other doll

兎にも角にも俺とレウさんはオフィスにいる人たちに声をかけ始めた。

まず最初に、窓を呆然と眺めていた1人の男の子に声をかけた。

名前を聞くと、「視同仁 御赦」(しどうじん みしゃ)と言うらしい。とりあえず、呼び方はミシャくんで良いだろう。

聞けば彼は定時制の高校の4年生。雪の結晶の柄で白のぽんぽんがついたニット帽を被り、制服らしいワイシャツにカーディガンを羽織り、下は黒の長ズボンと茶色いスニーカーだ。高校生って感じがする。

カーディガンのポケットには少し汚れた小さい猫のぬいぐるみが入っている。

小さい時にお母さんが誕生日に作ってくれたものだという。

「俺ん家母子家庭で貧乏であんまりおもちゃを持ってなかったから、ぬいぐるみが欲しくって。そのぬいぐるみ、、、ねこまるは俺の宝物でお守りなんです。困った時にねこまるがいると、頑張れるんです。」

そう言ってにっこり笑った。

ミシャくんもほかの人たちに話しかけるのを手伝うと言ってくれた。

そして俺達は次に、セットアップパーカーにスキニーを履き、腰に巻く用の上着を巻いているいかにもダンサーって格好をした男に近づいた。先程俺とレウさんと死体を倉庫で見た人だ。

名前は「前島水樹」、年齢は29。いまは在宅の仕事をしているという。右足が義足らしく、杖をついていて、早く走ることは出来ないと言っていた。

「僕はもう、生きる気は無いよ。でも、最後くらい自分で奪いたい。」

そう言ってビルから出る決意を示してくれた。

とりあえず、呼び方はミズキさんでええかな。

ミズキさんには体力をのこしておいてもらおう。杖を使って歩くのは大変だろうし。

次に俺は、パステルカラーのポップロリータファッションの女の子に声をかけた。

名前は「殊文蜜花」(しゅもん みつか)、年齢は17。高校生の傍らモデルをしているという。たしかにめっちゃ可愛い。それに礼儀正しい。

「怖いですけど、いっぱい頑張ります!」

そう意気込んでいた。

次に、全身ピアスのロン毛男に声をかけようとしたが、ウ〇娘かってくらいの全速力で逃げられてしまった。

あいつ、どこかで見たことあるけど思い出せないな、、、。

俺はなんとなく気になって、他の人をレウさん達に任せてその男の後を追った。

男はオフィスの端っこの机の下にうずくまっていた。

「あの、ちょいとよろしいですか」

俺が声をかけると、肩を震わせてこちらを見た。

「な、なに?」

怯えながらこちらを見た。

「あの、いくつか伺いたいのですが。いいですか?」

男は黙ったままこくりと頷き、机からでてきた。

彼の名前は夜迷川 功介(よめいがわ こうすけ)。年齢は26。大人気シンガーソングライターの「メルコン」として、ネットを中心に活動している。趣味としてゲーム実況をしたり、ボーカロイド曲を作ったりと様々なジャンルで活動している。

片方だけ伸ばした茶髪にアホ毛、赤い目、全身にピアスや傷跡がある。世間様から見たら異端者にされてしまうのではないかと心配になる格好だ。ま、俺は誰がどんな格好しようが勝手やと思うけどな。まず、普通てなんやねんって話。

そーいえば、最近は活動休んでるらしいな。忙しいんかな

とりあえず、メルさんでええか。

「ほな、メルさん。ここから出るために、協力しませんか?」

「協力、、、?」

「はい。1人やとなにかと不便やさかいな。」

「そ、そうだね。わかった。よろしく、ね。えっと、、、なんて呼んだらいい?」

「そうやなぁ、、、どないしよか」

本名は嫌いだしな。

あ、そだ。

「しぃちゃんでいいっすよ。」

なぜしぃちゃんなのかと言うと、ちっちゃい時に俺は「す」が言えなかった。だから自分のことをしぃ、しぃと呼んでいた。

だから、学生の時も仲のいい奴にはそう呼ばれていた。

「わかった。よろしくね、しぃくん」

そう言うと俺たちは握手をし、レウさんの所へ戻った。


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