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クラブ・スーサイド 感想

こんにちは。オタクです。
先日、クラブ・スーサイドというゲームをしてなんかもうぐるぐるして収拾がつかないので文章にしたためたいと思います。
当然のごとくネタバレがあります。プレイ順です。

ちなみに感想にしたためようとしているうちに半年かかりました。先日とは

哀しくも美しい公式サイトはこちら

以下個別の感想。順番は攻略順(舞淵→喰ヶ島→枢木→右睡→財前)
最期に全体の感想があります

舞渕明陽

なんで私はこの人を最初に攻略してしまったんだろう…

闇が…深い…
闇、というか彼の場合、抱える問題が多すぎて、なんかもう拾いきれないというか
またその問題が、一つのことに由来するならいいんですけどあっちこっちとっちらかってるんですよね
パッと思いつく中でも

・自己評価低さ、自己卑下、それに伴う他人の神聖化
・家庭問題
・敵と判断した人間には容赦しない
・物事を0/100で考えがち
・責任感の強さ、器用さ
・自傷癖
・陰キャ特有の他者の敏感さ
・(おそらく)Xジェンダー

これだけあります。
これがまあ複雑に絡み合って1つ解決したところでどうにもならないというか。彼の美しさはわかるんですよ。彼みたいな美しい人に死んでほしくない。そう思いながらも彼が幸福に生きる道が見当たらないんですよね

人って自分らしく生きないと窒息して死ぬ(少なくとも私はそう)ので、その自分らしさと集団の中で出せる自分らしさの兼ね合いを見つけてなんとかやっていくしかないと思ってるんですけど、彼の場合、「自分らしさ」がまず見つけにくい(型にはまらないというか、彼のような人間を端的に表す言葉やモデルとなる人間がなくずっと実体を持てない自我を抱え続ける羽目になる)上、彼をそのまま受け止めてくれるような人間がいない・本人も素の自分を出せないのでもう自分が死んでいくだけなのかなあって

愛しくて美しく、醜悪さまでもが魅力に変わる彼の未来に幸福を希うことしかできない
彼の内側に触れることはできなかったので、我々は傍観者でいることしかできないんですよ

最後に、まぶちが女性らしい雰囲気を出した時の林檎ちゃんの語彙力爆発っぷり面白かったね。林檎の姉御って呼んでたよ

喰ヶ島蜜木

彼はとても高潔で美しい人でしたね

最初は怖い乱暴な人なのかなって思ったんですけど、話してみると考えがしっかりしてるし、オタクだしで面白い人でした
このルートは林檎ちゃんのはっちゃけ具合も面白かったですね…!なんだあの限界オタクっぷり

やっぱり一番印象に残ったのはお母さんのことをいじめっ子にからかわれてやり返す所ですよね。正論しか言っていない。媚びぬ、引かぬ、顧みぬを地で行っている。かっこよかった…。きいててこちらも、はい…はい…ってなったよね

彼は何というか、一人で完結できてしまう人で、でも本人は他人を求めているこのアンバランスさが悲しいというか。水の一番きれいな上澄みの部分というか。才能にここまで恵まれなければ、もっと正しくなければ、もっと許容量が大きければ、ここまで繊細でなければ、きっと人間に混じってよどんだ泥の中で生きていけたろうに
人間という生き物の無神経さをまざまざと見せつけられるルートでした。道にごみを捨てる人を見たときの感情をずっと思い起こされ続けて、さらに、それはお前も一緒だと突きつけられるような。

あまりに正しくて、あまりに潔い、天使のような人でした。現世はさぞ生きづらかろう

枢木色

この男のせいで私は今ノベルゲーの沼にいる

あの…首絞め無理心中があるんですね…?エンディングの一つで
その時の彼が堪らないんですよほんとに。
彼は繊細で気配りができて人の気持ちも考えられて善悪もわかる人なんですよ。でもとてもとても寂しがりや。ひとりで死ぬのは怖いから唯一自分の本心を受け止めて最期の七日間いっしょにいた林檎ちゃんに縋って一緒に行ってほしいってエゴが爆発してしまう。こんなの押し付けでしかないのがわかってるからごめんね、ごめんね、君は悪くないのに、全部俺が悪いから、一緒に死んでよっていって首を絞めるんですよ。かわいいね。一緒に死んであげようね。
こういう主人公にエゴと崇拝を押し付けて泣きながら謝りながらも我を突き通す男大好き。たくさんほしい。性癖の話しかしてねえな、ごめんね?
このエンドを見た後、同じようなものを摂取したく「乙女ゲーム 心中」「女性向けゲーム 首絞め」などで狂ったように検索するゾンビになりました。その結果、「sweet pool」になぜかたどりつきBLゲーム沼へ……

性格の面から言うと、チャラついているんだけど実は繊細、ナイーブ、寂しがり。いいやつなんだよな…。常に人の中心にいるけど、でも一人でいる時間もないと無理だし、絶対に他人に踏み込ませたくない領域がある男。大好きですね。ゲーマーなのがいいなあって

このルートだけは恋愛色が強め。林檎ちゃんに支えられながら生きてくれ…

右睡真咲也

不思議ちゃん枠と見せかけてしっかりした人枠
3年…?と思ったけど完走したら納得。ふわふわしたなかにしっかりとした芯がありました

彼は彼でまあ優しすぎるというか、彼の目に映る世界はすごく美しいんでしょうね。だから、そんな大好きな世界で悲しんでいる人はみたくない、だから人助けをする。でも、世界を救うためには自分の手だけじゃとてもとても足りないから死ぬんだと
そんな彼の考えが愛しく感じると同時に「じゃあ死ぬな!死ぬな!」と思い続けたルート。なんだろう…君が死んだらこの世界の善人濃度みたいなものが下がるので……

これは個人の考えなんですけど、「完璧にできないから全部投げる」みたいなの好きじゃなくて。現実的に完璧することが不可能なら、せめてあがいてぼろぼろの歪んだ状態で構わないから形にして欲しい。そうやって這いずり回って生きている姿が美しいと思うので。

だから生きてくれて良かった。世界は完全に美しく保てなくても、君が生きているだけで見える世界が美しくなる人はたくさんいるから。

あと、死ぬルートは描写がきつい。どこが刺激少だ。

財善絵馬

自分の親が優しいから嫌だっていうのは心当たりがあって。なんでまともな人間からこんな自分が生まれてしまったんだろう。なんならいまだになんで親が自分に良くしてくれるかわからないんですよね。贅沢な悩みですが。無償の愛は与えられているが、無償の愛を受け入れられる人格が育っていないが故の悲劇

才能があって、家族もやさしいのになんで死ぬ必要があるの?って思うんですが、それすらもシナリオの意図するところだと思うというか、他人から見て恵まれている人間が死にたいと思ってはダメなのか?というメッセージがあるように思う。いくら恵まれようと希死念慮に囚われてしまったらそれまでなので

彼のエンディングで、林檎ちゃんを抱きしめて泣きながら「大好きです」って告白されるシーンがあるんですけど、あれが私にはまったく男女間の恋愛に見えなくて、すごいなって思った。それこそ無償の愛。ただ好きで好きで堪らない。男女の関係でこの描写をしてまったく恋愛の匂いがしないってなかなか無いと思うんですよね。ただお互いのことが好きなだけっていう。この関係すごく好き

エンディング「無様」はすごい。人の心がない

総評

作品全体を通して、「人間愛」みたいなものを感じました
「キャラクター」としてデフォルメされた姿ではなく、どこか生々しいどうしようもなさをもった、でも優しくて愛しい子たち。プレイしているうちにみんな生きてほしいと願ってしまいます

「自殺」がテーマなのですが、どの子もみんな死にたい理由に説得力があって、共感できると思いました。私はもう成人した身なので”もう少しだけ生きてみればもっと選べる道があるのでは”と思ってしまうのですが、思いつめた彼らの希死念慮を否定もしたくないと思ってしまいます。彼らへの共感と私の生きてほしいという思いがプレイした後もずっとぐるぐるします

とにかくプレイ中ずっと「幸福に生きてくれ!生きてくれ!うわあああああああああああ!」ときりきりしながら選択肢を選んでいました。ノベルゲームにおける「選択すること」の重さがダイレクトにのしかかってきましたね。この物語を進めるごとにクリックすることから逃げたくなる感じ、選択することへの緊張感がすごい。これぞノベルゲームの醍醐味

その他、ストーリー以外について
音楽…綺麗!とくに主題歌が美しい。独特なんだけど澄み渡って鬱々としている。聞こえない悲鳴のような…なんだろう、胸がしめつけられる

グラフィック…こっちも綺麗!スチルが透明感があるんだけど暖かみもあって良いです。ちなみにシナリオと音楽とイラストが同じ方のようです。何者?

システム…普通に使いやすいです。落ちるとか重いとかはなし。パッチはあるので当てましょう。セーブスロットは多め。ギャラリーとエンディング集がないのが残念。これは制作者さんの意図したところのようです。不便ではありますが、同人ゲーなのでこういう作者のこだわりが見えるのは楽しくなったり

ということで、なんとなく購入しましたが非常に良かったです!ほんとに千円でいいんですか!?おすすめです!

余談ですが、書いた人はノベルゲームを5年ぐらいぶりにやったのですが、この後ノベルゲー狂いになり「鬱ゲーはどこだ…」と探し回った結果、半年でエロゲを6本買う女が爆誕しました。どうして