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四川省なのに担々麺が見当たらない!?

四川飯店公式noteで最初に取り上げるテーマは「担々麺」です。担々麺と言えば、麻婆豆腐と並んで、四川飯店を代表するメニューのひとつです。まずは本場四川省における担々麺について3代目、陳建太郎に話を聞いてみました。

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ー建太郎さんは2005年から、料理修業で四川省に滞在していたんですよね。日本人の私からすると、四川省の人たちは頻繁に担々麺や麻婆豆腐を食べているようなイメージを持っていますが、実際はどうでしたか。

建太郎:僕も完全にそう思っていました。ところが、四川省に足を踏み入れてみると、麻婆豆腐も担々麺も、その文字を見かけることはほとんどありませんでした。これにはびっくりしましたね〜。僕にとっては子供の頃から馴染みのある四川料理と言えば、麻婆豆腐に担々麺ですから、いきなり肩透かしを食らった気分です。

ーそうなんですね!ではレストランではどんな料理を出していたんでしょうか。

建太郎:僕が訪れた2005年は北京オリンピックよりも前のことで、街も経済も急速に発展を遂げている最中でした。そういう状況では、料理の世界でも次から次へと新しいものを生み出そうという空気があって、そういう新しい料理は「新派四川料理」と呼ばれていました。四川料理の新潮流ということですね。ですから、ある意味、伝統的な麻婆豆腐とか担々麺なんかは、あまり注目されていなかったという背景もあります。

ー日本でも以前は、創作料理とかデザイナーズレストランなんていうものがありましたけれど、活気のあるときというのは伝統的なものへの注目は下がるのかもしれませんね。ちなみに、高級レストランはそうだとして、一般庶民の食べ物としてはどうだったのでしょうか。

建太郎:四川省は麺文化の街です。なので街中には麺料理を出す「麺館」と呼ばれる小さなお店が溢れています。中国では「小吃」といって、饅頭などのように小腹が空いたら食べるような軽食がたくさんありますが、麺もその代表です。現地ではみなさん、よく麺料理を食べますね。

ー日本のラーメンとはやはりだいぶ違いますか。

建太郎:四川省ではスープのない「和え麺」がメジャーです。日本でも最近は「まぜそば」みたいなものが、少しずつ増えてきましたね。

ー四川飯店の初代、陳建民が汁そば好きな日本人に合わせて、担々麺にもスープを入れるようにしたというエピソードがあります。四川省では担々麺も汁なしが基本なんですね。

建太郎:先程「担々麺という文字を見かけなかった」という話をしました。実際、本当にそうなんです。向こうでよく見かける和え麺は「雑醤麺」と言います。カタカナ表記だと「ザージャンメン」ですかね。

ーザージャンメン、、、初めて聞きました。それは一体、どんなものですか。

建太郎:茹でた麺に、醤油やラー油、花椒などのタレをかけて、豚ひき肉を甜麺醤などで炒めた肉味噌を乗せるのが一般的です。

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↑四川省の「雑醤麺」(ザージャンメン)

ーん?それって、、、汁なし担々麺とは違うんですか。

建太郎:そこが難しいところなんです。もちろん作り方とかレシピは店によって違います。でも、基本的に使う調味料とか味付けは大体同じです。四川省の重慶という街では、似たような味の和え麺がありますが、重慶ではそれを「小麺」と呼んでいます。

ーということは、似たような味の和え麺だけれど呼び名は色々あって、「(汁なし)担々麺」だったり「小麺」だったりする。その中では「雑醤麺」というのが、もっともメジャーな呼ばれ方である、ということですかね。

建太郎:僕も一体何が違うんだろうと疑問に思って、修業先の師匠に聞いたんですよ。そうしたら、「よく知らん」と言われてしまいました(笑)。厳密には違いがあるのかもしれませんが、僕は2年半くらい向こうにいましたけれども、明確な差はよくわかりませんでしたね。

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↑師匠と食べる「重慶小麺」

ー四川省の麺料理でも流行りのようなものはあるんでしょうか。

建太郎:元々スープの入った麺はありましたけれど、四川省でも汁のある担々麺を見かけることが昔より増えた気がしますね。祖父の陳建民が日本人の口に合うようにとつくったスープたっぷりの担々麺が、逆輸入のような形で四川省の料理にも影響を与えたように感じています。料理というのは常に色々な影響を与えたり、受けたりしながら変化・進化していくものですよね。そういう意味では、これからも新しい麺料理や麺文化は生まれてくるでしょうね。僕たちとしても、そういうものを生み出していくチャレンジをしていきたいです。【終】

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↑四川省の「汁あり担々麺」

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↑初代、陳建民の故郷である宜宾という街の名物「宜宾燃面」

<お知らせ>

四川飯店のオンラインストアにて「正宗担々麺」(汁なし担々麺)を販売しています。販売期間は2021年6月28日まで、限定100食です。お店の味をそのままご家庭でお楽しみいただけます。ぜひお買い求めください。

※追記
上記商品ですが、完売いたしました。近日中にまた販売予定ですので、今後ともよろしくお願いいたします。

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