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インド太平洋は北大西洋ではない

2023/07/13

…東京連絡事務所については、北大西洋という地理的範囲を超えて、「NATOの正当性を示すような施設を域外に設けている、という印象を与えるべきではない」とした。…

2019/05/30

ヨーロッパではない「ヨーロッパ」

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なぜ未だ独立しておらず、ヨーロッパの国々に属する地域が多く見られるのか。これにはいくつもの理由がある。そのうち、多くの地域に共通してみられるものをいくつか挙げてみる。

まず1つ目に挙げられるのは本国にとって利用しやすいということだ。
特に島々は地理的に大陸と大陸の間に位置し、孤立しているため、軍基地・核兵器の実験場、宇宙基地などに利用されやすい。
本国にとって重要な領土となっていることから、本国としてもなかなか手放すわけにはいかない。
軍基地の例として、インド洋の真ん中に位置するチャゴス諸島(イギリス領インド洋地域)が挙げられる。
チャゴス島は植民地時代、イギリスの自治区であったモーリシャス諸島の一部であったが、1965年に国防の目的でイギリスに売却された。
その後インド洋に基地を新設しようとしていたアメリカにチャゴス諸島のディエゴガルシア島は貸し出され、住民全員が強制退去となった。
また、核実験については南太平洋のポリネシアのタヒチ島やムルロア環礁などで1960年から1996年までの間に193回の核実験がフランス政府によって行われた。

宇宙基地の例にはフランス領ギアナが挙げられる。
ギアナは南アメリカの北東の端、つまりブラジルの北に位置する。
ギアナには欧州宇宙機関とフランス政府が運営している宇宙センターがある。

地理的な距離を利用するだけでなく、法律的に本国に縛られないことをメリットとしてタックスヘイブンを利用している例も多い。
カリブ海のイギリス領ケイマン諸島やヴァージン諸島はタックスヘイブンとして有名だ。海外領土は財政規模こそ小さいが機密性が高く、タックスヘイブンとしてもってこいの場所である。
1950年代以降イギリスは多くの海外領土がタックスヘイブンとなるよう進めてきた。イギリスは、植民地が独立し領土を手放すことになっても、金銭的利益が出せるように準備をしていたのだ。
タックスヘイブンにとっても、税金を安くしても企業が籍を置いているだけでお金が入ってくる。
しかし、タックスヘイブンは多国籍企業などの租税回避になる代わりに本来その企業が税を納めるべき国に税金が回らず、特に低所得の国にしわ寄せがいってしまうのだ。

独立しない2つ目の理由として考えられるのは、海外領土の地域住民も本国も独立しない方がより良い生活ができると判断していることだ。
2014年から2020年にかけてEUはORsに133億ユーロの資金を割り当てている。
また、ORsの地域には人口が50万人に満たない島も多い。
人口が少なく、経済規模も小さいところでは本国からの支援もあり、より良い生活水準を保つことができるわけだ。

3つ目の理由としては、長年の植民地支配を経て住民の多くが、本国から移住してきた人々であるということだ。
フォークランド諸島(アルゼンチンの呼び名ではマルビナス諸島)がその例である。島の住民の多くがイギリス本土から来た移民であり、島全体でみても本国への帰属意識が強く、独立に向けた運動が起こりにくい。
南大西洋に浮かぶイギリス領セントヘレナ島もその一つである。もともと無人島であったが、大航海時代以降、貿易船の中継地として使われてきた経緯から現在の住民はかつての船乗りや移住者、奴隷の子孫である。

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しかし、現状を変えたい住民が多い地域もある。
冒頭で述べたニューカレドニアやタヒチ島などでは、住民による独立運動が起こっている。
フランス政府はニューカレドニアに13億ユーロ拠出しており、ニューカレドニアの生活水準は近隣の地域と比べるとはるかに高い
しかし、若者の失業率は高く、電子機器の製造に不可欠なニッケルの生産に頼ったモノカルチャー経済など、社会問題は絶えない。
今回の投票では独立が否決されたが、2022年までにあと2回、同様の住民投票が行われる予定だ。

参考 2021/12/15 仏在日本大使館
ニューカレドニア独立の賛否を問う3回目の住民投票、マクロン大統領演説 

「ニューカレドニアの人々がフランスに残ることを選びました。彼らはそれを自由に決定しました。この選択は全国民にとって誇りであり、感謝であります。フランスは今夜、美しさを増しています、というのもニューカレドニアがフランスに残ることを決めたからです。われわれの歴史を野心と敬意をもって書いていくのは、われわれ全員です。それはヌメア協定で認められた最初の住民であり、その存在が国民共同体において計り知れないほど貴重な機会であるカナック人にフランスが負うものを明瞭に記憶する歴史です。
  それはニューカレドニアに根を下ろし、自由な女性、男性として生きるため、次にこの土地にやってきたカレドニア人の貢献を見せかけではなく認める歴史です。
  それは今世紀の諸課題、わが国の領域の不可欠な一部である太平洋の諸課題に向けて、先を見据えた歴史です。
  フランス人の皆さん、ニューカレドニアの同胞の皆さん、フランスは皆さんの祖国であることを誇りに思います。フランスは今夜、皆さんのために、いかなる状況でも皆さんを守り、皆さんを支援するという約束を改めて表明します。
ニューカレドニア万歳
共和国万歳
フランス万歳

また、タヒチ島では1970年代に独立運動が盛んになった。
タヒチ島の人々はフランス政府によるポリネシア諸島での核実験に対して不信感を抱き、より大きな自治権を得ようとした。
一方、独立運動をすることでフランス政府からの莫大な補助金を失うこともあり、独立運動はなかなか進まず、今のところ大きな動きは見られない。

…….了

感想
まぁ、NATOには入りたくないな。

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