等身大だから強い。ミレニアル世代の新リーダーEmily Weiss

SIS・シス発起人の栗原優子と梶原奈美子です。SISは、”Sisterhood(共に助け合い成長する女性たち)”をキーワードにしたミレニアル世代のグループで、「アメリカ女性リーダーから学ぶ人生デザイン」勉強会を運営しています。

今回取り上げたのは、ミレニアルズやGen Zに人気のコスメブランドGlossierのCEO、Emilly Weiss(エミリーワイス)さん!Glossierは、2010年に創業し、現在の時価総額は$1.2BN(約1240億円)のユニコーン企業で、Emilyはその創業者です。

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引用:Wikipedia "Emily Weiss"

これまで、カマラハリスさん、RBGと、女性リーダーのレジェンドな方々を取り上げてきましたが、今回のエミリーさんは、1985年生まれ・35歳とSISの私たちと世代が近く、スタートアップ起業家。今回は、これまでとは種類の違った学びや共感をご紹介していきます!

Glossierは既存概念を破壊した

まずは、まだ日本に上陸していないGlossierの凄さを皆さんに知ってほしいと思います。SISの梶原が、初めて生でその凄さを確認したのは、2018年にGlossierがオープンした、サンフランシスコのポップアップ店。ある日、何気なく住宅街を歩いていたら、同じファッション(ルルレモン的な)の空気感が漂う、お洒落な女の子たちの行列が。異様な(買うぞ、という)熱量を感じます。

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撮影:SIS 梶原奈美子

これは、一大事!慌ててググってみると、噂のGlossierのポップアップではないですか!このハッピー感がこの並んでいる人から溢れ出ている・・・!

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プロダクトも、可愛い。

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引用:BUSINESS INSIDERIns "7 of our favorite products from Glossier, the internet's favorite beauty startup"

早速、私もその列に混じって、店内に入ってみると、これはすごい。お店が、カフェテーマになっていて可愛すぎる・・・!確か、ここはしがない普通の街のコーヒー屋さんだったはず。それが、一変、キラキラピンクで一貫した世界観があり、しかも店員さんが可愛くてお友達みたい!ピンクのつなぎですよ!!つ・な・ぎ!日本のデパートの制服に慣れきった感覚からしてありえない!!そして、その店員さんは気さくに私に話しかけてくれるんです・・・。

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引用:RUE DAILY "GLOSSIER’S SAN FRANCISCO POP-UP IS A TASTY TREAT"

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撮影:SIS 梶原奈美子

店員さん「Hey、名前は何ていうの?」「どれが気になってるの?それ、可愛いよね!」

私「アジア人の私には、どの色がいいんでしょうか?」

店員さん「そういう決まりとか考え方はないわ、どの色もそれぞれの良さがあるの!だから、Namikoが好きなのをつけたらいいのよ!」「(いくつか試してみると)いいねー、その紫はちょっとガーリーで驚きがあるわ!ゴールドはクールな感じね!」「私も実は紫使っているのよー。Namikoと全然違うでしょう!つける人で魅力が変わるのよ

衝撃でした。正解がない、その人らしい美しさをこの会社は売っているんだ・・・。お店も、商品も、接客も全てがこれまでの”正解”がある美容の既存概念とは全く作りが違う。おそらく、GlossierをこれまでのBeautyブランドビジネスをしてきた業界のメガネで見ると、チープで子供っぽいブランドのように見えるのではないかと思います。しかし、このパラダイムシフトを体現したGlossierがユーザーの心を圧倒的に捉えることを体感し、既存概念のモノサシで図ることのできない、創ることもできないブランドだと理解しました。だって、自分が好きなものが一番いい、自分ありのままが美しいって、そんな風に言ってくれるBeautyブランドってないと思いませんか。みんな、シミやソバカスを消したり、一生懸命大きな目にしたり、トレンドを追ったり、あれしろこれしろという、ある意味非現実的なゴールを目指すための指示型Beautyブランドに疲れている。そんな時代の気分、自分自身のありのままの美しさを表現し、ブランドとフラットに付き合いたい新時代のユーザーそのものを熱狂的に掴んだGlossierはカルトブランドと呼ばれているのです。

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引用:VANITY FAIR "How Emily Weiss’s Glossier Grew From Millennial Catnip to Billion-Dollar Juggernaut"

私の体験は店舗でしたが、GlossierはD2C(Direct to Consumer)と言われる、オンラインブランドです。ここからはその起業ストーリーをご紹介。

SISの皆で聞いたNPR How I built thisのEmily Weissのインタビューに、彼女の起業ストーリーやビジネスに対する考え方について網羅的にまとまっています。 

新しい世代の観察力をそのままビジネスにした

エミリーは1985年にコネチカット州に生まれ育ち、15歳からNYのラルフローレンのインターンとして働き始めました。その後、大学時代にTeen Vogueで"Super Intern"として仕事ぶりが評判に。ちなみに、このインターンをするときは、どうしてもやりたい仕事だからといって、熱狂的に追いかけて掴んだ仕事だそうです。

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引用:BUSINESS INSIDER "How the Teen Vogue 'super intern' on The Hills became the CEO of a billion-dollar beauty company"

数年仕事をしているうちに、彼女は一つ気付きました。ファッション業界がインターネット、ブログの波によって変化してきているのです。当時、Vogueはファッションの権威として、トレンドセッターの役割をはたしていましたが、一般個人のファッションブログが流行り始め、ストリートファッション=雑誌の中じゃないリアルなファッションに世間が注目しだしたのです。

そこで、エミリーはチャンスの波を感じます

メイクはファッション雑誌の中では洋服の妹的な位置付け。でも、ファッションブログみたいに、これからはメイクもリアルや個性が重要になるんじゃないか
引用:NPR "HOW I BUILT THIS WITH GUY RAZ Live Episode! Glossier: Emily Weiss"

そこで、2010年9月に、いろんな人のリアルなメイク事情を特集するブログ、”Into the Gloss” を開始。エミリー曰く、投資はいいカメラ10万円だけなんだとか。粘り強く有名人、一般人と幅広く取材したそのリアルな実態は、多くのミレニアルズ読者の熱狂的な支持を得、2012年冒頭には月間20万UVを達成。この間、フルタイムの仕事と並行して行っていたため、朝は4時起き、休日も返上という生活だったそう!ちなみに、人気だったのはこのThe Top Shelfという洗面台の中身を覗くという企画。

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引用:Into The Gloss 'The Top Shelf Archives'

ブログが軌道に乗り、エミリーはブログをフルタイムの仕事とするべく独立。そして、彼女はあることに気付きます。

(既存のプレイヤーは)誰も顧客の話なんて聞いてなかったし、顧客の生活も知らなかったのよ。大手企業は、自社がいかに顧客のニーズを知っているかを語るけれど、私がブログを通じてリアルな生活者の実態を知っていくにつれ、誰も本当のユーザーの生活やニーズを知らない、という思いが強くなった。
引用:NPR "HOW I BUILT THIS WITH GUY RAZ Live Episode! Glossier: Emily Weiss"

彼女には、ブログを通じて、圧倒的な数のユーザーとリアルなメイクやコスメについて語り合える基盤がありました。そこで、上記に気づいた彼女は本当にリアルなユーザーの生活実態に基づいた化粧品をつくりたいと決意するのです。

しかし、彼女は壁にぶち当たります。そう、お金・・・。化粧品を製造するのに(ざっくり)一億円くらいが必要と試算し、資金調達に回りますが、ベンチャーキャピタルはどこも冷たい風。「僕たちはテクノロジー企業に投資をしているから、化粧品はちょっと」というものから、「妻に聞いてみるよ」等々、プロフェッショナルと思えない言葉で返されることもあったそうです。しかし、Emilyは出会います!彼女に投資を決めたのは、Forerunner Venturesの創業パートナー、Kirsten Greenさん。ユニコーン企業となったWalby Parkerなどの数々のD2Cビジネスに投資し、Timesの世界で最も影響力を与える100人にも選ばれた実績豊富な女性投資家です。

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引用:Wikipedia "Kirsten Green"

資金調達後は、ひたすらユーザーと対話を繰り返しながら、商品を開発、そしてロンチ。2014年、Glossierという美容・コスメブランドが立ち上がりました。その後、Glossierは、2019年に時価総額1000億円を超え、ユニコーン企業となりました。

ドラマのようなサクセスストーリー。そんなエミリーワイスについて私たちが学んだ・共感したポイントを紹介していきます!

SIS's Point①溢れる自己肯定感

SISがまず注目したのは、どんな写真からも溢れ出す、彼女のヘルシーな自己肯定感!周りにいる人もハッピーにするような、ナチュラルな自信を持っているように感じます。

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引用:Forbes "How Glossier's Emily Weiss Is Using The Internet To Build A Beauty Brand For Generation Instagram"

例えば、彼女のインスタグラムを見てみてください。
自分以外の写真が多いものの、エミリーが写る写真はものすごくナチュラル!婚約発表の写真もスッピン!それをさらけ出せるのも、素敵。

自然体で自己肯定感が強いエミリーは、物事を観察したままに捉えること、それをビジネスに落とし込むことに長けているようです。

"Beauty is not that competitive in my mind" 
美容は競争じゃない
。私たちは毎日いろんなブランドの化粧品を使っている。ポーチに入っている色んな口紅をGlossierだけに集約することに興味はない。これは(会議室ではよく出るアイディアだけど)現実的ではなくて、1つのブランドが、全てのニーズを満たせる訳はないの。私がやりたいのは、人々の美容の会話の一部になれるか、むしろ会話を促すことができるか。引用:NPR "HOW I BUILT THIS WITH GUY RAZ Live Episode! Glossier: Emily Weiss"

会社勤めをしていると、「自社ブランドだけで顧客の生活を満たすよう目指す(ゴリ押し)」「自社ブランド以外は存在価値がないように扱う」「競合ブランドを社内で褒めることができない」そんなことはありませんか?そして、ユーザーもそういった企業の意向を敏感に感じ取り、押し売りマーケティングに嫌悪感を抱いている時代です。

しかし、現実は違います。エミリーが言う通り、色んなブランドがあるから、ユーザーの生活は楽しいわけですね。口紅一つのブランドからしか選べない社会とか、嫌ですよね、笑。彼女は、その信条をInto the Glossにも反映しており、自社ブランドを褒め称えるメディアではなく、今でも様々なブランドをフラットに取り上げていますなぜなら、それが楽しいから。このスタンスと気分が、今の時代のユーザーの信頼を勝ち得ている源泉にもなっています。

もう一つ。Kirstenとの対談で語っていたことで印象的だったことがあります。実は、Glossierはここまで大きくなりながらも、実はAmazonでの販売は一切行っていません。

対談で司会者がアマゾンでは売らないのか?と聞いたとき、即座にNOと答えました。

アマゾンの興味深い点は、消費者ニーズの大きな一つである「買う行為」を解決したわけです。しかし、その過程において、「ショッピング体験」を殺してしまった、とも言えるでしょう。アマゾンのプロダクトは圧倒的に強く、誰も彼らを倒すことはできないでしょう。素晴らしい企業です。しかし、全てにおいてアマゾンで毎回買い物することは、生活者の感覚において成立しないのではないかと考えます。アマゾンの買い物は、あくまでショッピング体験の一つでしかないのですから。
引用:Beauty and the Beat with Emily Weiss (Glossier) and Kirsten Green (Forerunner Ventures) | Disrupt SF

そして、こう続けます。

例えば、自分のベストなマスカラの選定基準として、”速い”とか”最も安い”というような、アマゾンのようなプラットフォームでの買い物する際の基準のようなことだけを挙げた女性は私の周りにはいません。生活者が感情的な結びつきが強い商品を購入するとき、ファッションや化粧品を買うとき、そういう風に人は買わないものなのです。このようなイーコマースの先頭を走る企業は、効率的で、幅の聞く商品を提案してくるでしょう。しかし、本当にユーザーが生活で試みていることで、欲していることは、コネクション(繋がり)の幅なのです。
引用:Beauty and the Beat with Emily Weiss (Glossier) and Kirsten Green (Forerunner Ventures) | Disrupt SF

彼女が説いている、生活者中心の商品のあり方、買い物の仕方、生活の仕方。ここには、大企業に経済や生活が飲み込まれることなく、個人が個人として尊重される世界観が感じられます。それは、紛れもなく、生活とビジネスの多様性ではないかと、私達は考えます。

生活者にチョイスを与えること。

彼女は、自分の生活者としての素直な感覚や、ユーザーを観察したままのことを、既存のビジネスの成功と呼ばれるモデルとは違った形でビジネスに落とし込み、さらにユーザーを掴み取ることに成功しています。

ここには、彼女の揺るぎない自信が根幹に根ざしています。自分が信じる道を突き進み、他人と競争していません

彼女のヘルシーな自己肯定感は、彼女の「分からないことは分からない」と堂々と表明しサポートを得る、というスタンスにも現れています。

わたしは自分がやっていることがさっぱり分からなかった。私は28歳で、MBAを持っていなくて、美大にいっていたの。
引用:NPR "HOW I BUILT THIS WITH GUY RAZ Live Episode! Glossier: Emily Weiss"

実は、Glossierを立ち上げるため資金調達をするとき、実は、VC(ベンチャーキャピタル)って何?という状態だったそう。

でも、とにかくよかったのは、好奇心が旺盛だったこと。だから、これから立ち上げのためにやらなきゃいけない全てのことをホワイトボードに書き出しました。ウェブサイト、科学者、オフィススペース・・・
引用:NPR "HOW I BUILT THIS WITH GUY RAZ Live Episode! Glossier: Emily Weiss"

分からないことを隠さない。でも必要なことは好奇心を持ってちゃんと勉強し、周囲から学ぶ。そういうエミリーの姿勢が、仲間を惹き付けるのかもしれません。

また、リーダーとしてValueやVisionがしっかり定義できていることにも注目です。例えば、“Into the Gloss”の魅力として、 セレブリティではなくもっと身近な存在や個人を取り上げていることだとエミリーは言います。

影響力の民主化 - すなわち個人が他の個人に影響力を与える力というのは、(インターネットが可能にした)実に魅了されるようなアイディアで、これこそがInto the Glossが浸透した理由の1つと考えています。
引用:NPR "HOW I BUILT THIS WITH GUY RAZ Live Episode! Glossier: Emily Weiss"

びしっと語ってくれる様子が、たまらなくかっこいいですね。

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SIS's Point②投資家Kirsten Green とのシスターフッド

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引用:Pitchbook "The changing face of beauty brands in an Instagram-obsessed world"

Glossierを立ち上げるために、エミリーがVCから資金調達(当初目標一億円)をしようとするものの、11人の投資家に立て続けに断られたそう。前述しましたが、エミリーは、CEOである自身がビジネスの経験がない女性であり、かつBeauty分野の起業であるという、シリコンバレーの一般的な成功パターンとは多くの点で異なっていたことによる苦労だったと語っています。

多くの投資というのは実はパターン認識によるもので、そもそもVCの仕事というのは急成長をし、次世代のFacebookのような企業になりうるスタートアップに賭けることです。なので、私のようなビジネススクールの学位があるわけでもない女性のCEOに対し、その人のスタートアップに賭けますよ、というのは難しかったでしょうね。引用:NPR "HOW I BUILT THIS WITH GUY RAZ Live Episode! Glossier: Emily Weiss"

そして、男性多数のVC業界において、女性起業家が美容分野での起業をするということに関する苦労がとてもリアルに伝わってくるのが、こちらのエピソード。

私とCOOで投資家を訪問し、商品を手渡ししていくというのはいろんな意味でとても疲れるプロセスだった。様々な会社で、男性ばかりがいる会議室に通されて、化粧品の商品サンプルを渡すと、「サンプル、いいね!僕の妻に渡して、彼女がどう思うか聞いてみるよ」と言われてしまう。
この現象をこう説明してみましょう。例えば、金融テクノロジーの会社が私のところにやってきて、事業計画をピッチをします。でも、私はその会社のピッチを私の夫に説明してもらおうとは思いません。私は、その事業計画を理解しようと努め、そして「あなたのプロダクトを見せて。ちゃんと使って、その価値を理解したいわ。どうやって顧客はこのプロダクトを使っているの?」というような会話を起業家としたいわ。そして、私の経験からも、ベストな投資家や周りの人は、そういうアプローチで私の会社と接してきた。引用:NPR "HOW I BUILT THIS WITH GUY RAZ Live Episode! Glossier: Emily Weiss"

こうして苦労の11連敗の後の12人目、ついに、Forerunner VenturesのKirsten Green と出会えたことで、彼女の努力は報われました。Kirstenの多大なる助けもあって、Glossierはユニコーンの道を爆速で駆け抜けていくのです。

ここで、まさにEmilyとGlossierの成功の立役者の一人であるKirstenについても少しご紹介したいと思います。

Kirsten自身もキャピタリストとして典型的なキャリアを歩んできたわけではなく、ビジネススクールには行かず、自身のVCを設立するまではVCで働いたことはありませんでした。でも彼女はNYの金融街ウォールストリートでリテール業界のアナリストとして10年以上を過ごしたことで、リテールの世界に対する比類ないインサイトを持つようになったのです。

Kirstenのポートフォリオのうち約40%が女性が経営するスタートアップだと彼女は言います"We never invest in a male, we never invest in a female, we just invest in the right entrepreneur"「私たちは男性、女性という性別には投資をしていません。ただ自分たちが正しいと信じる起業家に投資するだけです。」(引用:Forerunner Ventures' Kirsten Green: 'We need to have more women founders'

Kirstenは投資家として成功していますが、投資家の世界自体もまた女性が少ない世界です。All Raiseという女性の投資家・起業家エコシステム、シスターフッドの強化を目指すアメリカのNon Profitによると、

・$25M以上の米国VCにおける意思決定者のたった12%が女性
・68%の米国VCは、女性のPartner(役員で決裁者)がいない
引用:All Raise

なのです。Kiristenは、この状況に対し、"There's really no good excuse for that kind of disparity - この圧倒的に格差を露呈した状況おいて、本当に説明できる言い訳なんてない"と言い、VCやスタートアップ業界における男女差を埋めていくことが1つの自分の責任であるともインタビューで語っています。

この問題は、会社が単に女性で代表するようなパートナー(役員)がいればいいという話ではない。本質的には、そのマイノリティの声を聞き、広め、そして社会に昇華していくことなのです。
引用:Forerunner Ventures' Kirsten Green: 'We need to have more women founders'

「自分が成功したからそれでいい」で終わらせずに、ダイバーシティ問題を自分の責任と考えて行動する彼女の強さに惹かれます。

多様性を体現するEmilyとKirstenは、ビジネスパートナーとして共に成長を遂げて行きます。現にKirstenからの初めての投資やその後の継続的なサポートにより、Glossierの躍進劇は加速します。Kirstenとしても、Glossierに最初に投資し成長をリードした投資家として、一層の注目を集めることになるのです。

前にご紹介したインタビューや対談など様々な場面で、EmilyがKirstenのインサイトを賞賛し、KirstenがEmilyのビジネスのパワーを語る様子を見聞きするにつけ、2人が単に投資家と起業家として以上に、互いを尊敬し合い、サポートし合っている様子が伝わってきます。

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引用:Emily Weiss and Kirsten Green will join us on the Main Stage at TC Disrupt SF

ミレニアル起業家として、
世代の感性をインターネットで具現化し、
美の民主化に取り組むEmily Weiss

リテールの未来に選球眼を持ち、
起業家の本質的な可能性に賭けるKirsten

私たちは、力を与え合う投資家Kirstenと起業家エミリーとの関係に、SISのコアテーマでもあるシスターフッドを強く感じます。そして、自分たちもこのように互いに力を与え合う関係を築いて行きたいと考えます。

SIS’s Point③世代感覚を信じ、やり切る力

現代的でキラキラしたイメージのEmily。一つ一つの写真が本当に素敵!インフルエンサーの力も駆使したプロモーションの仕方も洗練されていて、世代感覚にピッタリ。でも、このnoteをご覧の皆さんは経験を持って知っているはずです。過去の前例や成功基準を覆し、新たな概念を世の中で成功させることの難しさを・・・。

SISは、Emilyの強みは「世代感覚をタイムリーに掴み、即座に実践しきったこと」にあると考えます。

Glossierのベースとなった”Into the Gloss”は、エミリーがVogueで働いていたときに開始したもの。①でも紹介したとおり、「多くの人が美容に関する最高の情報を求めているけれど、何が最高かは人によって随分と違う」ということに気づいて、様々な人の美容に関する秘密やルーティーンをインタビューして取り上げるブログとしてVogue在籍中に開始しました。素早い実行力。

当時はエミリー自身もブログも無名だったこともあり、インタビューの申し出は8割方は断られたそう。それでもエミリーは「私には強い思いがある」といってインタビューのお願いをし続けたことで、次第に影響力を持つミレニアルズのセレブリティのインタビューが増え、注目が集まるようになりました。

Vogueをやめてブログに仕事を絞るのに躊躇しなかった?とインタビューで聞かれたエミリーは、

「実際そうしない選択肢なんて存在しなかった。直感に従うなんてものではなく、既にすごくうまく回っていて、物事がすごく変わろうとしていることに、ただ従っただけ。タイミングがそう告げていた」
引用:NPR "HOW I BUILT THIS WITH GUY RAZ Live Episode! Glossier: Emily Weiss"

タイミングを読む力は往々にして軽視されます。あと一年待つとOOが揃う、云々。ですが、起業が社会に新しい風を吹き込む行為だとすると、物事が変わるタイミングや社会の動きというのは、本当は軽視すべきでない大きなピースです。Emilyがこの波に乗る行為に躊躇いなく踏み出すことができたのは、変化の兆しが小さかった頃から、すでにサービスを実践し、論理的には数字を、感覚的には熱量を、実績として明らかにみることができていたからなのでしょう。「そうしない選択肢なんて存在しなかった」という印象的な発言にも表れているように、”Into the Gloss”を信念を持って開始し、多大なる力を注いで運営してきた自分だから見えている世界があり、自分しかやれる人がいない、という揺るぎない自信こそが、Emilyに躊躇なくタイミングを掴ませたのだと考えます。

エミリーは、ランコムやロレアルのような巨大グローバル企業がいる中で、新しいBeauty Companyをスタートアップとして成功することは、”Literally all the odds are against you - 成功確率は全くもって自分に不利な状況"と笑います。

しかし、従来のBeauty業界が大企業や権威のトップダウン方式で、流通営業先との関係性が中心になっていることを、エミリーはInto the Gloss時代の経験からデータとして知っていました。だからこそ、エミリーから「Beauty業界をボトムアップで作ろう」という発想が生まれ、それが「Beautyを通じて会話や繋がりを生み出す」ことを大切にしている巨大カルトブランドGlossierの始まりとなったのです。

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引用:VANITY FAIR "How Emily Weiss’s Glossier Grew From Millennial Catnip to Billion-Dollar Juggernaut"

誰に頼まれたわけではない。自分の素直な世代感覚や観察眼を信じて、まず実践してみる。そして、そこから自分が得た学びや世の中に対する疑問から自分がやるべきことを発見し、やり切る。好奇心と実行力によって積み重なった、なぜ自分がこの事業をやるのかというWHYの明確さが、それを達成する彼女のしなやかなGritに繋がっていると感じます。

「私の才能は、忘れやすいこと。すぐ忘れて進み続けるの。誰かがノーといった時、試したことがうまくいかなかったときに、ただ続ける能力。レジリエンスね(resiliency)。大事なのは、「とにかく気にしないで進み続けることよ(resiliency to just shake it off and keep going)」
引用:NPR "HOW I BUILT THIS WITH GUY RAZ Live Episode! Glossier: Emily Weiss"

カマラハリスやRBGに共通していたのは、彼女達の使命感やgritでした。スマートにユニコーンへの道を駆け上がったように見えるEmilyですが、彼女の新たな世代感覚の実現になくてはならなかったのは、カマラハリス やRBGのように人々の声に裏付けされた彼女のビジョンと、やり切る力=Gritだったことは、忘れてはならないと感じます。

2021年も、SISは世界の女性リーダーから学び、自分らしい人生デザインのヒントを発信していきます

2020年は、世界中でコロナが猛威をふるい、多くの人が自分の生き方やあり方を見直す時間をもたれたのではないかと感じます。

私たちSISも、自分たちの世代感覚を信じ、実践し、皆さんと「自分らしく輝く人生をデザインする」ということを一緒に実現できればと思います。

2020年、SISのnoteを読んでいただきありがとうございました!!

2021年初回となる1月の回は、Lean Inで有名なSheryl Sandbergさんを予定しています!シリコンバレーで彼女と接したことのあるSISメンバーからの知見も交えつつ、アメリカの新しい女性像を切り開く彼女に迫りたいと考えています。

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引用:TIME "Don't Hate Her Because She's Successful" Mar. 18, 2013





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