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エンゼルセット

これは、入院中にずっと頭にあった事。

それは、私が働いていた時の話。

ある、総合病院の地下で、
私は医療器具の、洗浄、消毒、滅菌と、
その組み立てと在庫管理の仕事をしていた。

それぞれ、小児科、眼科、婦人科、消化器科、
内科等、色んな所から、使われた医療器具、
そして、色んな手術によって使われた器具を、
数を数えたり、壊れてないか、錆びてないか、
確認して、作業にはいる。

そして、まず洗浄する。
そこには、血のついた医療器がたくさんある。
それを、それぞれ専門の液に付けて消毒する。

そして、だいたい大まかな、トレーだったり、
バットみたいな、大きな物は熱湯消毒する。

そこから、また、それぞれ器具の種類によって、
高温殺菌機がいくつもあり、そこにいれるのだ。

ここの場所は、いつも熱気で暑かった。
もちろん医療器具なので、
ゴム手袋にマスク、頭にほっかぶりして、
一切菌を持ち込まない様に、何度も着替えた。

そして、乾燥機から出できた器具を、
決められた順番で、物を揃えて、セットを作る。
それを、特殊なシートに包むのだ。

セットは、何種類もある。
一つも間違いは許されない。
確認作業は、何人もの人の目で確認する。

個別の器具にも、シーラーで日付を付けて、
専門の袋に入れて、その器具の名前を書く。

鑷子だけでも、たくさん種類があり、
それを見定めていかなければならない。

そして、最後にでっかい機械に、
入れて、全て完全滅菌するのである。

そんな、作業の中で、あるセットがある。

それが、エンゼルセットである。

つまり、お亡くなりになった人の為の、
処置セットで、いくつかの器具と沢山の、
ガーゼを専門のトレーに入れるのだ。

その日によって、このセットは、
数が極端に増えたり、減ったりする。

だが、
1日もエンゼルセットが無い日は残念な事に、
一度もなかった。

使った後で、組み立てるので、
つまり前日に亡くなった人のモノである。

私は、すぐに感情移入してしまう性分。

エンゼルセットが、いくつもあると、
なんだか、悲しくなってしまうのだ。

あー、昨日は何人亡くなったんだ…。

今日は、少なくて良かった…。

そして、かあちゃんが亡くなった時も、
そのエンゼルセットが出できた。

救急車で、亡くなった状態で運ばれて、
医師の方々の適切な対応虚しく、死んだ。

その時、看護師の人がこのエンゼルセットで、
かあちゃんの身なりを整えて、安らかな顔の、
かあちゃんをきれいにしてくれた。

あー、こうやって、使ってたんだな…。
あの時は、器具やガーゼの使い道なんて、
知らなかった。

なので、看護師の方の手際の良さと、
エンゼルセットを出して使っている姿を、
見れて、私はとても感慨深くなっていた。

あの時は、ただ茫然と亡くなった人の数、
としてエンゼルセットを見ていた。

実際に、使っている場面に遭遇すると、
それだけ、看護師の方がお亡くなりに、
なった人に優しく慎ましくケアとして、
つかっているのだと、思えてきた。

エンゼルセットは、
亡くなった方々のケアの為に、
毎日、どこかで、看護師の手で使われていて、
亡くなった方々に、最後はきれいにしてくれる、
とても、大切なものだったのだ。

特にそのお亡くなりになった人の親族は、
きれいな安らかな姿を見てれ幸せだろうな、
と私の勝手な思い込みだか、そう思えた。

エンゼルセット。

それは、亡くなった人の最後をきれいにし、
生きてる人に、少しでも生きていたままの、
状態で、会わせてあげる為のもの。

とても、大切な存在なのだな。

気づかせてくれて、ありがとう。

医療従事者も、そうだが、
そのかげで、こうして医療器具を、
大切に扱い、次の患者の為にと消毒、滅菌し、
現場で活躍出来る様に、している人達がいる。

この仕事に就けて、本当に良かったと思う。

いつ、感染症にうつるか、わからない状態で、
必死に使われた医療器具を、扱うのだ。
ミスは許されない。大事な命が関わってる。

たまに、鋭い刃先で怪我をする時は、
速やかに、そこの病院を受診し、
感染してないか、検査をおこなう。

一歩間違えたら、感染症になりうる。

そこには、生と死そのものを映し出す。

とても重要な体験ができました。

いつか、エンゼルセットを使って、
私を安らかにきれいにして欲しい。

おっと!まだまだ、先の話ですけどね!

そして、これは、私個人のただの戯言です。
あーまたなんか、ほざいてんなーと、
軽く流していただけたら、嬉しいです。


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