明石花火歩道橋圧死事件について考える

1. 自社は明石営業所があるからということもあるが、警備関係者として衝撃的だった2001年7月21日に起きた明石花火大会における歩道橋圧死事件について考えておく必要がある。

これは、花火大会終了後、大蔵海岸と朝霧駅の間にある国道2号線上の歩道橋の海岸よりの南端で花火見物していた見物客が北側の駅に向かおうとしたところ、朝霧駅から、駅に向かおうとていた観客と歩道橋上でぶつかり、群衆なだれが発生し、11人が死傷し、222人が死傷した事件。

この事件で犠牲になったある子供は顔の原型と留めていなかったという。それだけ凄まじい事件だった。

ちなみに群衆なだれとは、周囲から押される圧力がバランスしているところに、何らかの原因で、群衆の中に空きスペースができると、バランスが崩れて人が倒れ込み、連鎖的に転倒が発生する現象。
一方方向に倒れる将棋倒しは人口密度5人/平方m程度で発生するのに対し、群衆なだれの場合は10人/平方m以上で発生する。

2.(1)この事件では、駅から大蔵海岸にかけて、見物客の通行を一方通行や分断通行をする等して歩道橋上の人口密度が高くならないように規制をかけなかった警備の在り方が問われた。

現にこの花火大会を取り仕切っていた警備業者の現場責任者は警察のこのイベントの警備責任者とともに業務上過失致死傷罪で起訴され、実刑判決を受けている。

この事件が兵庫県内で発生したということもあり、いろんなところで話を伺う場面が多い。

これは確かに取り仕切っていた警備業者が1番悪いが、その当時、どれだけ警備業者が問題点を指摘しても、それを監督する警察の担当者がまるで相手にしなかったという背景があったという。

警備計画書も以前のカウントダウンのイベントのものを使い古したものでまるで実効性がない。

関係者全員が計画の妥当性を検討するのがめんどくさく、なあなあで済まそうとした悪しき慣行が蔓延っていたのであろうと思う。

(2)こんな状況ではどの業者が担当しても事件は起きる時には起きてしまったであろう。まるでロシアンルーレットの世界。

自分が受けた指導教育責任者講習を担当していたある講師が所属する会社の担当者なんかは、それになんともいえない不安を感じたらしく、打ち合わせをブッチしたという。結果、刑事犯にならずに済んだ。

普通に考えると、ブッチする行動は社会人失格だが、結果的にその非礼が自分の会社の身を助けたとおっしゃっていたことが印象的だった。

(3)事件後、警察がその姿勢を一気に改めて、警備業者の警備計画書の妥当性も含め、しっかりと対処するようになったという。

やはり役所は何か起こらないとまともに動こうとしない傾向があるようだ。

3.(1)このようにイベント警備には把握しづらい群衆の動静を読んだ上で、担当する現場責任者が警備態勢を計画し、本番中も臨機応変に対処しなければいけないという難しさがある。

自社もたまにイベント警備をすることもある。それだけにこの事件は他人事とは思えなかった。

この事件は事故を起こさないために人の流れをうまく規制する警備計画の大切さとともに、イベントの規模や会場の複雑さその他の状況が自分たちでは手に負えないと判断した場合は、断る勇気も必要だと教えてくれる。

(2)企業の目的は存続すること。存続して初めて従業員の生活もお得意様の安全・安心も守る事ができる。

一時の勇み足で無理筋のイベントを引き受けることは、そういった自社の利害関係者だけでなく、そのイベントの主催者やユーザーの方々にも迷惑をかけかねない。

あと今、主催者側の中には警備員の人手不足や最低賃金値上げに伴う人件費高騰に伴う警備料金値上げをいやがるあまり、すべて自前でやってしまおうと考えているところがある。でもそれはやめた方がいい。

考えた上で提案してくださることは大変有り難い。でもそれを通り越して自前でやろうとする事は人の生き死にかかわる仕事に素人が簡単に首を突っ込むのと同じ。
それは無謀だと思う。

4.(1)でも主催者側が自前で警備をすることを検討せざるをえない程、今警備員自体の数も全国的に不足しているのも事実。

そういうこともあり、2020年の東京オリンピックの警備を担当するセコム・アルソックは人数あわせのため、全国の協力会社に参加要請するだろう。うちもセコムさんの協力会社なので、要請は来ると思う。

でもそんな寄せ集めの集団を上手くまとめあげられるだけの警備計画が作れるのか正直心配。

それを引き受けるかどうか。おそらくは来たとしても人数合わせの要員だとは思う。
でもその計画自体が厳しいものだった場合は、うちの隊員を守るためにも慎重にいかざるをえないと思う。

(2)普段は見えないだけでなく、仕事ぶりが優秀であればあるほど事件化しない。
その重要性が認識されるのは事件が起きて責任を問われる事態になんるのが警備という仕事。

この縁の下の力持ちとして見えないところで頑張る自社の警備員の方々を守るが自分の役割。

そういう意味でこの明石花火歩道橋圧死事件は今後の自社の警備活動を考える上で大変意義深いものであると感じた。


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