ゲイバーに行ってきたレポ

ゲイの友達に「ゲイバーに行きたいけど怖い」と言われたので「私が入れるところなら着いていくよ!行こ!」と勢いでゲイバーに行くことになった。鉄は熱いうちに打てと言うやつである。

余談だが、ちなみになぜ自分の恋愛対象の話してくれたのか理由を尋ねたら「腐女子で偏見なさそうだから」だそう。なるほどね、そりゃあそう。
性癖に刺さる本を求めて三千里してますのでね。面構えが違うって訳よ。

◾︎ セッコでも角砂糖3つまでなのに◾︎

テナントビルの一室の扉を開けると、髪の短い40代半ばの男性が陽気にいらっしゃいと出迎えてくれた。

木曜日だったからか人が居らず、私と友達の2人のみ。カウンター席に座り、気のいい陽気なママがニコニコとしながらチャーム(突き出しのお菓子のこと)をくれた。
フンフンと花歌を歌いながら手馴れた手つきでお酒を作っていく。

「2人はカップルさんなの?」
「いや、幼少期からの友達です。彼がゲイで1人じゃ行きたいけど怖いって言ってて」
「あら!そうなの?来てくれて嬉しいわ〜!」

めちゃくちゃ気さくである。
不思議となんでも話しても大丈夫そうだな、みたいな感じの雰囲気がある。

「あ、この方の紹介で…」

と私は名刺をママに差し出す。
実は以前友達とドラァグクイーンが居る飲食店に行ったのだがそこでゲイバーでいい所を知らないか聞いたら今回のお店を教えてくれた。
そこで「不定休だし、会員制だけどアタシの名刺持っていけば良くしてくれるわ」と名刺をくれたのだ。
漫画みたいな展開である。

ママは名刺を見るなり「ああこの子ね〜!よく前来てたのよ。紹介できてくれたのね、嬉しいわ」とこれまたルンルンで接客してくれる。
まさに漫画などで絵に書いたような気さくなママである。

そして今回は友達の付き添いがメイン。
主に友達のお悩み相談をママにしつつアドバイスを貰うなどしていたのを眺める感じになったのだが、ママがなんというか豪快というか話が上手いというか。
話を聞いたり話題を振ったりが上手い。
友達の悩みの話なので彼らの話の詳細は伏せるが、さすがそういうお店のママ…と彼らの会話を聴きながら私は隣で煙草の煙を吐き出していた。
彼らには彼らの経験や意見、視点があるので私は黙ってそのやり取りを見守っていた。
その世界のことはあまり分からないが、当事者でないと分からないことはごまんとあるだろう。
もちろん、偏見が〜とか、性別がどうとか思ったことは無いけれども。

隣で真剣なお悩み相談をしている中、私はチャームよかっぱえびせんをもりもりと食べていた。余計なことに口出しはしないのである。
これでもまだ空気は読める方なので黙っていたのだが、久々に食べたかっぱえびせんが美味しすぎてやめられない止まらない状態である。

真剣に話す友達と、ウンウン聞くママと、ひたすらかっぱえびせんを貪る女というシュールな空間ではあるがマジでかっぱえびせんが美味い。
このお菓子、こんなに美味しかっただろうか。
ちなみにラムネとカントリーマアムも一緒に出てきたのだが、甘いものが苦手なのでかっぱえびせんばかり食べていたらママが話片手間にザラザラと増やしてくれた。(恥ずかしい)(ごめん)

ちなみに今回友達はアプリで知り合ったものの、自分がいいなと思った人から見切られたような気がして悩んでいた。
「まだ相手にブロックされてないから!ごめんなさいされてないからチャンスはある!まだこれからよ!」と激励された友達はハッとして立ち直っていた。確かにその通りであると酒を啜る。
ママはウキウキで「いやぁ〜なんか初々しいわねぇ!」と自身の体を両腕でギュッと抱きながらくねらせキャッキャしていた。
そんな経験を経ての今だと思うが、懐かしさを噛み締めるような口調で至極楽しそうに耳を傾ける。
2人揃ってキャッキャと恋愛トークに静かに盛り上がる中「しかし恋愛関係を築くって難しいよなあ」と私はかっぱえびせんをやめられないとまらないしていた。

…これは言い訳に見えるかもしれないが、ただ単にチョコラータに「いやしんぼめ」と言われても仕方ないようにお菓子を貪っている訳では無いのだ。
出されたものを残したら悪いかな?と思ってもぐもぐしていたらママが何故かお菓子を追加でくれるだけなんです。本当に。

というのも、私は突然倫理観がゴミカスになるところがあるので黙っているだけである。
倫理観ゴミカスエピソードとしては、実家暮らしの男友達から彼女の相談を受けていたところ、数日後に「彼女に育てるタオルをプレゼントしようと思ったら別れちゃった…。もうどうしたら…」と泣きながら電話して来たので「ワハハ!実家でタオル見るだけで思い出すとかなら私ちょうだい!!」とまんまと新品のタオルを頂いたことがある。(マジでごめん)(今も仲良い)

閑話休題。
とにもかくにも、ふと思ったことを言うと何が地雷なのかわからないので黙っているだけである。
その手の話に詳しくないので。
ちなみにかっぱえびせんを食べ終わると、ママが今度はタコスのお菓子ををザラザラとお皿に入れてくれた。わんこそばならぬわんこ菓子になってしまう。
お腹が空いていると思われたのかもしれないが、気前がいいだけかもしれないのでとりあえずお菓子を食べる手を止めた。
流石に追加のお菓子が止んだので初めからこうしていれば良かったのかもしれない。
ちなみにお菓子のチャームに加えてプラスで選べるデザート系の突き出しがセットらしく、私はその中の白桃プリンも平らげている。大変よく食う女である。

ちなみに友達はプラスで選べるデザート系の突き出しはサイズが選べるパインゼリーを選んでおり、「大きいのと小さいのどっちがいい?」と聞かれて「大きいの!」と可愛らしく答えていた。
「甘いの好き」とニコニコしていて全く可愛い友達である。私との可愛げの差よ。
なんだか負けた気がしたので悔しくて肩を小突いておいた。

突き出しの正解が分からないままの私だが、マジでこれはママの優しさなんだろうか。
某はんなり県みたいにお茶を出されたら帰れって意味とかない?と振り上げた拳を下げれないでいる。誰か正解を教えてくれ。

◾︎ 暖かみ、とは何たるか ◾︎

ママは鼻歌でも歌いそうな空気を醸し出しながら、日焼けした喉から響くアルトが薄くも厚くもない唇から紡がれる。

「私はどちらかと言えばヤリモクでアプリとかしてたわ。セフレは何人いてもいいけどね!彼氏は1人だけよ。
まだまだ若いんだから出会いだらけ。大丈夫!これからよ!」

と、ちょっと倫理観がややぶっ飛ぶ発言もあったがまァ激励には十分すぎるお言葉を友達にかけていくママ。

「私の時代はもっと出会いが少なかったけど、今はアプリなんかでこの子はダメ、なんて減点方式というか落とすことを前提にしていてプラスにしていくって言うのは少ないかもしれないね」
「…それはそうかもしれません。俺、ママが言った通りこの人無理!ってなったら落としてる…」

己で気付かぬところをやんわりと気付かされた友達は「追いかけられると嫌だけど、逃げられると追いかけたくなる。ただ付き合うと束縛とかの縛りが出てくるから…」と思いの丈を吐露する。
ママはにっこりとした笑顔のまま優しい口調で口を開く。

「それは燃え上がるような刺激を求めているのか、最終的に付き合いたいのかどっち?」

確信を突くような言葉に友達がハッとする。
そこに責めるようなものもなければ、ただ単なる疑問のようなものでもなく、気づきのきっかけを与えるようなものだったと思う。
それはママの経験則から来るものでもあったし、沢山そういう人を見てきたのだろうとも見て取れるようなスマートな対応だった。

「刺激を求めてるんだと思います」
「それなら、それでも付き合いたいって思う人が現れるまで色んな人と関わればいいのよ!大丈夫、まだまだこれからなんだから!」

最初こそナヨナヨしていた友達も「…そうだよな、これから頑張る!」と意気込んでおりハッピーな空気で終電の関係でお店を出る事となった。

終電ギリギリで出たのだが、時間を忘れるほどの包容力や居心地の良さがあってゲイバーっていいもんだな…と私まで元気を貰った。

少し話は逸れるが、「人に的を得たアドバイスをする」というものは難易度高いというか。
言い方や相談する側、される側の信頼や信用度によって受け入れられるかも変わるし、アドバイスする側の意見で左右されることもある。
もちろん、的はずれな質問や押しつけになる事だって有りうる。
私個人としては人が変わる時と言うのは「その人が気づけるかどうか」や「きっかけ」と「タイミング」にかかっていると思うので”気づかせて納得出来るような一言”というのはかなり難しいなと痛感している。
だからこそ、初対面ですんなりと受け入れられる居心地の良さや、話しても大丈夫だと思える安心感を与えるってとても凄いことだなと今回で驚くばかりでした。
もちろん、経験値によるものも大きいんだろうけど。

急ぎ足で扉を開けるとそこはただのテナントのひとつでしかなくて、入ってきた時の静けさしかない。扉をくぐるとこんなに暖かい人がいるのであればゲイバーってまぁ人気になるわなぁと納得する。
想像のゲイバーのママ、というのは少しオネエ口調で明るくて聞き上手で優しいイメージがあったけれど本当にその通りだったな。

ちなみにこのお店のママにも他に同じように落ち着いているお店はあるか尋ねたら、別のお店を教えて貰った。ちなみに近隣に180店舗くらいあるらしい。スゲー。
なのでまた後日この友達と行くことになっているのでまた楽しんでくるよ。

おしまい


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