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お前たちが大嫌いな月曜日は永遠に来ない


 ミキとのデートを終えて幸せな気分で家に帰る。彼女は俺には勿体無いくらいとびきり可愛くて優しい女の子だ。また明日、学校でね、といういつもの日曜日の別れ際の挨拶を交わして、ミキとはイオンモール前のバス停でバイバイした。何を買うでもない日曜日のイオンモールは、ぬるい時間だけを垂れ流して過ごせるから大好きだ。はしゃぐ幼稚園くらいの男の子を連れた家族なんかを見てると、ああいうのって、いいよね。ってミキは呟いたりなんかして。将来の俺たちふたりもああなるのかな。なんて言葉を漏らすのをどうにか我慢するのを、たぶんミキは分かってたな、なんて夕ご飯を食べながら思い出してる。
 お風呂早く入っちゃいなさいね、って母さんが食器を片付けていく。父さんは微妙に苦い顔をして発泡酒の缶をちびちび舐めている。テレビはサザエさんのエンディング曲に入った。おっおーきーなーそーらをー♫ って鼻歌を歌い始めたら父さんが俺をじろりと睨む。大人はそうなんだろな。サザエさんのエンディング曲を聴くと明日からの月曜日が憂鬱になるってネット記事、どっかで見たことがある。俺はそそくさとその場を離れて風呂に入る。入ったあとは部屋でミキとしばらくチャットして、そのあとはネトゲ友達とダベりながらフォートナイトやって寝る。明日っからまた学校かあー。だりぃよなぁー。うん。ダルいよなぁ。適当に話を合わせている。実は俺は明日も学校でミキに会えるからそんなに月曜日は嫌じゃない、と言いたいのをグッと我慢すると、明日早いからこれで最後なー。という友達の声をヘッドホンで聞いたのが今日最後の言葉。夜の0:10。モゾっとベッドに入り込むと、けっこう幸せな気分が俺に覆い被さってくるのを感じる。あ、来るな、と思うまもなく眠りが

 二万四千九十八。

 カナとのデートを終えて幸せな気分で家に帰る。彼女は俺には勿体無いくらいとびきり可愛くて優しい女の子だ。また明日、学校でね、といういつもの日曜日の別れ際の挨拶を交わして、カナとはイオンモール前のバス停でバイバイした。何を買うでもない日曜日のイオンモールは、ぬるい時間だけを垂れ流して過ごせるから大好きだ。はしゃぐ幼稚園くらいの女の子を連れた家族なんかを見てると、ああいうのって、いいよね。ってカナは呟いたりなんかして。将来の俺たちふたりもああなるのかな。なんて言葉を漏らすのをどうにか我慢するのを、たぶんカナは分かってたな、なんて夕ご飯を食べながら思い出してる。
 シャワー早く浴びちゃいなさいね、って母さんが食器を片付けていく。父さんは微妙に苦い顔をしてチューハイの缶をちびちび舐めている。テレビはサザエさんのエンディング曲に入った。おっおーきーなーそーらをー♫ って鼻歌を歌い始めたら父さんが俺をじろりと睨む。大人はそうなんだろな。サザエさんのエンディング曲を聴くと明日からの月曜日が憂鬱になるってネット記事、どっかで見たことがある。俺はそそくさとその場を離れて風呂に入る。入ったあとは部屋でカナとしばらくチャットして、そのあとはネトゲ友達とダベりながら荒野行動やって寝る。明日っからまた学校かあー。だりぃよなぁー。うん。ダルいよなぁ。適当に話を合わせている。実は俺は明日も学校でカナに会えるからそんなに月曜日は嫌じゃない、と言いたいのをグッと我慢すると、明日朝練あるからこれで最後なー。という友達の声をヘッドホンで聞いたのが今日最後の言葉。夜の0:10。モゾっとベッドに入り込むと、けっこう幸せな気分が俺に覆い被さってくるのを感じる。あ、来るな、と思うまもなく眠りが

 二万四千九十九。

 タカシとのデートを終えて幸せな気分で家に帰る。あいつは俺には勿体無いくらいとびきり可愛くて優しい男の子だ。また明日、施設でね、といういつもの日曜日の別れ際の挨拶を交わして、タカシとはジャスコ前のバス停でバイバイした。何を買うでもない日曜日のジャスコは、ぬるい時間だけを垂れ流して過ごせるから大好きだ。はしゃぐ幼稚園くらいの女の子を連れた家族なんかを見てると、ああいうのって、いいよね。ってタカシは呟いたりなんかして。将来の俺たちふたりもああなれるのかな。なんて言葉を漏らすのをどうにか我慢するのを、たぶんタカシは分かってたな、なんて夕ご飯を食べながら思い出してる。
 シャワー早く浴びとけよ、って父さんが食器を片付けていく。母さんは微妙に苦い顔をしてハイボールの缶をちびちび舐めている。テレビはサザエさんのエンディング曲に入った。あっかるぅいわだっいをーふっりーまいてー♫ って鼻歌を歌い始めたら母さんが俺をじろりと睨む。大人はそうなんだろな。サザエさんのエンディング曲を聴くと明日からの月曜日が憂鬱になるってネット記事、どっかで見たことがある。俺はそそくさとその場を離れて風呂に入る。入ったあとは部屋でタカシとしばらくバーチャルセックスして、そのあとはネトゲ友達とダベりながらスト6やって寝る。明日っからまた強制労働かあー。だりぃよなぁー。うん。ダルいよなぁ。適当に話を合わせている。実は俺は明日も施設でタカシに会えるからそんなに月曜日は嫌じゃない、と言いたいのをグッと我慢すると、明日戦闘実習あるからこれで最後なー。という友達の声を脳波テレパスで聞いたのが今日最後の言葉。夜の0:10。モゾっとベッドに入り込むと、けっこう幸せな気分が俺に覆い被さってくるのを感じる。あ、来るな、と思うまもなく眠りが

 二万四千百。

 どうしたんだろう。今日は寝られない。いつもの数字がやけに鮮明に聞こえる。身体は眠っている筈なのに目だけが冴えて頭もスッキリしてしまう。そもそもこの数字はなんなんだろう。毎日眠りに入る瞬間だけ聞こえる、誰の声だかも分からない数字。今夜は、にまんよんせんひゃく。何がそれだけの数あるのか。そもそも二万以上も数えるモノは一体何なのか。俺は寝返りをうつことも出来ずにさっきやってたスプラトゥーンの失敗を思い出す。別れ際のサチとのキスを思い出す。二人で行った長崎屋で買いそびれたTシャツの柄を思い出す。そんなことをやっていると、次第に眠りが俺に覆い被さってくる。日曜日の夜のしあわせな眠りが。

 二万四千百一。

 あいつとデートしてから帰る。
 夕ごはんを食ってサザエさんの鼻歌を歌う。
 風呂に入ってあいつに連絡とる。
 ゲームやって友達とダベる。
 寝る。
 完璧な日曜日。あの頃の日曜日。
 ずっと、来なくてもいい月曜日。
 お前たちの、俺の嫌いな月曜日。

 ナナミとのデートを終えて幸せな気分で家に帰る。彼女は俺には勿体無いくらいとびきり可愛くて優しい女の子だ。また明日、学校でね、といういつもの日曜日の別れ際の挨拶を交わして、ナナミとはイオンモール前のバス停でバイバイした。何を買うでもない日曜日のイオンモールは、ぬるい時間だけを垂れ流して過ごせるから大好きだ。はしゃぐ幼稚園くらいの男の子を連れた家族なんかを見てると、ああいうのって、いいよね。ってナナミは呟いたりなんかして。将来の俺たちふたりもああなるのかな。なんて言葉を漏らすのをどうにか我慢するのを、たぶんナナミは分かってたな、なんて夕ご飯を食べながら思い出してる。
 お風呂早く入っちゃいなさいね、って母さんが食器を片付けていく。父さんは微妙に苦い顔をして発泡酒の缶をちびちび舐めている。テレビはサザエさんのエンディング曲に入った。おっおーきーなーそーらをー♫ って鼻歌を歌い始めたら父さんが俺をじろりと睨む。大人はそうなんだろな。サザエさんのエンディング曲を聴くと明日からの月曜日が憂鬱になるってネット記事、どっかで見たことがある。俺はそそくさとその場を離れて風呂に入る。入ったあとは部屋でナナミとしばらくチャットして、そのあとはネトゲ友達とダベりながらフォートナイトやって寝る。明日っからまた学校かあー。だりぃよなぁー。うん。ダルいよなぁ。適当に話を合わせている。実は俺は明日も学校でナナミに会えるからそんなに月曜日は嫌じゃない、と言いたいのをグッと我慢すると、明日早いからこれで最後なー。という友達の声をヘッドホンで聞いたのが今日最後の言葉。夜の0:10。モゾっとベッドに入り込むと、けっこう幸せな気分が俺に覆い被さってくるのを感じる。あ、来るな、と思うまもなく眠りが

 八億九千七百万千百五十一。
 お前たちが大嫌いな月曜日は永遠に来ない。

 

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