収穫

取り敢えず全員、自分の名前が書いてある襖を調べ終えた。
 
それ以外の襖には手を触れてないし、名前も書いてない。

俺は皆にさっきの本と写真を見せると、写ってる人達は8人のうち少なくとも誰か1人と知り合いであり、ほとんどの人が最近会えてないか亡くなっていたということがわかった。

1人ずつ名前を聞いていくと、写ってた人の名前は以下の通りだ。

殊文 鈴花

東 葉月

夜迷川 愛莉 
夜迷川  憂莉(この2人は同じ写真に写ってた)

前島 美月

視同仁  飛馬

福田  薫

アスター・インテグラ

厭 雪子

俺はこの中で、1人知っている名前があった。

厭 雪子、、、俺の母親の名前だ。

何年も連絡をとっていないし会っていない。

他の人たちも、そのような感じらしい。

ほかの人たちの襖はというと、次の部屋への道を見つけた人が1人(レウさん)、俺と同じく資料らしきものが置いてあった人が俺を含め3人(俺、らなちゃん、ミシャくん)、分厚い一枚板の何かが入った皮のケースがあった人は残りの4人(メルさん、ミヅキさん、ユキトさん、蜜花ちゃん)


まず、資料らしきものを見せあった。

らなちゃんの見つけた資料は青いノートのようなもので、中には俺たちのプロフィールが詳細に示された履歴書のようなものがあった。取り敢えずひとの履歴書を見るのは失礼だと思い、自分のを見てみる。他の人たちも自分の履歴書を確認し始めた。

えっと、おれのはっと。
「厭翠
25歳、男性。身長143cm。
夏葉原の女装メイド喫茶勤務。
経歴、、、○○県立○○小学校→県立第一中学校→県立凪澤北高校。(高卒)
身体能力、高
頭脳、やや低
友人たちのゲーム実況などのネットでの活動の裏方をしている。
性格、人前ではムードメーカーかつおちゃらけているが、一方的に責められると暴力を振るうなど、短気な一面がある。
酒には強く、ヘビースモーカーでは無いもののタバコを吸う。
オシャレには興味が無く、服も仕事用の服と部屋着二着、外着二着程しか持っていない。
出身は関西の港町。そのため関西弁で話すことが多い。
父親は翠が小学生の時に死んでおり、母親は事情があり彼を育てることができなくなったのと、親戚から引き取りを拒否された為、児童保護施設で18歳まで過ごしていた。そのような経緯から、名字を嫌悪している。」


、、、なげーな、おい。ようここまで調べられたなぁ。これができてしまうのだから現代技術ってのは恐ろしい。

割りとホントのことばっか書いてあったなぁ。なんでここまで知っとるんや?まぁええ。どうせ長生きする気もないし、どうせなら安らかに死にたいからこの場にいる俺にとって、個人情報を調べられていたことなんざ恐ろしくもない。むしろ、俺が恐ろしいのはこのくそみたいな世界で生きていくことだ。

俺たちは法の奴隷じゃないんだよ。

なくなったものはもう戻らないし、時間は巻戻らない。こうするしか無かったのになんで何も知らねぇ奴らにあれこれ決められなきゃならないんだよ

ほんとに牢屋に入るべきは、あの男だったのになぁ!!



「、、くん、翠くん!」

誰かに声をかけられて飛び上がりそうになった。横ではユキトさんが心配そうに俺の肩を揺さぶっている。

他の人たちも俺を見ている。あ、ボーッとしてもうてたな。それに、頭にちがのぼっちまった。またアナキスト的思考してもうた。

「大丈夫?具合悪い?無理しなくていいよ」

「あ、いえ。少し考え事してたもので。」

「そっか。具合悪かったら言ってね。」

ユキトさんはそう言って優しく微笑んでくれた。

すごくいい人だとよく分かる。

俺は簡単に人を信用しない。初対面の人であれば尚更だ。

でも、この人達だけは違う。

この人たちは何となく、色んなことで悲しんできたから、俺を裏切ることはしないような気がする。

いいなぁ、きっと大切にしてもらったんだろうな。

、、、今更過去を恨んだ所で何も変わらない。心を入れ替えなくては。

他の資料は建物の地図や食料などがあった。

食料は種類豊富だった。

ご飯物や麺類にパン、おかず、お菓子。更にはUouTuberが企画で食べそうな激辛メニューもある。

サービスがいいな。市販品なのは毒が入っていることは無いというアピールだろうか。

そんなことを考えていると、ずっと真剣な表情で資料を見ていたレウさんの腹から、「ぐごおおおおお」という音がした。

腹の虫がなってもうたんやな。レウさんは恥ずかしそうに赤面し、下を向いてしまった。

「とりあえず、何か食べませんか?ほら、腹が減っては戦ができぬですから!まず何か食べて落ち着きましょ!」

ミシャくんの一言に、全員が異論なく賛成し、食料の山を漁り始めた。




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