う。もしかしたらJR本八幡のシャポーの可能性も…。)新星堂だった。
甘やかされた子供だったので、お正月にお年玉の数万円をもって木更津から件の新星堂までレコードのまとめ買いを何年か続けた。

新星堂がディストリビュートしていたクレプスキュールの12インチや、鈴木慶一(とムーンライダース)の火の玉ボーイなどもその年イチレコード行脚で購入した記憶がある。はっぴいえんどなんかもそうだったかも。ベスト盤「CITY」は間違いなくそうだ。棚からつかんだ記憶がある。残念ながら後に売ってしまいもう手元に残っていないけれど。

そして細野晴臣「泰安洋行」もそのレコード行脚で入手したものの一枚。
特別このレコードを欲していたわけではなく、どちらかというと「トロピカル・ダンディ」の雰囲気に惹かれていたのだけれど、店頭にあったのが「泰安洋行」だけだったという消極的な理由で購入した。

「トロピカル・ダンディ」も「はらいそ」も後に聴くのだけれど、結果的には「泰安洋行」の内容が一番出色だと思うし、肌に合うものだった。
YMO(2回目ワールドツアーの音が原体験)→泰安洋行といういささか突飛な遡り方ではあったけれど、初聴時でもとくに違和感もなく受け入れられた気がする。その時すでにNIAGARA VOXで大瀧詠一の「ナイアガラ・ムーン」など耳にしていたせいもあるかもしれない。違うかもしれない。

その時ハイサイおじさんは知っていたと思うのでRoochoo Gumboの沖縄音階や、Pom Pom 蒸気のブギウギなどキャッチーな部分にはわかりやすい惹かれた。インストゥルメンタル「泰安洋行」は、YMO的な面白さを感じていたんじゃないかと思う。

もしあの時店頭にあったのが「トロピカルダンディ」だったら…、あるいは「はらいそ」だったら…、結局は「泰安洋行」を聴くことになって、そして気に入るのだろうけれど、「泰安洋行」を聴く機会は案外遅くなっていたかもしれない。「もっと細野晴臣の作ったものを聴いてみよう」と思う入り口にはちょっと弱いんじゃないか、などと思う。

つくづく、まず手に入れたのが「泰安洋行」で本当に良かったと思うのだ。


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