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6/5 洋楽ニワカが評論サイトRYMのチャートを覗き見【フィッシュマンズ】

1、2年ほど前に、遅ればせながら90年代の日本のバンドであるフィッシュマンズにハマり出しました。ダブ・レゲエというジャンルで語られることが多いバンドですね。初期の名曲「いかれたBaby」や名盤「空中キャンプ」の名前だけなら聞いたことがある人も多いかも知れません。

そんなフィッシュマンズについてインターネットで調べていると、海外でフィッシュマンズが評価されているという旨の情報がたくさん飛び込んでくるのです。なんでもRYM(Rate Your Music)という評論コミュニティでの評価が著しいのだと…

…というのが私とRYMとの出会いになるわけです。このサイト、日本語には対応しておらず英語英語なわけで断片的な情報しか取り入れられなかったのですが、確かにフィッシュマンズが日本勢にしては異常に評価されているのです。いや、日本勢とか関係なく、超有名な洋楽の名盤と並んでチャートインしていて驚くしかありません。

このチャートはRating(五つ星での評価の数)とAvg(評価の平均値)とReview(文章による評価)の数による独自のアルゴリズムできまっているようです。以下で具体的にチャートの様子を見てみたいと思います。

まずは世田谷三部作といわれるうちの2枚目「Long Season」(1996)について見ていきます。そもそも海外での評価が高まったのはこのアルバムがきっかけのようです。実はこれ、「一曲入り35分のアルバム」、ワントラックアルバムなのです。それってアルバムというのか?というツッコミが入りそうなものですが、その珍妙さが海外の音楽オタクの熱視線を浴びるポイントになったのでしょう。

オールタイムのチャートでなんと43位です。あのTelevisionのMarquee Moonの一個下です。総評価数1万8000件超え、評価の平均値も4.16/5.0と文句なしに高いです。1996年発売のアルバムに限れば、2位のDJ Shadowの「Endtroducing.....」を抑えて現在1位です。

しかし、この「Long Season」より高評価を得ているフィッシュマンズのアルバムがあります。それもライヴアルバムです。ここで注意なのですが、RYMでは設定を操作しないと、ライヴアルバムを含むチャートを見ることができません。

ボーカル佐藤伸治が在籍していたフィッシュマンズによる最後のライブをおさめた「98.12.28 男達の別れ 」。これが現在なんと全体17位です。

Radioheadの「In Rainbow」(2007)の一つ下です。

少し脱線しますが、「In Rainbow」の人気も少し意外だと思われるかもしれません。RYMではKing CrimsonやPink Floydなどのプログレ系、RadioheadやThe Velvet Undergroundなどのアートロック系、オルタナ系の人気がかなり高いです。またの機会にこの辺りも紹介したいです。

話をフィッシュマンズに戻して、ライヴアルバムとしてはこの「男達の別れ」が全体一位です。The Beach BoysやKing Crimson、Bob Dylanなどの大御所を抑えて一位です。

そもそもこのライヴ、フィッシュマンズのベーシストの脱退にあわせたものでした。これまでのフィッシュマンズを総括するような新旧取り混ぜた曲選で、「ナイトクルージング」「ひこうき」「頼りない天使」「いかれたBaby」など古くからの曲も大胆にアレンジを加えており、ライヴバンドとしての一面が存分に発揮されております。中でもハイライトはラストを飾る先述の「Long Season」です。元の35分を超えて40分に拡大されています。

英語のレビューを読んでいると、「前半はただの良質なポップだが、Long Seasonだけはヤバい!」みたいな文章がちょくちょく見られます(もちろん、多数派は全ての曲を高評価しているのですが)。捉え方次第では完全にプログレだと思うので、RYMの特性上、そういう評価も頷けます。

こうやって海外で評価が高まっている「Long Season」と「98.12.28 男達の別れ」ですが、フィッシュマンズのディスコグラフィーの中では日本においてはあまり評価されていないほうですよね。

では日本発の名盤リストにたびたび乗るほうである、世田谷三部作のうち1つ目と3つ目である「空中キャンプ」(1996)、「宇宙 日本 世田谷」(1997)についても見ていきましょう。

まずは「空中キャンプ」。フィッシュマンズの名盤といえばこれですね。「Baby Blue」や「ナイトクルージング」など収録。


平均値3.76/5.0、総評価数は約6000件。海外と日本の評価の違いが浮き彫りですね。先述の2作と比較するとだいぶ評価を落としているようにみえますが、これでもかなりの良作と言える評価です。

続いては「宇宙 日本  世田谷」。日本においては空中キャンプに次ぐ名作という立場です。空中キャンプよりも長尺の曲が多く、より実験的な雰囲気。バイオリンがフィーチャーされています。「Weather Report」「Magic Love」「Walking In the Rhythm」など収録。

平均値3.96/5.0、評価数約7500件。日本での評論と違い、空中キャンプよりも評価が高いです。

日本では

空中キャンプ>宇宙 日本 世田谷>Long Season≧男達の別れ 

という構図だと思われますが、

海外の評価では

男達の別れ≧Long Season>宇宙 日本 世田谷>空中キャンプ

と見てよさそうです。全く逆になっていてとても面白い現象です。

以上RYMにおけるフィッシュマンズの評価について見ていきました。

フィッシュマンズに限らず、RYMには様々なアーティストについてまとめられた膨大なデータベースがあるので皆さまもぜひRYMにアクセスしてください。例えば「king gnu rym」とググればトップにキングヌーの評価が出てきます。日本では知名度がないサイトですが、海外ではかなり有名のようですね。

今のところフィッシュマンズに次いで高評価な日本勢として確認できたのはYMOやボアダムスあたりでしょうか。
参考までにYMOのスタジオアルバムの評価を


それでもフィッシュマンズには遠く及ばないところを見るとフィッシュマンズの現象の特異さが分かります。

こちらで是非詳細を確認してください。

https://rateyourmusic.com

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