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前代未聞


家庭の事情で夜間の学校に通ってた。
シティボーイズにはまり、演劇部を作ろうと先生達を説得し、夜間学校の演劇部はどこにもないとことごとく反対されたが一人の先生が顧問になるからと学校側を説得してくれた。
ただし、部員がいないと成り立たないので、私はこれまた断れ続けながら部員を呼び込みなんとか5人そろった。ズブの素人5人。おばぁちゃんおじいちゃん達5人。その優しさに感謝しつつ、部活が始まる。
脚本は顧問の先生が夜間学校の日常を本人役で割り振り作り上げてくれた。
部活動なんて夜の21時半から22時までの30分だけ。ご老人がセリフなんて覚えるなんて無理な話だし、すぐ帰るし名だけの部活動だった。
そんな毎日を過ごしてると顧問がとんでもない事を言う。大会に出ると言うのだ。
胸を打つ鼓動が高まり喜んだ反面、いや無理でしょ…と悲観的になってた私だったか、ご老人のみなさんは大はしゃぎで喜びやる気に満ちてた。そんなこんなで大会の日キラキラ眩しい朝日の似合う高校生達の演出も演技も本格的で楽しく、そして羨ましかった。
そして私達の出番が来る。いわゆる茶番だ。
セリフなんてないようなもの、私一人アドリブかまして回してつっこんで途中顧問も出てきてカオスな新喜劇。バダバタだったけどでも、そのには独特の間があった。フレッシュな若者にはない貫禄と渋く熱い演技。幕が下がって質疑応答の為幕の前に行く途中、冷やかしかわからないが若者達から拍手喝采を受け、ご老人達はおちゃらけてヨイショヨイショと踊りだす。
なんとかことなき得て、顧問には素晴らしかったと温かいお言葉をもらい帰路に着いた。
頭の中は反省の繰り返し、あの時こうすれば良かったこーすれば良かった等、おじいちゃん野放ししすぎたなとか。おばぁちゃんシャンソン聞こえづらかったから、説明的なセリフにしちゃったけど大丈夫だったかなとか。
さて、大会の成績はなんと…5位入選。
審査員の方々の優しさなのでしょうか。
私は昼間仕事してたので、夜の学校で顧問に聞いた話だが、ご老人達は舞い上がってまたヨイショヨイショと踊りながら舞台に上がって賞状を受け取ってたと聞きました。
はてさて…逆に来年はどうなると頭がいかれそうになりながら、こんな私の身勝手な発案に一緒に行動してくれた顧問、無理矢理部員にしたおじいちゃんおばあちゃんに感謝しました。




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