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映画「ロスト・フライト」感想

 映画館に行くと上映前に他の映画の宣伝をやってますよね、この映画はそれを見て面白そう! と思ったんですよ。

 その後に情報を集めることなく観に行ってきたんです、結論から言うととても面白かった! 大満足の鑑賞体験でした。

 原題は「PLANE」、飛行機ってことかな? 映画の内容的にはこっちの方が合っているような気がしますが、カタカナで「プレーン」と書くと味付けのことかと思われてしまいそうですからねえ、かと言って「飛行機」っていうのもいまいちですかねえ。

 主演はジェラルド・バトラー、鑑賞中はどこかで見た俳優さんだなあと思っていたのですが、「300(スリーハンドレッド)」の人かー。
 機長という役どころなんですが飛行機の操縦だけじゃなく乗客を助けるために奮闘するんです。
 この主人公がとても良かったです。さすがはハリウッドスターですね、絵的にこの人の顔面アップが多いんですが、カッコいいからこそ成立するのでしょうか。

 主要人物である護送中の殺人犯役はマイク・コルター。知らない俳優さんでしたがこの人も良かったなあ、一癖も二癖もある殺人犯を好演していました。

あらすじ

 新年初のフライトに臨むトランス機長、だが悪天候のため機体の電子系が故障しフィリピンの離島に不時着することになる。
 そこは反政府組織が支配する無法地帯だった、身代金目的で囚われてしまった乗客たちを助けるため、護送中だった殺人犯ガスパールと協力して無謀な戦いに挑む。

 わかりやすいストーリーですね、アクション映画はこれでいいんですよ!

 ではポイントを挙げていきましょう。

漂うB級感

 これはいわゆる超大作ではありません、飛行機の不時着シーンはフルCGですがそこまで綺麗な映像とは思いませんでした。
 ストーリーの深みもありません、危険な島から脱出するだけの物語ですからね。だけどアクション映画に難解なストーリーなど必要ないんですよ、お金のかかった爆発シーンもありませんし、なんとなくチープな雰囲気が漂ってくるんです。
 面白い映画に美麗なCGも大爆発も必要ないんですねえ、観ているときは映画の世界に入り込めました、これは監督の手腕なのでしょう。

緊迫感のある不時着シーン

 前述したように旅客機は美麗とは言えないCGです、機内のシーンはおそらくカメラを揺らして撮っているんでしょうけど俳優さんの演技で臨場感がある場面に仕上がっています。
 なるほどこうやれば低予算でも緊迫感があるシーンを撮れるんですねえ、観ているときは手に汗を握りました。

反政府組織の無法者ぶり

 本作に登場する反政府組織は理想も思想も無く、ひたすら無法な連中です。外国人を誘拐しては身代金を要求し、払わなければ無残に殺害する血も涙もない悪者なんです。
 彼らがなぜ反政府運動をやっているかなどの無駄な掘り下げは一切ありません、ただただ悪いやつらという感じです。
 これですよ、これこそアクション映画における悪役のあるべき姿ですよ!

緊迫のアクションシーン!

 主人公は元空軍のパイロット、殺人犯ガスパールは元外人部隊ということで戦闘力が高い設定です。こういうところがハリウッドという感じなのですが彼らの動きがそれっぽいんですよ! おそらくちゃんとした訓練をしているんでしょうけど、邦画だと軍人や自衛官役の俳優が素人丸出しの動きをしたりしますからね、こういうもので映画世界の説得力が生まれるんですよ。
 特に航空会社が送り込む傭兵たちが凄く訓練された動きでしたね、反政府組織の連中の無秩序な動きとの対比がよくわかりました。
 この傭兵の一人がかっこよくて目が釘づけになっていました、髭もじゃの白人さんなんだけど顔も動きもかっこよかったんだなあ! まさに実写版ソリッドスネークという感じでした、脇役の一人だから名前もわかんないけど他の映画にも出てるのかなあ?

 では採点にいきましょう。

総合評価

・ストーリー 50点
 前述したように物語は単純明快です、わかりやすい代わりに深みはありません。
 登場人物の掘り下げはほとんどありません、殺人犯ガスパールが誰を殺して捕まったのかもわかりませんし、他の乗客たちのこともまったく描写されないのです。
 反政府組織のこともよくわかりませんし航空会社が雇う傭兵たちのことも詳しく説明されません。
 ストーリーの本筋に関係ない情報は出来るだけ削ぎ落そうという感じでしたね、その分物語に集中できました。

・ビジュアル 70点
 CGは安っぽいですしアクションシーンに派手さもありません、だけど緊迫感が伝わってくるんだなあ!
 絵面的には地味なシーンが多いのですが、とにかく説得力があるんですよ。反政府組織が支配する島ですから大きな町が無いのも当然ですし、ほぼ無人島のようなロケーションもピッタリでした。
 お金をかけずに面白い映画を撮ろうという制作陣の努力が実を結んだのですね。

・音楽 70点
 これまでに何度も「緊迫感」という言葉を使いましたが、この映画のテーマはまさにそれだと思うんですよ。
 この映画の音楽は特に印象に残るBGMはありませんが、緊迫感を際立たせるような使い方が随所にされていました。
 主題歌が無いのも潔くて良いですね、私は以前から映画に歌は無くてもいいと思っていましたからね。

・キャラクター 70点
 各登場人物の掘り下げはありませんから深みもありません、主役級の2人でさえほとんど描写されないのです。
 だけどアクション映画にそんなものは必要ないんですよ、最低限の描写だけで話は進んでいきます。
 邦画にありがちな「セリフでいろんなことを説明しようとする」シーンはありません、劇中で起こる出来事に対応する姿を見せることで登場人物を描こうとするのです。
 こういうところにハリウッドとの差を感じますね、やたらと長セリフをぶち込みたがる日本の監督たちはこういう作品を観て学んでほしいものです。

・総合評価 75点
 期待せずに観たのが良かったのかもしれませんが、とても楽しめました。

 ストーリー的な余韻はありません、だけどアクション映画にそんなものを求めていませんからね、鑑賞後の満足度は高かったですよ。

 歴史に残る傑作だとは言えないかもしれませんが、良作であることは間違いないでしょう、107分と短めなのも良いですね。

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