黒髪とお別れしてきた

今日、先ほど美容室にて髪を染めてきた。初めてのカラー、何色が合うかも、どれくらい時間がかかるのかもわからない。不安と期待が入り乱れながらも美容室に予約を入れて、自宅から徒歩数分のサロンへ小雨の中足を運んだ。

そもそもなぜ髪を染めようと思ったのか。

学生時代、家族の遺伝で癖毛が強かった私は、定期的に縮毛矯正に通っていた。今も数ヶ月から半年に一回、癖が目立ってきたタイミングで薬をかけ続けている。それが蓄積していき、私の髪は相当なダメージを負っていた。トリートメントやオイルで多少のケアをしているとはいえ、その程度で誤魔化せるわけがなく、乾燥すれば髪は水分を失った枯れ草のようにパサパサになっていった。そんな状態の髪をこれ以上傷つけるわけにはいかない、そう思いカラーを諦め続けていたのだ。別に髪を染めていなくたっておしゃれはできるし、何か不自由があるわけでもないので最近まで気にしてこなかったのだが、アラサーを迎えて以降目を背けられない現実に直面した。

白髪が目立つ。

ふと鏡を見ると、黒髪の中にきらきら輝く毛が見つかった。見つけたショックに凹みながら抜くも、探せば探すほどそれらは何本も現れる。職場のトイレの洗面所の鏡に主張する一本の毛を見つけたときは、服を裏返しに着ていたかのような恥ずかしさを覚えた。

この重大な悩みに直面すると、改めて黒髪のメリットについて考えさせられた。職場には髪色の規定があるので染めていなければ引っ掛かることもないし、染めていなければ髪が必要以上に痛む心配もない。ただ、この年齢を迎えて改めて鏡で自分の顔をまじまじと見ると、もともと童顔なのもあり、いつまでも芋臭さが抜けきらないというか、垢抜けないというか、幼さが残り続けている気がした。別にそれはそれでいいのかもしれないが、この白髪の増殖を機に、カラーリングの決心がついて今に至る。

美容室はここ数年通っているお店にしたが、カラーは初めてということで美容師さんが丁寧に説明をしてくれた。職場のことも考えてあまり明るくない色に、と告げたのだがやたらピンク系やら青系やら冒険させようと勧めてくるので、美容師さんと私の主張を妥協させた色に落ち着いた。カラーの知識がない私には明るい茶髪か暗い茶髪しかわからないので、カラー表を見せられたときはめちゃくちゃ困惑した。

初めてだからと何度も薬を塗り、洗い流し、乾かすと、そこには今までの芋はいなかった。

「あ、垢抜けてる~~!!!」

と、内心超はしゃぎまくっているのを微塵も顔に出さず、どうですか?と聞く美容師さんに、あー自然でいいですねと当たり障りのない感想をこぼし、美容室を後にした。

垢抜けたというか、一皮剥けたというか、見覚えのない自分にマスクの下でにやつきながら帰路を歩く。白髪の悩みが生んだ転機。なんだったら学生時代からもっと冒険していてよかったかも、と後悔さえ覚えた日だった。


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