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吹奏楽と成果主義

先日、公民の授業をしながら「そうか、こういう問題は部活動に大きく問題になるよね」ということを見つけ、調べてみて考えれば考えるほど納得できる部分も多かったので。

年功賃金から成果主義へ

まず、日本の企業は昔から年功賃金を取り入れてきました。しかし世の中がグローバル化し、労働の評価には海外から成果主義(結果を出すほど賃金・出世面で評価される)の考え方が取り入れられるようになりました。成果主義はある意味では分かりやすく、ある意味では問題ありの制度です。

成果主義を取り入れるメリット

①「評価が公平である」
頑張れば頑張った分だけ評価されます。

②「労働意欲の向上」
頑張れば評価されるのだから当然頑張ります。

③「優秀な人材が集まりやすい」
成果主義はイコール能力主義です。自分の能力に自信がある人にはぴったりですが、そんな人ばかりではありません。自信のない人は最初からこういう企業を避けがちになり、結果的に意欲の高い人材が集まってくると言えるでしょう。

しかし当然成果主義にはデメリットもあります。

成果主義を取り入れるデメリット

①「手柄争いの足の引っ張り合いが起きる」
評価を受けるために、これは自分の手柄だとアピールする必要が出てきて、そのためライバルの足を引っ張ります。

②「雰囲気の悪化」
成果主義ではどうしても個人プレーに走りがち。そうした人が複数出てくると当然雰囲気は悪化します。

③「勝ち組と負け組みの固定化」
高いモチベーションを持って努力を惜しまない人、能力の高い人はどんどん上へ行けます。意欲が希薄な人、努力家でない人、能力の劣っている人は、負け組としての道を歩むしかなくなるのです。

吹奏楽部で、と考えると大問題!

今僕が言ってる吹奏楽部においての部員の成果主義とは、コンクールや大会で勝ちたいと思うことがダメとかそういうことではなく、「自分自身の成果=自分だけが目立つ」と定義しています。

個人が自分の成果を求める(いかに自分が目立てるか)があまり、パートの実績よりも個人の成果達成のみを優先させて、部全体の利益を損ねる場合があります。
全体で取り組む作業・練習に非協力的になったり、足を引っ張り合うなどの問題が起こり、結果として内部統制に支障をきたします。

また成果主義では、短期的に成果が求められるため、基礎練習など長期の試行錯誤が求められる分野では、確実に成果を残せる取り組みだけが優先され、習得に時間がかかるなどのリスクを伴うような取り組みや積極的な挑戦が行われなくなることもあると考えます。

成果主義では、たとえそれがどれだけ小さくても、成果(自分が目立つ)を確実に達成するほうが成果主義者にとっては評価が高くなるので、部員全体もリスクを取らず、確実なノルマ達成とミスの撲滅だけが練習の目的となってしまい、画期的なプロジェクトなどが作られにくくなります。結果、創造的な状態は失われ、部全体の雰囲気が固定化されていきます。

日本では受け入れられにくい成果主義

成果主義自体は日本の企業では受け入れられにくく、しばしば失敗に終わることがあります。理由は先ほど述べたようなデメリットがあるからですが、ここで考えたいのは「年功賃金」です。

年功賃金とは年齢が上がるほど賃金も上昇する給与体系です。年功賃金は当初、理にかなわない不合理な制度だと僕は批判していましたが、最近はそうでもないのではと思うようになりました。

あるべき形は人物主義

日本の企業はずっと昔から成果主義ではなく「人物主義」を取り入れてきました。即座に生み出せる成果よりも、その人そのものをいかに成果を生み出せる人として育成し、評価するかという考え方です。その育成の過程にゆとりを持たせ、人物そのものの成長を待ちながら成熟された成果を生み出すことを目的としています。

仮に成果主義を今後も取り入れて、成果に応じての評価や処遇を徹底した場合、吹奏楽部で言えば当然年齢や入部年次が逆転した昇格が起こります。「昨日までの後輩が今日からの先輩」と考えてみればわかりやすいと思います。

成果主義者が成果を正当化するために使う「上手いか下手か」が評価の基準であるならば、ではある日後輩が上達したとして、自分の能力を超えた場合、後輩だろうが同期だろうがなんだろうが上手いと評価された人に従い、その人の成果(その人が目立つ)のために、裏方に回らなくてはならなくなります。それが受け入れられないのであれば、既に成果主義者は矛盾し、論理破綻してます。

ですから、そういう価値観を見直し、成果主義から人物主義へと見守る余裕が必要になってくるのかなって、思いました。自分の所属する楽団で自分が目立つことよりも、自分の所属する楽団そのものの成長を自分の成果と捉え、そのためには地道な世話と対話と信頼関係が必要であるということを突き詰めていけるようなそんなバンドでありたいなぁと、年末に考えました。

長く述べすぎたわ。(´Д` )

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