正常性バイアスが警備業に及ぼす影響
1. 社会心理学の中で正常性バイアスと呼ばれるものがある。
正常性バイアスとは災害や犯罪などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の範囲内の出来事と捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「今回は大丈夫」、「まだ大丈夫」などと過小評価していまい、逃げ後れの原因となる人間の心理のこと。
このバイアスは滅多に起こらない異常事態というものに対して、ストレスなく日常を送るために発達した人間の心理なのだが、これが時に致命傷になる。
2. これが端的に現れたのが、東日本大震災である。
この心理によって地震の後の津波被害が拡大されただけでなく、原発事故も、この心理が大きく影響したと言われる。
この地震による津波被害が原発に及ぼすリスクに関し、専門家の間からその危険性が度々言われていたものの、国や東電はそれを無視する形で開発を決定し、押し進めてしまった。
つまり、発生による被害の大きさが予想されても、その起きる確率や頻度が小さいと人は判断すれば、事業運営の観点から費用対効果の意識が働く。
これも一種の正常性バイアスだと思われる。
3. 同じ事は警備業に関しても言える。
例えば、このブログで度々ふれた明石歩道橋圧死事件もそう。
当時行われていた明石の花火大会の会場から最寄りの朝霧駅との間に国道2号線が通っていて、上記2カ所を行き来するには事実上、歩道橋を歩く必要があった。
とすると、そこを適性に規制しないと何らかの被害が想定される可能性があったにもかかわらず、いままでそういった被害例がほとんどない、むしろ、暴走族対策の方が重要だと言う事で、そこの部分に警備員が配置されなかった。
これはあまり起こる可能性がないもののために警備員を配置すればお金がかかってしまう。それよりも警備の目的を暴走族対策に振り向けた方が実効性がある。
その観点で言えば、少し前に行われた年越しカウントダウンイベントの警備計画書で十分だろうという発想になったのであろう。
これも一種の正常性バイアスである。
4. この件からも分かるように、警備業本来の仕事が発揮される場面というのは、ゼロではないが限られてくる。
だから依頼者に正常バイアスが働き、コスト削減の対象になってしまう傾向がある。
そうなると、警備業者としても、十分な対策ができなくなる。
だからこの仕事には一定規模以上の施設の警備員は配置義務や適性価格保護のための最低価格維持制度といった何らかの政治・行政的なサポートが必要だと思うのである。
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