見出し画像

ミッドナイトゴスペル第4話考察〜許しは精神的な筋トレ

第4話でクランシーは
本当は快楽主義の惑星に行くはずだったのに
第3話に登場した猫の軍艦に弾かれて
地獄のような惑星に到着してしまう。

そこでクランシーに絡む悪魔男を倒した女性が
今回のゲスト、トゥルーディ・グッドマンだ。

マインドフルネス提唱者の心理学者で
瞑想と心理療法の2つの分野を専攻。
ケンブリッジ仏教協会の禅教師をしていた。

また瞑想絡みの人か〜と思いGoogleで検索したが
この人については詳しくは出てこなかった。

第4話のテーマは
許しと孤独、瞑想と傾聴
と言う感じだ。

さっそく考察していく。


ーーーーーここからネタバレ有ーーーーー


許しとは精神的な筋トレである

トゥルーディははじめにこう語る。

「怒りは感じるわよ。往往にして最善策は、許すことよ。自分の心が解放される。恨みや怒りや悪意を手放せるわ。」

それに対してクランシーが視聴者にもわかりやすく噛み砕いて話す。

「精神的な懸垂の棒だね。トレーナーが僕に懸垂させようとして、音を上げるとやり方を教えると言う。でも無理だとおもった。最初はできなかったし、するとトレーナーは何か紐を取り出して僕につけ始めたんだ。すると軽く、補助をくれて、数週間で懸垂に成功し解放された。許しは懸垂の棒だね。見た時にはできないと感じる。

許し(赦し)とはキリスト教における最重要概念だと思う。
キリストと十字架は愛と赦しの象徴だ。
許しは過去への執着からの解放と愛をもたらす。

クランシーが許しを懸垂で例えているように
許しは精神的な筋トレともいえる。
何度もなんども自分の怒りや憎しみに向き合い
その感情を消化していく。

自分も何度か経験があるが
許せない出来事に執着しなくなるとはいえ
起こってしまった事については
なかなか忘れられないものだ。

また、許しにもレベルがあるだろう。
誰かに悪口を言われることから
親族まるごと殺されてしまうことまで。
もっと悲惨な状況もあると思う。

悪口程度なら精神的な懸垂で済むかもしれないが
親族の誰かが殺されてしまったらどうだろう。
いきなりベンチプレス200kg持ち上げるのはムリだ。
そんなの放り出して犯人をヤったほうがはやい。

だからトゥルーディは先ほどの語りの後にこうも言っている。

時にはそれが最善策。だからって奴らに負わされた傷に、一生悩まされる必要はない。許しは厄介よ。」

そしてこのセリフが
第4話のクライマックスの伏線になっている。


カウンセラー「腹が減ったらウチに来い!」

孤独についてトゥルーディは言う。

「私は独りぼっちだった。きっと他の人も仲間が、欲しいはずだと思ったのよ。集まる場が必要。許しやマインドフルネスや、愛と同じ。1人では成り立たない。自分が孤独なら他の人も孤独なの。孤独な人を探せばいい。

そうしてトゥルーディは瞑想のグループを立ち上げた
最初は1人だったが徐々に育っていったという。

それに対してクランシーは

君は本当に特別な人だ。自分が孤独だったときはただ横になり、人生を忘れようとしていた。」

孤独も厄介な感情だ。孤独にハマると
1人の時はもちろん、誰かといたって孤独を感じることができる。
トゥルーディみたいな解決ができる人は特別な人だ。
孤独を感じてすぐ他の人を頼れる人は孤独な人ではない。

クランシーのように寝てみたり
自分の場合はなんでもいいから趣味に没頭して
なるべく孤独を感じないように過ごす。

そうして年を重ねるうちに
あまり孤独を意識することはなくなる。
孤独のセンサーが麻痺してしまうのかもしれない。

そのあとの2人のやりとりは印象的だ。

トゥルーディ「心を決めると、世界はそのように動くものね。
クランシー「自分の目標が定まるのを世界が待っていたかのようだよね。
(RADWIMPSの君と羊と青ってこんな歌詞だったよな確か。)

トゥルーディ「自分にとって大切なものに、エネルギーを集中させるの。つまり孤独な時には、仲間を探すのが大事ね。空腹時には食べ物。

これは第3話でいうところの魔術だ。
このようにミッドナイトゴスペルでは各話が
綿密にリンクし合っている。

もよおしたらトイレを意識するように
腹が減ったら飯を意識するように
孤独を感じたら会いたい人を意識して連絡を取ればいい。

いかんせんメンタルがやられてる時は
会いたい人に連絡するハードルが高かったりするので
声かけやすい家族でもカウンセラーでも
とにかく誰かと話すことが大事だ。


傾聴は他人に向ける瞑想

話はクランシーが聞き手としての才能がない
という話題に移っていく。

「僕はパーティーで話し続けた。おしゃべりロボットみたいでさ。口をコントロールできなくて、話すのをやめられなかった。

トゥルーディの回答はこうだ。

「人の話に耳を傾けるには、少しの瞑想が必要になるわ。人の話を聞いている時の、自分の心の動きを探る。別のことを考える自分にどのように気づくのか。

「耳を傾けるということは、自分の体や周りにある命の音を聞くことで、今を生きることよ。耳を澄ますのよ。自分の心とか直観にね。直観に反するといつも失敗するわ。敏感になれば気づけるわ。即席のカルマにね。ただし瞬間的なものだから、ぼんやりしてると、見過ごす。深く耳を傾けると幸せに生きられる。」

傾聴と瞑想とは本質的に似ている部分があると思う。
いかに雑念に気付いて、それを追いかけないか。
一度浮かんでしまった考えを辿っているうちに
相手の話はどこかへ行ってしまう。

エゴを抑えてニュートラルであるほど
相手の話はスムーズに入ってくる。
その後にクランシーが

「聞くことは宇宙との交信だ。ワオって感じ。呼吸すると吸ったもの全てとつながると言うよね。耳を傾けるのは呼吸のあり方と同じだ。

と言っている。
耳を傾けるのはただ相手の言葉を聞くだけでなく
相手の表情や仕草、思考や感情を受け取る
他人に対して行う瞑想と言えるかもしれない。


自分を許し惑星全滅。ミッドナイトゴスペル節炸裂

最後にトゥルーディの恋人を殺した男
ジャムロールが登場するのだが
2人の戦闘シーンがめちゃめちゃカオスで…

男の顔面はいきなりもげるし
BGMはアンダーザシーっぽいし
両手に剣持ってけつ丸出しでヘッドスピンするし
かなりヤバイ。

ここで今回のミッドナイトゴスペル節が炸裂するんだけど
トゥルーディは「許しは厄介なものー!」って叫びながら
ジャムロールを殺すんだよね。でジャムロールから取り出した
死んだ恋人をポーションで復活させて熱い口づけを交わす。

で、その殺したジャムロールのけつから
緑のもやが惑星中に立ち込めて
トゥルーディと恋人含めた惑星生物を全て溶かしちゃう。

結局、トゥルーディは恋人を殺したジャムロールのことを許せなかった。

「時にはそれが最善策。だからって奴らに負わされた傷に、一生悩まされる必要はない。許しは厄介よ。」

このセリフが伏線になっていたのだ。

つまり、許しには2パターンあると思う。
恨んだ相手を許すか、自分の感情を許すかだ。
今回トゥルーディは後者を選び、宿敵を殺害した。

許しに関する一般論では、
自分の怒りや憎しみの感情を一旦許してあげることで
恨んだ相手のことも許すことができるようになると言われる。

ただ大事な人が殺されるとなると…自分にはわからない。
トゥルーディは復讐という選択肢を選んだ代償として
惑星生物は皆溶かされてしまう。

理論上、復讐の連鎖が続いて行けば
全ての命はなくなってしまうだろう。
今回の結末はそのメタファーなのかもしれない。


溶ける前に無事帰還したクランシーだが
本来快楽の星にいくはずだったのに
地獄のような星に到着してしまった。
そんなクランシーにシミュレータが一言

「このアバターでは全ての快楽を体験します。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?