全社一丸となるために

いい悪いは別にして社長と従業員やお客様とでは見ているものが違う。これは宿命的なものだと思う。

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吉牛でお馴染み吉野屋ホールディングスの2月期の決算は純損益が60億円の赤字となった。

原因は牛肉等の原材料費、人件費の高騰と説明されている。

それについていろんな意見があるが、その中で有力な意見の一つに「メニューや業態を増やしすぎたのではないか。牛丼一筋でいくべきではないのか。」というものがある。

自分も基本的には同じ意見だった。

やはり吉牛といえば牛丼。すき家や松屋と比べても特に味付けの点で牛丼の質は高いと思う。
あのあっさりしているのにしっかりとした味付けは他では真似できないと思う。

それにメニューや業態を増やすと、それにまつわる仕入れや人・教育のコストもかかり、しかも在庫もより多く抱えてしまうことになる。
そういったことを考えると、牛丼一筋でいった方がいいのではないかと思っていた。

でも安部会長は経済学者の伊藤元重氏との対談集「吉野屋で経済入門」の中で、アジア、特に中国が近年の経済発展の影響で牛肉を食する層が増えており、サプライヤーから以前のようにいい条件で牛肉を購入できなくなっている。
このトレンドは変わらないだろう。だから、牛丼をメインとしながらリスクヘッジのために第2,第3の主力商品を生み出さなくてはいけない、という旨のことをおっしゃっていた。

つまり、安部会長は牛肉の価格高騰は一時的なものでなく長期に及ぶので、牛丼一筋的なビジネスモデルは今後は成り立たないと考えているのだろう。

この安部会長の経営判断が正しいかどうかは飲食や牛丼業界のど素人の自分には分からない。


でも、株主や従業員、それに自分も含めた数多くのお客様の突き上げにさらされる経営者の苦悩は少しはイメージできる。
それは自分も小さな会社とはいえ、経営者だから。

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近年、よく経営者目線の従業員の育成が叫ばれる。

でも、ニュースやデータや様々な識者の意見によって中長期の業界の流れを見て判断する経営陣と目の前の業務や出来事を重視する従業員やお客様とでは、依って立つ視点自体がちがう。

そして厄介なのは、そのことについて分かっているのに、社長は経営が分かっていないと批判する経営陣が登場しがちなところ。

社長は孤独な生き物と言われる所以はそこにある。

でもそれでは、変化に対応できる組織は作るのは厳しい。

やはり、お互いが歩み寄る姿勢が必要なのではないかと思う。

具体的には理念の共有が今ほど求められている時代はないと思う。

そういう意味では自分は2代目社長ということで周りに気を使ってしまったせいか、徹底できなかった。
説明も不足していたと思う。

今後は事あるごとに隊長会議や取引先との各種の集まりの中で従業員や利害関係者に対し、説明をより徹底していきたい。

それが全社一丸となる環境を作り、自社の将来を切り開くことにつながるのだから。

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