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UN, ICJ, ICC (2)

国連(UN)に強力な司法機関がないことは、もっともっと各方面から責められてもよいことかと思われますけど、でも国連の司法機関は国連というものができた当初からあることはあります。最初から国連憲章にも盛り込まれている国連のメインの司法機関、それがICJ、International Court of Justice、日本語では「国際司法裁判所」です。

国連の広報ページは、ICJについてこう述べています:

「当裁判所は二つの役割を持つ。第一に、国家が裁判所に訴える法的な紛争を国際法に従って解決する( 裁判所の判決は関係当事国に対して拘束力を持ち、控訴は許されない)。第二に、国連システムの正式に認められた国連機関や専門機関に対して法律的問題についての勧告的意見を与える。その設立以来の裁判所の作業の80パーセントは係争事件で、これまで国際国境線や領土主権、国際人道法の違反、外交関係などに関する紛争に対して100件以上の判決を行った。また、与えた勧告的意見は30件近くに達する。」

ただし、そうやってICJが行う国家間の問題調停は、当事国が同意しないと発効しない。問題当事国の中にICJが行う調停や勧告に同意しない国があると、それらの決定は発効しない。また、ICJなど国連の上位機関における決定は、国連の立ち上げを創起した旧連合国側の一か国でも反対すれば、他の全員(国)が賛意を表していても有効化しない。

この、国連の常任理事国(中国、ロシア、フランス、イギリス、アメリカ合衆国)5カ国が持つ「拒否権」により、国連による反戦決議は成立しないことが多い。日本は、「非常任理事国」に選出される機会は多いが、「常任理事国」でない以上、過去にあまり重要な議決権を手中にした経験はなかったようだ。

なお、国連が提供する司法機関は、これまでの長年の間にときどきマイナーなバージョンアップをしていまして、中でもこれまででいちばん有意義なvupは、2002年における国際刑事裁判所(ICC, International Criminal Court)の立ち上げでしょう。ICJの場合は原告があくまでも「国家」でしたが、ICCにより、大量虐殺の戦争犯罪など、個人レベルの犯罪を裁けるようになりました。

このICCにより、さっそく、ウクライナの多くの子どもたちを誘拐した容疑でかのP氏が訴追されましたが、国連の非力まるだしで、その訴追はさっそく無視されています。

概して国連という場は、上記の常任理事国5か国が持つ拒否権を、そのもっとも分かりやすい核ないし例として、安易な「拒絶や無視」の文化に支配されています。そしてこのことが、国連の能力の限界として長年、国連の足を引っ張っています。

また、この、克服不可能な限界があるために、「国連の能力の進化」という面でも、その遅れが非常に目立ちます。

まず(1)として、各国は国連が提供する国連的な仕事(例: 劣悪な現場での給食サービス)に向けて、自国軍隊の一部や特定団体など自国民を、集中的かつ専門的に十分に訓練していません。「国連で仕事をするための人材」の教育育成がおろそかになり、そのために「国連職員ならではの負傷や戦死の形」という、本来なら防げたはずの職務被害が生じています。

それらは、戦いへの参加ではない戦時サービスでありながら、本物の戦闘員以上に職務提供者の命を危険にさらすことになっています。分かりやすい例で言うと、国連の仕事は防弾チョッキもらえないよぉ、などとなります。

次に(2)、今回のハマス vs.イスラエル防衛軍のケースで典型的に見られる錯誤ですが、元々テロリスト集団の生成と生長は特定国の国内問題です。ハマスは、パレスチナという国が抱えるテロリスト問題ですから、正しい筋としては対策活動の主人公はパレスチナ国家であるべきです。ところがこれ(パレスチナ国家の成熟と当事者能力の涵養)は、現状では遠い々々理想論の神棚に飾られているっきりです。イスラエルなどの反対により、国家としての十分な力を持った「パレスチナ国家」は、長年いろんな試みや取り組みがあったにもかかわらず、未だに絵に描いた餅に終わっています。

本当は、自国内のテロを自力で取り締まれる、国家としての成熟度の高い「パレスチナ国家」がぜひとも必要です。そのときのイスラエルの立場ですが、事態がそのように正常であれば、内部テロリスト退治はパレスチナ国家が主体性を持って行い、IDF(イスラエル防衛軍)はそれを手伝う、という形であるべきです。

なのになのに、目下のイスラエルは、パレスチナ人の独立国家というソリューションを完全に無視否定している。そしてパレスチナのテロリスト退治を、非当事者国の自軍だけで展開し、一般都市内で、子どもも含む一般市民レベルの暴挙を続けています。

これじゃあ、当然ながら、イスラエル〜ユダヤ人は憎まれ嫌われます。

(つづく)
(写真: ロイター)

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