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ルールを知らないオーナメント

眠りから覚めると、腕に強い痛みを感じた。
見るとひもで大木に縛り付けられているようだ。
足場はなく全体重を両手で支えているので、ひもが手首に食い込む。
(なぜ俺はこんなところにいるんだ?)
星ひとつ見えず、辺りは真っ暗だ。足元は闇に溶け込み何も見えない。
かなりの高さのようだ。俺はパニックになった。

「助けてくれぇ!」

「しーッ!」

近くから声が聞こえた。誰かいるらしい。俺は少しだけホッとして聞いた。

「おい、何で俺たちはこんなことになっているんだ?」
「新入りか。何にも知らないんだな」
「何を?」
「人間の前では、動くべからず、しゃべるべからず、だ」
「人間?」
「創造主だよ」

すると、突然空が明るくなり、天から声が聞こえてきた。
「メリークリスマス!」

俺の周りには、光る玉やお菓子、そしてスノーマンやテディーベアなどが吊り下げられていた。
巨大な手が俺をつかむ。そして獰猛そうな顔を近づけて言った。

「ママ、このジンジャーブレッドマン、食べていい?」


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