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ザッハ・トルテをめぐる、甘い7年戦争
ザッハ・トルテといえば
チョコレートケーキの王様とも呼ばれています。
あのメッテルニヒ侯爵が、お抱えの料理長に命じて作らせたものです。
並みのお菓子では満足しなくなっていた貴族たちを
満足させるように
シェフは命じられました。
1832年のことです。
メッテルニヒ侯爵の大邸宅で、見習い2年目だったフランツ・ザッハーは
突然の病気で倒れたシェフに代わって
夜会を締めくくるスイーツを
大急ぎで作らなければならなくなりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1678918165689-cKbBtR2yB7.jpg?width=1200)
まだ、16才のフランツにとって試練の時になりました。
急いで
小麦粉、バター、砂糖、卵、チョコレートを混ぜ合わせて
小型の生地を作ります。
それを焼いたあとに、温めたジャムをぬり
チョコレート・グレーズで包みました。
こうして出来上がったチョコレート・ケーキは
夜会に来ていたゲストたちに大好評となりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1678917666027-u4IdLS8YFZ.jpg)
このチョコレート・ケーキのレシピは、門外不出となりますが
すぐに、あちこちの菓子店でも
ザッハー風のチョコレート・ケーキに
似たものを作り始めたのではないかと想像されます。
![](https://assets.st-note.com/img/1663319138847-hxUHsebryj.png?width=1200)
それでも、肝心な部分でレシピが流出しないようにして
秘伝のレシピを守ります。
ある程度は、まねをすることができても
まねできないオリジナルの部分が存在したと思われます。
他の菓子店が、さまざまな工夫をしても、同じ味のザッハトルテを
再現することは、できなかったのです。
その後、息子のエドワルドは、ザッハトルテの味をより高めながら
販売においても、マーケティングの才能を発揮し
売り上げを伸ばしていきます。
やがて、ホテルを開業することができるまでになります。
その場所は、ウィーン国立歌劇場(オペラ座)の
すぐ裏手という絶好のロケーションでした。
エドワルドは、若いころ、王室御用達菓子店であった
デメルで見習いをしていました。
エドワルドが見習い修行をした店であるという
オーナー気質によるものか
デメルは、オリジナルのザッハトルテを売る権利があると
思ってしまったようです。
![](https://assets.st-note.com/img/1663319240994-aj6M9NuQ9E.png?width=1200)
一説には、3代目の時にホテルザッハーが経営難に陥り
そこにデメルが援助を申し入れ
援助の見返りに、秘伝のレシピがデメルに渡ったともいわれています。
やがて、時が移り変わり
ホテル・ザッハーはデメルに対して異議を唱えます。
「甘い7年戦争」とも「甘い7年伝説」などと呼ばれ
長きにわたり、紛争が続くことになってしまいました。
結局、ホテルザッハーがオリジナルだということになりますが
デメルも、「デメルのザッハトルテ」と名乗っても良いという結果になります。
「デメルのザッハトルテ」は「敗者の甘い誘惑」と呼ばれるようになり
まったくダメージを受けることなく、販売を続けていきました。
両者の味の違いは、「好みの差」といってもいいくらいです。
コロナになる前は
現地で、ホテルザッハーのカフェでザッハトルテを味わい
デメルのカフェに移動して、そこでもザッハトルテを堪能し
お土産にザッハトルテを持ち帰るといった
ゴージャスな楽しみ方をされている方がいました。
![](https://assets.st-note.com/img/1663315552537-dEgQydBJZh.png)
ちなみに「アンナトルテ」は、デメルのオリジナルで
デメル3代目の経営者
アンナ・デメルの名を冠したトルテです。
ザッハトルテよりも、しっとりしています。
ザッハトルテは生クリームを添えないと
乾燥した食感ですが
アンナトルテは、クリームメインでしっとりしているため
ケーキ単品でも楽しめるようです。
もちろん、メランジェ(ウィンナ・コーヒー)や紅茶といっしょに
ホテルザッハーのカフェは、宿泊せずとも
利用することができます。
いっしょについてくる生クリームは、甘くないので
ケーキと一緒に食べると
チョコレートの甘さが引き立って美味しいです。
この話題にもまた、メッテルニヒ侯爵が大きく関わっています。
あの大邸宅では何が話し合われているのでしょうか。
影響力の大きさを感じます。
![](https://assets.st-note.com/img/1678918658806-H8lSTbiRUc.jpg)
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