任せると言う事

本物の警備を提供するには従業員の業務の質の向上を図る必要がある。そのためには従業員のモチベーションをアップさせる必要がある。

それに関してアメリカの臨床心理学者ハーズバーグが唱えた二要因論というものがある。

それは従業員の職務満足に関して、待遇、賃金、労働条件といった「衛生要因」と責任や昇格、回りからの承認といった「動機付け要因」があり、前者は従業員の不満足要因の解消にはなるが満足要因にはならず、後者は従業員の満足要因になる。ゆえに従業員のモチベーションをアップさせるには衛生要因をケアするだけでは足りず、職務充実を促進させ動機付け要因をアップさせることが肝要だ、という旨の理論である。

ウチの会社も少しずつではあるが、その理論を実践している。その対象のうちの1人は自分より若く、警備員歴は遥かに長いのだが、現場責任者としての経験は皆無だった。

彼は現場責任者に必要とされる対応力や文章力に欠けてはいるのだが、会社に対する忠誠度が高く、なにより仕事に対する真摯さが他の隊員と比べて突出していた。これは会社にとっては今の時代ものすごく貴重な存在といえる。なので彼を現場責任者に育てようと決めた。

具体的には彼を新たな部門の責任者代理という形で現場責任者に抜擢するため、月給を警備マイスター制度的には例外にあたる形で副隊長レベルまであげて「衛生要因」をケアし、実際に自分や会長が行って来たシフト表の作成や隊員の指導・教育、報連相の指示といった権限を少しづつ謙譲していくことで職務充実を促進し、「動機付け要因」をアップさせる方向で話を進めている。

彼の対応力や文章力の不足は責任者としての経験や勉強をしていただくことで克服してむらうつもりだ。実際、彼もやる気になっているようだ。

それでも正直怖くないと言えば嘘になるが、失敗も含めて実際に責任ある職務を任せることが彼をやる気にさせるだけでなく、かなり有効な教育にもなるし、それこそが、「人」を使って問題を図る、つまりは経営するということなのだと思う。


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